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DEI(ダイバーシティ・公平性・インクルージョン)を実現する方法
目次
DEI(ダイバーシティ・公平性・インクルージョン)が、ビジネスの現場で重視されています。個々の違いを認め合うダイバーシティ、資源や機会を隔たりなく利用できる公平性、そして認め合った違いを包括して組織が一丸となるインクルージョン。
アメリカにおけるリーダー育成分野の権威であるCCL(Center for Creative Leadership)が、組織におけるDEIの重要性を示しています。
そこで今回は、DEI(ダイバーシティ・公平性・インクルージョン)について、定義からCCLが確立したDEI実現のための4ステップ、さらに実現に有効な5つの方法を紹介します。
DEI(ダイバーシティ、公平性、インクルージョン)とは
DEI(ダイバーシティ、公平性、インクルージョン)とは、ダイバーシティ(Diversity)、公平性(Equity)、インクルージョン(Inclusion)の頭文字をとった言葉です。
ダイバーシティ(Diversity):特徴、価値観、信念、経験、背景、行動などの違いを認め、賞賛すること
公平性(Equity):すべての個人やグループがその可能性を最大限に発揮するために必要な資源や機会を、状況に応じて公平に利用できること
インクルージョン(Inclusion):ダイバーシティで認めたそれぞれの違いを個性や強みとして発揮し、組織が一丸となって活動すること
DEI(ダイバーシティ、公平性、インクルージョン)を実現する4ステップ
DEI(ダイバーシティ、公平性、インクルージョン)を実現する4ステップを紹介します。4ステップはまとめて「REALフレームワーク」と呼ばれており、CCLにより開発されました。
以下で、各ステップを具体的に紹介します。
1.関連する機会を明らかにする
まずは、個人、チーム、組織全体の多様性、公平性、インクルージョンがどのような状況下で機能しているかを認識することが必要です。ここでのポイントは「発見すること」です。少なくとも、アジェンダを設定したり他社で効果があった取り組みを再現したりすることではありません。
自社におけるDEIの方向性を定めてコミットメントを生み出すために、最初のステップを踏み出しましょう。具体的には、次の通りです。
- 個人および集団のものの見方やアイデンティティ、価値観、文化を明確にする
- 権力や特権が自分や周囲の行動・効果にどのように影響するかを検討する
- DEIが市場やビジネス戦略にどのように影響するかを評価する
各リーダーは自分の置かれている状況を見直すことで、望ましい結果をもたらすことができる戦略的なアクションを特定できます。
2.公平性を育む
公平性とは、すべての人が可能性を最大限に発揮できるように、隔たりなく機会が与えられていることです。ダイバーシティとインクルージョンは、それらを推進すること自体は賞賛に値するとしても、公平性がなければ持続可能にはできません。そのためCCLは、公平性を前面に出してEDIと呼んでいます。
DEIを推進するためには、まず組織のリーダーが現状の不公平さを認めて、公平な競争の場を提供できていないという事実を受け入れる必要があります。
組織に属せば、不均等に存在する優位性、機会、特権、権力などにさらされながらキャリアを積んでいくことになります。そのため一言で「公平な機会」といっても、誰にとっても同じものではありません。
組織のリーダーが不公平さに対抗する意志を表明するとともに、障壁があることを認めた上で、公平性の向上に向けた明確な目標を設定し行動を起こすことは、組織のダイバーシティやインクルージョンの取り組みの基盤となります。
3.ダイバーシティを活性化する
ダイバーシティの活性化とは、従業員や顧客同士の違いを認識し、それに関わっていくプロセスのことです。ダイバーシティの活性化を図ることで、マネージャーやチームは、ダイバーシティがものの見方や行動にどのような影響をもたらすかを探り、各位の貢献度を高める方法を見出すことができます。
4.インクルージョンを実践してリードする
インクルージョンには、従業員・お客様・戦略的パートナーの参加を促し、帰属意識を高めるための積極的・意図的・継続的な取り組みが必要です。
リーダーはそのレベルや部門・部署を問わず、今何が求められているのかを学び、インクルージョンを発揮したリーダーシップとは何かを解釈していく必要があります。
また「偏見を解消する・違いを尊重する・共感できる関係を築く・アラインシップ(仲間意識)を育む・対立を管理する・メンバーのベストを引き出す」などの能力を向上させるためには見合ったツール、リソース、サポートが必要です。
DEI(ダイバーシティ、公平性、インクルージョン)を実現する5つの方法
DEI(ダイバーシティ、公平性、インクルージョン)を通じて、企業文化により良い変化を持続的にもたらすには意図的なアプローチが必要です。ここでは、CCLが推奨する5つの有効な方法を紹介します。
1.会話を変える
意義のある会話ができなければ、非生産的な関係を生み出す恐れがあります。背景や考え方が大きく異なる人や、役割やリーダーシップスタイルが異なる人と仕事をするには、常に効果的な会話をできることが必要です。
縦割り組織やコミュニケーションの壁を取り払うために、EDIに関する会話を促進しましょう。CCLが手がけた「Better Conversations Every Day™(毎日より良い会話をしよう)」プログラムでは、組織内のあらゆるレベルや役割のリーダーに、理解を得るための聞き方や、コーチング的な会話の仕方を教えています。
より良い文化はより良い会話から始まります。組織の日常的な会話の質を向上させることで、よりオープンに違いを尊重して理解し合えるような文化を育むことができます。そこから、より良いコラボレーション、より多くのイノベーション、より高い効果へと発展するのです。
2.境界を越えたネットワークを通してつながる
なぜ境界を越えなければならないのかをチームが理解するように努め、どうすればより効果的に境界を越えた関係を築けるのかを探りましょう。
ネットワーク分析は、不公平感はどのように生み出されるのか、また、多様な人や考え方を取り入れるのをどれほど妨げているのかを理解するための強力なツールです。
まず、アンケートやメールのやり取りなどのデータを収集し、表に出ていない人間関係や交流のパターンをマッピングするネットワーク分析を検討してみてはいかがでしょうか。その結果、特定の人への依存や孤立、貴重な専門知識や見解をもっているのに交流が無いなどが明らかになるでしょう。
DEIの取り組みを通してリーダーは、自分のネットワークに偏見がどのように組み込まれているか、それが自分やチームにどのような制限をもたらしているかを知ることができます。
この情報をもとに、自分が交流していない人やグループを特定し、ネットワークを多様化するための目標を設定し、他者を巻き込んで組織の縦割りの関係を越えたつながりを構築するための手段を講じることができます。
3.コーチング、メンタリング、スポンサー制度を強化する
多くの場合、組織で有力なリーダーと「異なるタイプ」の人は、無意識に持つ偏見や組織内の権力構造が原因で、活躍の機会を得たり困難を乗り越えるためのサポートを受けたりしづらいのが実状です。その結果、彼らのキャリアは停滞してしまうのです。
組織はこうした偏見を克服するために従業員のコーチングスキルを向上させる必要があります。またすべての従業員の能力開発、貢献、キャリア向上を可能にするためにはネットワークの構築も欠かせません。
- マネージャーは、直属の部下全員の声に耳を傾け、フィードバックを与え、サポートを提供し、機会を提供する
- メンターは、特定のニーズに合わせて、あるいは継続的な開発のために、指導、フィードバック、サポートを提供する
- シニアリーダーは、対象者のキャリアアップを積極的に応援する効果的なサポーターとなる
- 人材管理・人事部は、マネージャー、メンター、スポンサーに上記の期待を伝えるとともにDEIトレーニング、リソース、ツールを提供する
4.人材育成のプロセスを分析する
人材育成プロセスは、規範を示したり設定したりするプロセスであり、制度全体を変革するための原動力にもなり得ます。人材の募集、採用、昇進に関連する制度とプロセスを見直すとともに、報酬に関するデータも精査しましょう。
また、必要とされる評価やチャレンジ、サポートが提供されているかどうかを見極めながら、従業員の育成方法を検証しましょう。その際にチェックすべき点は以下の通りです。
- OJTや重要な任務にアクセスできるのは誰か?
- トレーニングやリーダーシップの経験を積むのは誰か?
- コーチング、メンタリング、スポンサー制度の対象者は誰か?
- 個人の現在の能力と将来の可能性はどのように想定されているのか?
- 一部の人やグループに異なる基準が適用されているか?
またマネージャーやチームが、仕事の進め方や従業員の経験を形成する仕組みを作っている実務やポリシーを評価し、偏見が入り込んでいないかを確認することも必要です。
あなたの組織には偏見を克服する方法はありますか?暗黙の規範、スケジュール管理、ネットワーキングの機会、仕事のアレンジメントなど、すべてが再考・改善の余地のある分野です。
5.アイデンティティを掘り下げる
社会的アイデンティティの概念を知ることで、共通点や相違点は何か、そしてそれらが職場にどのような影響を与えるかを理解することができます。社会的アイデンティティとは、年齢、民族、人種、宗教、性別、性的指向、国籍、教育、身体能力、社会経済的地位などの集団に属することで得られるアイデンティティを指します。アイデンティティを自覚することで、明確な視点や独自の価値観が形成され、時には権力や特権の根源となります。
不公平感の多くは、長年にわたって確立された構造、無意識に前提としていることや、社会的アイデンティティに結びついた経験によってもたらされます。
コミュニケーション、DEIに関するトレーニング、会話を通して、自分の社会的アイデンティティが、他人との関わり方や意識下の偏見にどのような影響を与えているかを認識できるようになります。また、社会的アイデンティティが他者の経験をどのように形成しているかを学び、考えることができます。
社会的アイデンティティのレンズを通してダイバーシティを定義することで、すべての従業員が、ダイバーシティ、公平性、インクルージョンの議論に自分を当てはめることができます。
社会的アイデンティティについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
社会的アイデンティティとは?リーダーとしての必須知識【セルフチェック付】
DEI(ダイバーシティ、公平性、インクルージョン)が実現した企業を目指す
DEI(ダイバーシティ、公平性、インクルージョン)を組織で実現することで、リーダーは成果を迅速に導き出すことができるとともに、すべての人材のポテンシャルを引き出すことができるでしょう。そのためには今回紹介したCCLが提唱する手法が有効です。
しかし、CCLがもつ世界で最先端のリーダー育成の知識やノウハウを提供できるサービスは、日本国内では皆無なのが実状です。
そこで弊社「株式会社インヴィニオ」が、CCLを含む世界中のアライアンスパートナーから得た最先端のノウハウを用いて、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させます。20年以上積み重ねてきた確かな実績およびノウハウがあるからこそ可能です。
EDI(公平性・ダイバーシティ・インクルージョン)を実現したい、まずは相談して見たいとお考えの場合は、ぜひこちらからお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人:インヴィニオ編集部