デニソンモデルの概要
LEADERSHIP INSIGHT / DENISON | 2021/11/12
目次
デニソンモデルによる組織文化診断とは?
デニソンモデルは20年以上にわたる組織文化と業績(パフォーマンス)の関係性のリサーチを基にしたユニークな特徴を持つ大変優れたモデルです。デニソンモデルを基にした組織文化診断と組織文化変革のソリューションは、これまでに世界中の何千もの組織で、戦略実行の為のアラインメント形成、M&A、各種変革実行、ターンアラウンド、新リーダーへの移行など、さまざまな状況で導入され、成功を収めています。
デニソンモデルは、売上高成長率、株主資本利益率(ROE)、投資利益率(ROI)、顧客満足度、イノベーション、従業員満足度、製品・サービス品質などの企業の業績に貢献する組織文化の要素を特定したリサーチベースのモデルです。このモデルと組織文化診断は、ダニエル・R・デニソン博士とウィリアム・S.ニールによる25年以上にわたる研究と実践に基づいています。
デニソンモデルの特徴
- 強力なリサーチ基盤に根ざしている
- 信頼性と妥当性が証明されている
- 基準となるベンチマーク・データベースとの比較結果を提供する
- サーベイ結果を統計的分析によるパフォーマンス指標と結びつけることができる
- 世界のさまざまな産業分野の幅広い組織に適用されている
- 50以上の言語で翻訳、ローカライズ、展開されている
デニソンモデルについて
組織文化のデニソン・モデルは、組織を効果的に機能させる4つの重要な特性を強調しています。このモデルの中心となるのは、組織における「信条や前提」です。これらは、組織のアイデンティティの中に深く根付いており、外からは見えにくいものです。
デニソンモデルの4つの特性である「方向性」「適応性」「自律性」「一貫性」は、これらの信条や前提に基づいて行われる行動を測定し、組織の文化を作ります。これらは色分けされ、組織の文化に関する疑問に答えられるように設計されています。
方向性:
組織の方向性を理解していますか?
適応性:
市場/外部環境に適応していますか?
自律性:
従業員は一体感がありますか?
一貫性:
組織能力を発揮・強化できるような価値観、システム、プロセスが整備されていますか?
それぞれの特性は、3つのインデックスに分類されます。
例えば、適応性は変革、カスタマーフォーカス、組織学習の3つに分類されています。各インデックスは4つの質問で構成されており、合計48の質問が用意されています。4つの特性は、それぞれ円周上の色で表されています。この色分けによって4つの特性に分類しやすくなり、またレポートが視覚的・直感的にも分かりやすくなっています。
デニソンの研究では、効果的な組織は4つの特性すべてにおけるスコアが高いことが実証されています。したがって、成果を挙げることのできる組織は、柔軟に外部環境に適応する適応性がありながらも組織運営の仕組みにおいて一貫性を保ち、従業員を巻き込みながら、ミッションを共有するような文化を持っている可能性が高いといえます。さらにこの強固なモデルは、内部/外部と、柔軟性/安定性の2種類に分かれています。
外部へのフォーカス
適応性+方向性
外部へのフォーカスが強い組織では、外部環境に対応して適応し、変化していくことにコミットしています。このような組織は、常に市場に目を向け、どこに向かおうとしているのかをしっかりと把握しているものです。外部に強くフォーカスすることは、一般的に収益、売上成長、市場シェア拡大に効果的といわれています。
内部へのフォーカス
自律性+一貫性
内部に強いフォーカスを当てた組織は、システム、構造、プロセスの内部統合のダイナミクスを重視しています。また、従業員を大切にし、製品やサービスの品質に誇りを持っているものです。内部に強くフォーカスすることは、高いレベルの品質と従業員満足度にもつながります。
安定性
方向性+一貫性
安定した組織は、長期にわたって集中力と予測可能性を維持する能力を持っています。
このような特徴の組織は、典型的には、資産、投資、売上の成長に対する高いリターンや、強固な事業運営体制を備えているものです。
また、成功する組織になるためには、折り合いをつけなければならない2つの対峙する価値観があります。1つ目は、「方向性」と「自律性」の特性に代表される、トップダウン型マネジメントとボトムアップ型マネジメントとの対峙であり、組織としてこれをしっかりと理解することが重要です。組織が成功するためには、組織の方向性、目的、目標を結びつけると同時に、従業員のオーナーシップ、コミットメント、責任感を共有することができなければなりません。
2つ目の対峙する価値観とは、「適応性」と「一貫性」です。成功する組織は、外部に適応していくことと内部で統一性を持たせることという、二つの課題のバランスをとる方法を会得しています。どのような場合でも、どちらか一方に偏るべきではありません。私たちの経験によれば、最も成功している組織は、バランスのとれたプロフィールを持っているものです。
調査結果の解釈
DOCSが採用されると、個々の結果が集計され、円グラフレポートとして報告されます。
円グラフレポートでは、12のインデックスごとにパーセンタイルスコアが数値で示されます。
パーセンタイルスコアは、クライアント企業の回答データと私たちがこれまでに蓄積しているグローバルデータベース内にあるデータとを照らし合わせて算出されます。
例えば:
ある組織は、方向性の特性の「ビジョン」というインデックスにおいて 58 のパーセンタイルスコアを獲得しました。これは、データベース上の58%の組織が、この組織よりも低いスコアを出したことを意味します。
「ビジョン」 のスコアには 3 つの色のセグメントがありますが、これはパーセンタイルの結果が3つめの枠(100分の75以内)に入ることを示しています。一方、「ゴールと目標」 のインデックスには 2 つの色のセグメントがありますが、これは 46 パーセンタイルが2つ目の枠(100分の50以内)に入ることを示しています。
グローバルデータベースとパーセンタイル
デニソン・コンサルティングは、グローバルなデータベースに登録されている1,000以上の他の組織の結果と比較して、クライアント企業の組織文化を診断します。パーセンタイルスコアは、データベースに登録されている他の組織と比較して、クライアント企業がどのあたりの順位にあるかを示します。
例えば、「顧客フォーカス」というインデックスのパーセンタイルスコアが94であれば、データベースに登録されている組織の94%よりも高いスコアを獲得していることになりますので、結果を理解し解釈しやすくなっています。
パーセンタイルを使用すれば、結果に意味を持たせることができ、「これでいいのだろうか」という疑問にも答えやすくなります。例えば、あるインデックスの平均値が2.5だというだけではそれほど多くの情報は得られません。しかし、その平均値がパーセンタイルの34という値に変換された場合、この分野が注意を払うべき脆弱な分野であることが分かります。
パーセンタイルは、結果に意味と文脈をもたせます。規範データベースに登録されている組織は、多岐にわたる業界や地域に属しています。
継続的な調査の結果、金融から製薬までのどのような業界であれ、さらには異なる国であっても、グローバルデータベースと非常に類似した結果が得られることがわかりました。
カスタマイズとレポート
デニソンの組織文化サーベイは、クライアント企業のニーズに合わせてカスタマイズすることができます。点数式、自由記述式、ドロップダウン形式などの形で質問を追加することも可能です。
最も一般的なカスタマイズは、ドロップダウン式のデモグラフィックの観点からの質問を追加することです。事業部門別、地域別、役職別などのグループに分けられたレポートを作成することができます。また、それ以外でもニーズに合わせてカスタムレポートを作成することも可能です。デニソンのアカウントマネージャー、Ph.D.レベルの研究員、コンサルタントのチームが、お客様の組織が最大限のパフォーマンスを発揮するために必要な情報を提供する調査の作成をお手伝いします。
信頼性と有効性
私たちのリサーチは大きな違いを生み出します。デニソン組織文化調査で使用されている各スケールは各種統計手法を用いて検証されています。デニソンモデルは豊富なリサーチと科学的検証方法を用いて、診断項目及び結果が企業のパフォーマンスに好影響をもたらすことを実証しているのです。
私たちはリサーチに基づいた組織であり、独自のモデルとリサーチ力に誇りを持っています。現在進行中のデニソンのリサーチプロジェクトでは、企業文化と、顧客満足度、売上高成長率、投資収益率、粗利益率などの組織の有効性に関する指標との相関関係を調査しています。その結果、デニソン組織文化リサーチで測定された組織の文化が、パフォーマンスに直接関係していることがわかりました。
関連資料
デニゾン・コンサルティング(2005年4月) :Overview of the Reliability and Validity of the Denison Organizational Culture Survey(デニソン組織文化サーベイの信頼性と妥当性の概要)。Ann Arbor, MI著。
デニゾン・コンサルティング(2009年):Overview of the 2009 DOCS Normative Database(2009年DOCS規範データベースの概要)。Ann Arbor, MI著。
Denison, D. R. (1984年):Bringing corporate culture to the bottom line(企業文化をボトムラインに結びつける)。 Organizational Dynamics(組織のダイナミクス), 13(2), 4-22.
Denison, D. R. (1990年):Corporate culture and
organizational effectiveness(企業文化と組織的有効性)。New York:John Wiley & Sons社。
Denison, D. R., Janovics, J. E., & Young, J. L. (2004年): Diagnosing Organizational Cultures: Validating a Model and Method(組織文化を診断する:モデルと方法の検証)。Ann Arbor: デニゾン・コンサルティング。
Denison, D. R. and Mishra, A. K. (1995年):Toward a theory of organizational culture and effectiveness.Organization Science(組織文化と有効性の理論に向けて – 組織の科学), 6(2), 204-223.