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サーバントリーダーシップとは?メリット・デメリット、実践手順3ステップをプロが紹介
目次
サーバントリーダーシップとは、相手のニーズを尊重することで、高いパフォーマンスを引き出し、成長と成功を促すことです。
サーバントリーダーシップは、長きにわたり多くの企業で採用されてきました。ただ一方で、自己を捨ててまで他者を優先しなければならないといった間違った解釈も散見されます。
そこで本記事では、サーバントリーダーシップについて、メリット・デメリット、実践手順3ステップを紹介します。なお本記事の内容は、世界を代表するリーダー育成のプロであるCCL社(Center for Creative Leadership)が、綿密なリサーチおよび支援実績を基に導き出したものですので、ぜひ参考にしてください。
サーバントリーダーシップとは
サーバントリーダーシップとは、相手のニーズを尊重することで、高いパフォーマンスを引き出し、成長と成功を促すことです。従業員のエンゲージメントを高め、個人ひいては組織全体の生産性を向上させるためによく用いられています。
サーバントリーダーシップは、1970年にロバート・グリーンリーフの「リーダーとしてのサーバント」において初めて発表されました。理論自体は古くから存在するものの、その原理・原則は現在のビジネス環境でも十分に通用します。
サーバントリーダーシップの4大原則
提唱者であるグリーンリーフによれば、「サーバントリーダーは権力を共有し、他者のニーズを最優先し、人々が可能な限り高い能力を発揮できるよう支援する者」と定義されています。ここから、サーバントリーダーシップの4大原則をまとめると、以下の通りです。
- 権力を共有・分散する
- 自分より部下やチームのニーズを優先する
- 部下やチームが成長し、高いパフォーマンスを発揮できるよう支援する
- より大きな利益のために協力する
サーバントリーダーシップの反対は「トップダウンリーダーシップ」
サーバントリーダーシップの反対は「トップダウンリーダーシップ」です。
サーバントリーダーシップの場合、部下やチームの考えやニーズを優先・尊重します。対してトップダウンリーダーシップの場合は、権力や決定権は上層部に集中しており、現場は上層部の指示に従います。
サーバントリーダーシップは、「リーダーシップのピラミッドをひっくり返したもの」と表現されることからもこの定義が適しているでしょう。
サーバントリーダーシップのメリット
サーバントリーダーシップは、以下のようなメリットをもたらします。
- メンバーの満足度向上
サーバントリーダーシップは、各メンバーのニーズや成長を優先するため、彼らの満足度が向上します。これにより、チームのモチベーションと生産性アップも期待できます。
- 信頼関係の構築
リーダーが部下のニーズを理解して共感を示すことで信頼関係を構築でき、組織内のコミュニケーションや更なる協力が促進されます。
- イノベーションの促進
チームメンバーの意見やアイデアを尊重して受け入れるため、チーム全体でのイノベーションおよび問題解決能力が向上します。
- リーダーの影響力強化
リーダーが部下やチームの成功を支援し、彼らの成長に貢献することで、リーダーの影響力が強化されます。これにより、リーダーはより信頼され、尊敬される存在となります。
- 共通目標へのコミットメント強化
権力を分散・共有することで、より相互依存的な組織文化を生み出し、共有する目標へのコミットメントを高めます。
また、サーバントリーダーシップは、リーダーシップで重要となる3要素「DAC=方向性(Direction)+アラインメント(Alignment)+コミットメント(Commitment)」を実現するためにも有効です。
リーダーシップの構成要素は方向性+アラインメント+コミットメント|プロが解説 – 株式会社インヴィニオ (invenio.jp)
サーバントリーダーシップのデメリット|注意点
サーバントリーダーシップは、バランスが一方に傾きすぎると、以下のようなデメリットが生じるリスクがある点に注意しておきましょう。
- 過度な共感でリーダー側が疲弊する
リーダーがメンバーに共感しすぎて、自身が疲弊してしまうケースがあります。
- 人間関係を気にし過ぎてしまう
リーダーがメンバーとの人間関係を重視するあまり、仕事の完成度や生産性が低下してしまいます。
- リーダーに依存してしまう
部下やチームがリーダーに過度に依存し、自ら判断・行動することができなくなります。
なお、これらは学際的な社会科学ジャーナル「The Leadership Quarterly」に掲載されたサーバントリーダーシップに関する研究の体系的レビューに基づいています。
またCCLは、リーダーが自己を犠牲にしてまで周囲を優先すると成長と幸福が損なわれ、サーバントリーダーシップスタイルの効果が薄れてしまうと指摘しています。
思いやりのあるリーダーほど、従業員を大切にし、組織や地域社会に貢献したいという意思を持っています。ただし、そのためには自分自身を知り、大切にする必要があることを忘れてはならないのです。
サーバントリーダーシップの実践手順3ステップ
サーバントリーダーシップの実践手順3ステップを紹介します。
逆説的ですが、他者のために奉仕するサーバントリーダーシップを成功させるポイントは、実は自己から始めることです。以下で具体的に解説します。
ステップ1.自分を振り返る:自分の価値観を検証する
サーバント・リーダーは、各メンバーが自分の価値観を確認し、自身について経験から学び、ニーズを発見し、目標を設定するのを支援します。
その前に、リーダー自身も同じことができているでしょうか?
サーバント・リーダーはチームの成長を支援する以前に、自分を見つめ直す時間を作ることを忘れてはなりません。これは、チームの模範となるのです。
まずは、自分の内側に目を向け、自分の価値観や経験を検証します。
360度評価を行っていれば有効なツールとなりますが、下記の質問について振り返ることから始めてもよいでしょう。
- 今の自分にとって、重要な経験として心に残っているものは何ですか?
- それらの経験は、他者へのアプローチにどのような影響を与えましたか?
- それらの経験から、どのような価値観を学び、身につけたのでしょうか?
- あなたが最も誇りに思っているスキルは何ですか?
- どんなスキルがあったらいいな、または伸ばせたらいいなと思っていますか?
- そのスキルは、あなたの価値観をどのように反映しているのでしょうか?
なぜ今のようなリーダーになれたのか、その真意を探るには、自分のアプローチの根底にある価値観を理解することが必要です。経験やスキルに焦点を当てることで、潜在的なスパイラルに陥ることなく、貴重な洞察を得ることができます。
自分の価値観が多様な人々によって形成されてきたかどうかを確認する機会でもあります。その上で「偏り」を感じるようであれば、ネットワークを広げる方法を探してみてください。
例えばLinkedInの連絡先を見てみるのも一つの手段です。その人たちは、同僚やクライアントとして一緒に働く人たちの多様性を表しているでしょうか。もしそうでないなら、より多様なネットワークとつながり、関わることで、それを変える努力を意識的にしてください。これは、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)に対する行動を開始するための小さな一歩です。
DEI(ダイバーシティ・公平性・インクルージョン)を実現する方法 – 株式会社インヴィニオ (invenio.jp)
ステップ2.自己認識を持つ:自分の影響力を知る
サーバントリーダーシップを効果的に発揮するためには、高いレベルの自己認識が必要です。自分自身の価値観と、それが自分の相互作用をどのように形成しているかを十分に理解しなければ、他人のニーズを優先することはできません。
CCLの研究によると、自己認識は効果的なリーダーシップに不可欠なスキルの1つです。変化が絶えず、解決策が複雑化する現代の環境では、自己認識を培うことがますます重要となります。
自己認識を深める最善の方法は、他者にフィードバックを求めて、自分が周囲にどのような影響を与えているかに注目することです。
同僚やチームメイト、家族からのフィードバックは、自分の行動と意図がどのように一致しているかを理解し、潜在的な盲点を特定するのに役立ちます。
また、フィードバックを求め、それに応えるための鍵は、好奇心を持ち続けることです。
自分の行動が周囲にどのような影響を与えるかについて純粋に好奇心を持つことで、「閉鎖的で防衛的な感覚」から「開放的で知識を求めようとする感覚」に変えることができます。好奇心は自己認識を促し、あなたの成長を助けるために人々を招きます。
フィードバックによる自己認識は、リーダーが依存と権力の不均衡ではなく、ギブアンドテイクの環境を作ることを助け、より効果的なサーバントリーダーシップモデルを作り出します。好奇心を持つことで、「自分のリーダーシップが他者にどのような影響を与えるのか」について、自分との関係や他者との関わり方の両面から、より深く理解することができます。
ステップ3.セルフケア:レジリエンスを高める
レジリエンス(回復力)は、私たちが仕事を管理し、成し遂げる上で常に重要な要素です。変化が激しく将来への見通しも困難なVUCAの時代において、レジリエンスは業務遂行に必要不可欠な要素へと変化しました。
セルフケア、燃え尽き症候群の予防、過労からの回復が、多くの組織にとって重要課題であることは間違いないでしょう。
先述の通りサーバントリーダーシップには、リーダーが他者のケアに傾きすぎてしまい、自らが破綻してしまうリスクがあります。
そこで以下では、CCLにおけるレジリエンス研究で明らかとなったレジリエンスを高めるためのヒントをいくつか紹介します。
- 細切れになったスキマ時間を最大限に活用する
充電のための休憩や休止は、まとまった時間である必要はありません。例えば、深呼吸をする、外を散歩する、好きな曲で踊る、好きな人に電話するなど、楽しくて元気が出ることをしましょう。
- バッテリーを充電する
あなたは1日に何回、携帯電話の充電状態を確認しますか?同じ目的で、何回自分の体をチェックしますか?携帯電話に手を伸ばすたびに、自分の体の状態を確認し、自分に必要なものを与えてあげましょう。
- 脳に新鮮な刺激を与える
脳の全く違う部分を刺激しましょう。大人の塗り絵でも、歌でも、キャンバスに絵を描くでも、脳に新しい楽しみを与えることで、創造性を発揮し、ストレス全般を軽減することができます。
- 喜びの瞬間を味わう
ポジティブな気分、経験、感情を意図的に高め、長持ちさせましょう。ウェルビーイング、幸福感、生活満足度の向上、うつ状態の軽減につながります。お気に入りの本、面白い映画、ハイキング、友人を訪ねることなど、あなたが経験する喜びをじっくりと味わうことを忘れないでください。
レジリエンス・リーダーシップの高め方についての詳細は、こちらをご覧ください。
レジリエンスを高める8つのステップ|リーダーに必須のビジネススキル – 株式会社インヴィニオ (invenio.jp)
リーダーシップのあらゆる側面と同様に、自己ケアと他者へのケアのバランスを取る能力には、波があります。サーバントリーダーシップの実践も同じです。常に他者のニーズを優先するのではなく、自分自身を優先する時間を作らなければなりません。
サーバントリーダーシップは、自己と他者への焦点のバランスをとることで、より持続可能なものにできるのです。
サーバントリーダーシップによって定着を促しつつ成果も高めるために
サーバントリーダーシップとは、支援者として相手のニーズを尊重することで、高いパフォーマンスを引き出し、成長と成功を促すことです。サーバントリーダーシップを実践する上では、自己と他者に向けるエネルギーのバランスを取ることが重要です。
他者に与える影響をよりよく理解するためには、リーダーの自己内省と自覚も欠かせません。そして、成功に不可欠な要素として、セルフケアも重視しましょう。こうしたサーバントリーダーシップにおける「自己」の側面は、すべてのリーダーが厳しい決断を迫られるVUCAの時代において、より重要といえます。
また、組織としての成果につながるサーバントリーダーシップを実践するためには、現リーダーはもちろん、リーダー候補や各メンバーにも同じように考えてもらわなければなりません。そうすることで、全従業員が互いに気を配りながら、自分自身も大切にする組織文化を創造できるのです。
弊社「株式会社インヴィニオ」は組織能力開発・人財開発の専門企業として、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットしています。事業上の成果として表れるように、人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化させることを重視しています。
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