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リーダーシップの構成要素は方向性+アラインメント+コミットメント|プロが解説

目次
リーダーシップとは、個人では困難な目標を達成するために、皆が協力して取り組むことを可能にする社会的プロセスのことです。本来リーダーシップとは、個人の能力で完結するものではなく、組織内における「方向性・アラインメント・コミットメント」の3要素によって発揮されるものなのです。
そこで本記事では、リーダーシップを構成する「方向性・アラインメント・コミットメント(通称:DAC)」について、定義など基本情報から評価手順、形成方法まで紹介します。
なお本記事にて紹介する内容は、世界を代表するリーダー育成のプロ(専門機関)であるCCL(Center for Creative Leadership)が、綿密なリサーチおよび支援実績を基に導き出したものですので、ぜひ参考にしてください。
そもそもリーダーシップとは
そもそもリーダーシップとは、個人では困難な目標を達成するために、皆が協力して取り組むことを可能にする社会的プロセスのことです。これは、長年にわたり各国企業のリーダー育成をリードしてきたCCLの定義によるものです。
リーダーシップは相互作用で生じる「社会的プロセス」である
重要なのは、「社会的プロセス」としている点です。社会的プロセスとは、人々が互いに影響を及ぼしあい、相互に関わり合う過程や構造を指します。つまり、リーダーシップとは、個人の能力で完結するものではないということです。
そのため、リーダーシップを個々のマネージャーとその能力のみに頼るのではなく、組織内の全体的な仕組みがリーダーシップにどのように関与しているかを明らかにすることが重要です。
従業員とそのマネージャー間のやりとり、チームメンバー間の相互作用、組織全体における関係の質、既存の組織構造などを考慮してください。これらはすべて、リーダーシップに影響を与える可能性があります。
リーダーシップの構成要素は「方向性+アラインメント+コミットメント」
リーダーシップは、「方向性(Direction)+アラインメント(Alignment)+コミットメント(Commitment)」の3要素で構成されます。それぞれの頭文字をとって「DAC」と呼びます。部門、部署、プロジェクトチームひいては組織全体のいずれの場合でも、リーダーシップを発揮するには、人々の相互作用によってこれらを形成する必要があります。
- 方向性(Direction)
一緒に達成しようとしていることに対する合意(目的・目標への合意) - アラインメント(Alignment)
連携・結びつき。作業のさまざまな側面を効果的に調整および統合して、共通の方向性に対応できるようにする - コミットメント(Commitment)
集団の成功を個人的な事項よりも優先できている状態
これらの3要素により、個々人が積極的かつ効果的に協力して組織の成果を実現することが可能になります。つまり、リーダーシップを実現するということは、「方向性・アラインメント・コミットメント」を実現することに他なりません。
CCLは、リーダーシップを評価する唯一の方法は、組織においてこれら3要素が発揮されているかを評価するしかないとしています。
リーダーシップを発揮するのは、特定のリーダーではないということです。ただし、CCLはリーダーシップ開発の重要性を放棄しているわけではありません。個々のリーダーの才能と能力を開発することはいずれにしても重要です。ただし、組織全体としてのリーダーシップを向上させるには十分ではないことを示唆しています。
複数の人々の行動、反応、やりとりが相互に作用して「DAC」を生み出すのです。
組織の方向性・アラインメント・コミットメント(DAC)を評価する
DACに関するホワイトペーパーの調査で概説しているように、組織において各要素の強弱を示す特徴は次のとおりです。
方向性(Direction)
- 強い場合:
メンバーは、理想とする姿(目的・目標)について共通の理解を持ち、達成を目指すことに同意している。 - 弱い場合:
メンバーは、何を達成すべきかについて確信を持てない、もしくは個々の目標を競うことに重きをおいている。
アラインメント(Alignment)
- 強い場合:
さまざまな役割や専門知識を持つメンバーが連携して一連の作業を調整しながら推進している - 弱い場合:
メンバーは孤立して作業し、目の前の業務が組織の目標に適合するかについて不明確なため、業務の過不足や失敗が生じる
コミットメント(Commitment)
- 強い場合:
メンバーは組織の成功に責任を感じ、他のメンバーも同じであると考えている。彼らはお互いを信頼し、困難な時期を乗り越えて組織とのつながりをより強化する。 - 弱い場合:
メンバーは、グループの利益よりも自分の利益を優先しており、簡単にできる場合、または何かを得られる場合にのみ、グループに貢献する。
また、方向性、アラインメント、コミットメントを発揮しているかどうかを認識する方法の概要は次のとおりです。
発揮している | 発揮していない | |
方向性 | ・ビジョン、望ましい未来、または誰もが賛同する一連の目標がある
・メンバーは、組織の目的・目標にどのような価値があるかを説明できる ・メンバーは集団的な成功がどのようなものであるかについて同意している |
・優先についての合意が不足している
・メンバーはまるで彼らが異なる方向に引っ張られているように感じている ・メンバーは限られた枠内に留まっている状態 |
アラインメント | ・誰もがお互いの役割と責任について明確である
・各個人やグループの仕事は、他者や他グループの仕事と連携がとれている ・組織化、調整、同期の感覚がある |
・締め切りに間に合わない、やり直しが必要、努力の重複がある
・人々はお互いから孤立していると感じている ・グループは互いに競争している |
コミットメント | ・メンバーはグループが成功するために必要なプラスαの努力をしている
・仕事には信頼と相互責任の感覚がある ・メンバーは仕事に対する情熱とモチベーションを示している |
・簡単なことのみが成し遂げられている
・誰もが「私自身にとってどうか」ばかりを考えている ・「有言実行」を行えていない |
組織の方向性・アラインメント・コミットメントを高める手順
CCLでは20年以上にわたり、多種多様な企業を対象に「DAC」のフレームワークを使用してきました。組織のDACを高める手順は次のとおりです。
1.現時点におけるDACのレベルを評価する
最良の方法は、関係するすべてのメンバーから意見を聞くことです。自分の視点だけに頼っている場合は、重要な情報が不足している可能性があります。各メンバーが次のようなステートメントにどの程度同意しているかを確認しましょう。
- 組織やチームが掲げる目的・目標に同意します。
- より重要な作業に取り組むための優先順位が明確です。
- 各個人の仕事は周囲の仕事とうまく連携・調整されています。
- 自らの担当業務が組織全体としての取り組みにどう位置づけられるか明確です。
- 私たちは、個人の成功よりも組織の成功を優先します。
2.レベルが低い要素について深く掘り下げる
レベルが低い(弱い)DACに寄与する要因としては、次のようなものが挙げられます。
- 方向性は明確にされておらず、話し合われていません。
- 無計画または計画を他者の業務に結び付けずに、タスクやプロジェクトに取り組みます。
- 関連する専門知識を持つメンバーを招き入れたり、仕事の割り当てを効果的に管理したりすることはありません。
- リソースが適切に割り当てられていません。
- 誰がどのタスクに責任を負っているのか、誰がどのような決定を下す権限を持っているのかは不明です。
- 作業の側面が亀裂を通り抜けるところに、努力の重複やギャップが見られます。
- グループのメンバーは、自分たちが問題に対処する能力や影響力を持っているとは考えていません。
- 個人は、グループへの貢献にふさわしいクレジットを獲得しているとは感じていません。
3. 最適な改善策を検討する
見つけた問題に対処する方法は無数にあり悩みますが、特に注力すべきポイントです。自組織の洞察力と創造性を結集して、重要な問題に対処するための施策を考え出す必要があります。
また、アイデアやソリューションについて外部の専門知識を活用することも可能です。方向性・アラインメント・コミットメントの評価結果は「組織レベルの結果」であることに注意してください。組織のあらゆる側面も全メンバーに影響を与える可能性があります。
DACを強化するために、次のような点を改善する必要性が生じます。
- メンバー間の相互作用・コミュニケーションの質または頻度
- 特定のメンバー間における関係性
- 意思決定または作業を遂行するための公式または非公式のプロセス
- メンバー個々のスキル
- 組織文化や価値観
組織内の方向性・アラインメント・コミットメントを形成するための戦略
ではリーダーとして、どのようにしてDACを形成し、組織内でリーダーシップを発揮させるのでしょうか。ここに3つの重要な戦略があります。
1. リーダーシップが発揮されているかに注意を払う
DACの証拠を探し始めます。成果や物事の結果に注意を払うことで、改善ポイントを見極めるだけでなく、望ましいレベルの方向性・アラインメント・コミットメントを生み出しているプロセスや相互作用の種類もわかり始めます。
2. より多くのリーダーシップを実現する
実施されているリーダーシッププロセスが少ないことに気付いたら、それらを形成します。有用なリーダーシッププロセスが実施されている場合は、メンバーがそれらのプロセスに参加するスキルを持っていることを確認してください。
また、既存のプロセスが必要な方向性・アラインメント・コミットメントを生み出していないように見える場合は、新しいプロセスを模索します。
例えば、次の点について考えてみましょう。
より多くの「方向性」を形成するための問い:
- より多様なメンバーが関与する必要はありませんか?
より多くの「アラインメント」を形成するための問い:
- 新しい戦略的イニシアチブが開始されたとき、各メンバーは自分の仕事への影響を分析するスキルを持っていますか?
- 仕事に優先順位を付けるために、同僚ともっと定期的に会う必要性はないでしょうか?
- より明確な説明責任の構造が必要ではありませんか?
より多くの「コミットメント」を形成するための問い:
- 提案された改善策についてもっと正直な会話が必要ではありませんか?
- すべてのプロジェクトに十分なリソースがあることを保証しながら、各メンバーを彼らが最も熱心に取り組んでいるプロジェクトと一致させることができますか?
3.リーダーシップの育成に参加する自分自身の能力を向上させる
個々のスキルや能力を継続的に深め、広げることは有用です。幅広く対応できるスキル・能力を有していれば、幅広いプロセスにより効果的に参加できるようになります。
どこに重点を置くべきか迷っている場合はDACモデルが有効です。
- 組織内でDACをもっと強化したい場所があるとしたら、それはどこでしょうか?
- 多くのリーダーシップを発揮できるようにするには、何を上手に行う必要がありますか?
もちろん、DACアプローチは簡単な解決策ではありません。しかし、それは明確さと進むべき道を提供します。方向性・アラインメント・コミットメントがどこで起こっているのか、反対にどこで起こっていないのかを明確に示すことが可能です。新しいリーダーシッププロセスを使って組織内のメンバーを参加させ、自らの能力を向上させる方法について意見を求めてください。
リーダーシップは共同作業であるため、結局のところ、真のリーダーシップは組織内の協力をもって初めて実現可能なのです。
成果につながる真のリーダーシップを組織全体で実現する
リーダーシップとは、個人では困難な目標を達成するために、皆が協力して取り組むことを可能にする社会的プロセスのことです。リーダーシップは、個人の能力で完結するものではなく、組織内のメンバーが互いに相互に関わり合うプロセスによって初めて発揮されます。
そしてリーダーシップの構成要素は「方向性・アラインメント・コミットメント」です。各要素の現時点におけるレベルを正確に評価し、レベルが低い要素について深く掘り下げ、改善策を組織全体で実施することで、リーダーシップを発揮することができるのです。
弊社「株式会社インヴィニオ」は人材育成のプロとして、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットします。事業の成果として表れるように、人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化させることを重視しています。
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