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アフターコロナの働き方(3)~まだ道半ばの働き方改革とリーダーシップ開発|アジア地域大規模調査結果を読み解く
ハイブリッドワーク環境で求められるリーダーのマインドセット
前回のコラムの終わりにはハイブリッドワークの環境下で求められるリーダーシップをマインドセットとスキルセットに分解していき、マインドセットのデータをお示ししました。
青の棒グラフが日本の結果で灰色の棒グラフがAPAC各国平均です。ハイブリッドワークで求められるリーダーのマインドセットで重要なものは日本からの回答を見るとBOUNDARY SPANNING(組織の境界を越えて考え、行動する事)になっています。これだけみてもなんとなくその意味するところが分かりそうな感じもしますが、次いで高いスコアとなっているAUTONOMY(自律性)やINCLUSIVE MINDSET(インクルーシブ)と合わせて考えてみると、さらにイメージを明確にすることができます。
何かといえば、ここで言われているのは「旧来の組織体制・マネジメントの仕組みの限界」ではないでしょうか?
イノベーションを起こせと言われているのに、既存の組織の枠組みの中での活動にとどまってしまい、なかなか組織横断的な動きが取れない。組織横断的な動きをしようとしても権限が委譲されておらず、隣の部署のスタッフとコミュニケーションをとるのにもいちいち上司の承認が必要であったり(これは実際にあったここ最近の事例です)、全く予算もつかない。若手の早期登用・抜擢の取り組みは進みつつあるが、変革や成長を加速し、実現するには程遠い。若手や女性の声を取り入れていくインクルーシブの活動もまだ道半ば・・・そんな感じではないでしょうか?
なかなか悲痛な叫びのようにも見えますが、処方箋がないわけではありません。
既に私たちインヴィニオでも「組織の壁を越えて変革を起こせるリーダーを育成し、再度、自社を成長路線に乗せたい」、「自分たちのありたい姿と自社の目指す方向性を自律的にすり合わせてキャリア自律を実現できる組織文化を形成したい」といったお声を頂いており、実際に複数の企業様にてCASM+という一連の手法を用いてお手伝いをさせて頂いております。例えば2023年5月には「エンゲージメント向上」をテーマにCASM+の手法を用いた事例をご紹介させていただき、大変な好評を頂くことができました。詳細についてはセミナーレポートも準備しておりますので、是非そちらをご覧いただければと思います。
ハイブリッドワーク環境で求められるリーダーのスキルセット:価値観だけではなく労働価値に目を向ける
それではスキルセットの方はどうでしょうか?
下の図を見ると日本でもAPACでもCOMMUNICATION(コミュニケーション)が最も需要なスキルとされています。
これは皆さんとしても想像に難くない結果かと思いますが、次いで日本で高いものがTEAM BUILDING(チームビルディング)です。
こちらも二つ合わせて考えていく方がわかりやすい気がします。私たちに寄せられるマネジメントのお悩みあるあるの中には「ミレニアルやZ世代とのコミュニケーション」が数多くあり、現場のリーダー、マネージャーの方々が「世代間ダイバーシティ」を認識し、その世代間ダイバーシティの中で、どのように効果的なコミュニケーションを実践するかに奮闘されている姿が浮かんできます。このような状況の中で、1on1を導入してもうまくいくわけがありません。やはりきちんと自分の世代とミレニアル、Z世代の何が違うのか?についての認識から始めることが得策と言えます。
この問題に対して「相手の価値観を認めましょう」というだけであればだれでも言えることですが、価値観の中にも一般的な価値観と労働価値の2種類があることに触れてマネジメント施策に展開することの重要性を説いたのがエリクシアの上村さんで、その著書、『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』は増刷を続けているベストセラーです。労働価値を理解し、世代間だけではなく、ハイパフォーマーとそれ以外の人の労働価値の違いといった観点を把握し、組織をパフォーマンスをあげていきたいとお考えの方はぜひ読んでみることをお勧めします。(著書のハイライトおよび背景にある考え方を上村さんご本人が解説した内容はこちらでご覧ください。ポジティブになる前にネガティブな要素を潰すほうが組織のマネジメントとして効果が高い、等、データに裏打ちされた知見が満載です)
さて、核心となるコミュニケーションとチームビルディングですが、価値観が多様化する中で単に「相手を承認する」、「ポジティブに考える」だけでは「ぬるま湯組織」の一丁あがりです。多様な価値観をもったメンバーを束ねてチームをあるべき方向性に持っていくためには、ときには「耳の痛いフィードバック」をメンバーにしなくてはならない場面もあるかと思います。
そんなときに役に立つのがCCLのSBIIフレームワークです。このフレームワークはCCLのこれまた膨大な調査研究によって明らかになった「できるリーダーのフィードバックの仕方」をモデル化したものです。
非常にシンプルなフレームワークですが、シンプルであるからこそ使い勝手の良いものになっていると思います。
例えばチームミーティングの場(Situation)でチームの取り組みに対してなんだかネガティブな発言を繰り返し(Behavior)、チーム全体が重い雰囲気になる(Impact)というのは、意外と見受けられる状況ではないでしょうか?
こんなときに「●●君はネガティブ思考の持ち主でチームに悪影響をもたらしている」というのは効果的なフィードバックではありませんし、場合によっては人格否定と受け止められ心理的安全性の崩壊にもつながりかねません。本人のパーソナリティではなく行動(Behavior)に着目し、具体的な場面で観察されたその行動に対するフィードバックを行うほうが重要です。
そして、さらに重要なのは本人の意図(Intent)の確認です。ネガティブな発言をした背景には実は本人にしか見えていないリスクがあるからかもしれません。その点を聞き出してあげれば、その意図に沿った行動がなんであるかのフィードバック、アドバイスが可能になります。
あまりに単純に聞こえるかもしれませんが、SBIIに要素分解をして相手に伝え、それらの要素間の整合性について丁寧にフィードバックを行うというのはできるようで意外と経験を要する作業でもあります。今日から取り組める実践手法としてぜひ活用して頂ければと思います。
さて、数回に分けてお届けしてきたCCLの大規模調査に関するコラムですが、次回(最終回)は、総まとめ編としてハイブリッドワークの中で発揮すべきリーダーシップについて触れていきたいと思います。
*心理的安全性も含めた効果的なチームビルディング手法については、以前のコラム:エベレストシミュレーションにてご紹介していますので、併せてご覧いただければと思います。