leadership-insight
リーダーシップインサイト

- ホーム
- リーダーシップインサイト
- 女性リーダーの成長に欠かせない、“後押ししてくれる存在”の力|組織文化を変える鍵は、様々な支援ネットワークにある
女性リーダーの成長に欠かせない、“後押ししてくれる存在”の力|組織文化を変える鍵は、様々な支援ネットワークにある

目次
- 1 組織内で女性を支えるメンターシップとスポンサーシップの推進
- 2 なぜ今、女性にとってメンターの存在がこれまで以上に重要なのか
- 3 「メンター」と「スポンサー」の違いとは?
- 4 職場におけるメンタリングとスポンサーシップの違い
- 5 なぜ職場におけるスポンサーシップは男女で不均衡なのか?— 女性リーダーが「スポンサー」を得にくい4つの理由
- 6 男性は、女性にとって意味のあるスポンサーやメンターになれるのか?— 男性自身も得るものがある
- 7 女性リーダーが強固なネットワークを築くために、組織ができること
- 8 女性リーダーのためのメンタリング&スポンサーシップを前進させるために— 人事・経営層の皆さん、今すぐ始めましょう!
女性がリーダーとして活躍するためには、単なる努力や能力だけでは届かない“壁”が存在します。だからこそ、メンターやスポンサーといった「後押ししてくれる存在」が必要です。
彼らは助言をくれるだけではなく、チャンスをつないだり、会議の裏側で推薦したりと、本人のいない場でも力強く支援します。とくに組織の上層部に多い男性リーダーがこの役割を担うことで、ジェンダーによる偏りを乗り越える鍵となります。
とはいえ、こうした関係が自然に生まれるわけではありません。人事や経営層が意図的にネットワーク形成を後押しし、メンタリングやスポンサーシップの文化を根付かせていく必要があります。
本コラムでは、女性リーダーが直面する課題と、それを打開するための「見えない支援ネットワーク」のつくり方について、具体策とともにご紹介します。CCLの研究とリサーチに基づく内容ですので、ぜひ参考にされてください。
組織内で女性を支えるメンターシップとスポンサーシップの推進
キャリアを前進させたいのであれば、女性であれ、あらゆる性別のリーダーであれ、自分自身のために声を上げ、積極的に動くことが求められます。しかし、女性がリーダーシップを発揮しようとする際には、より大きな社会構造の中に根付いた課題に直面することが少なくありません。
女性は長い間、社会の中で中心から外れた立場に置かれてきました。性別だけでなく、人種や経済的な背景、年齢、宗教、性的指向、家族構成、あるいは介護を担っているかどうかといった、さまざまな要素が重なることで、職場や社会の中で不利な扱いを受けることが少なくありません。
こうした状況の中でキャリアを築き、成功を収めるためには、女性たちは決して一人では進めません。必要なのは、自分を支え、推してくれる「チャンピオン」のネットワークです——その中には、メンター(助言者)やスポンサー(後ろ盾)も含まれます。
なぜ今、女性にとってメンターの存在がこれまで以上に重要なのか
世界中で、女性たちはパンデミックとその影響によって、前例のない規模で職を失いました。自ら退職したケースもあれば、望まぬ離職に追い込まれたケースもあります。
COVID-19の発生以降、女性の離職率は、業種、職階、国籍を問わず、ほぼすべての分野で男性を上回っています。
2020年から2021年にかけては、10人中4人以上の女性が「退職や転職を考えた」と答えており、実際にパンデミック中に仕事を辞めた、あるいは解雇された女性のうち、2022年2月の時点で依然として無職だった人が35%にものぼりました。
こうした状況は、パンデミックによって急に始まったことではありません。実はそれ以前から、女性は上級管理職レベルでの登用が極端に少ないという課題を抱えていました。これは、女性が学歴において男性を上回っていることが多く、ほとんどの国で労働人口の約半数を占めているという現実にもかかわらずです。
特に、有色人種の女性にとっては、賃金格差やリーダーシップポジションでの不均衡はさらに深刻です。
女性のキャリアに対するパンデミックの打撃を取り戻し、より公正で多様性に富んだ、誰もが受け入れられる職場文化を築くためには、組織側が女性に不利に働いている構造的な不均衡に向き合う必要があります。
そして、女性リーダーたちが成長し、成果を出していけるよう、十分なリソースと支援を提供しなければなりません。
CCLから発刊した著書『Kick Some Glass: 10 Ways Women Succeed at Work on Their Own Terms』でも述べているように、人の成長には、周囲の人間関係が大きな影響を与えます。周囲の人々は、その人がベストなリーダーになるための後押しもできれば、逆に足を引っ張ることもできてしまうのです。
そのため、キャリアのステップアップを目指す女性が、影響力のあるリーダーと信頼関係を築き、前向きな支援を受けられるようにすることは、極めて重要です。
組織が女性リーダーを支援するための第一歩として、特に重要なのがメンターとスポンサーの存在を優先的に整えることです。特に、経営層や意思決定層に多い男性リーダーが、その役割を積極的に担うことが求められます。
メンターとスポンサーはどちらも、リーダーを目指す女性にとって欠かせない存在です。キャリアアップに必要な視野や人脈を広げ、より大きな役割に挑戦していくための後押しとなるのです。
「メンター」と「スポンサー」の違いとは?
中堅クラスに差しかかる頃には、多くのリーダーがこう語ります——「自分には、これまでに支えてくれた上司やコーチ、同僚、友人といった“助言者”が何人かいる」と。彼らの支えによって、自信を育み、必要なスキルを身につけてきたのです。
こうした助言者の中には、メンターやスポンサーとして関わってきた人たちも含まれているでしょう。
メンターとスポンサーはどちらも、女性のキャリア形成において重要な役割を果たしますが、その機能や関わり方には明確な違いがあります。
項目 | メンター | スポンサー |
---|---|---|
役割 | あらゆる職位にいる経験豊富な人 | 組織内の上級リーダー |
目的 | キャリア選択や意思決定に関するアドバイスを提供すること | 影響力を使って、目立つ仕事の機会を与えること |
関係性を主導するのは? | メンティーとメンターの双方。メンターはメンティーのニーズに応じて対応する必要がある | スポンサーが主導。スポンサリー(支援対象者)のために、会議の場やリーダー同士の非公開のやり取りでも積極的に働きかける |
具体的な行動 | メンティーがキャリア目標を達成するための道筋を一緒に考える | スポンサリーの昇進や機会獲得を後押しし、可能性を周囲に訴える |
要するに、メンターは内面の成長や意思決定を支える「伴走者」であり、スポンサーは外部に働きかけて機会を切り拓く「推進者」とも言えます。両者が揃って初めて、女性がリーダーとして力を発揮しやすい環境が整うのです。
職場におけるメンタリングとスポンサーシップの違い
メンターは、特定の課題や継続的な成長に関して、助言や支援を提供してくれる存在です。メンティー(指導を受ける側)の話に耳を傾け、率直で建設的なフィードバックを行います。
私たちの調査によると、メンターを持つ人は以下のような傾向があります:
- 昇進への準備が整っており、実際の昇進率も高い
- 組織に長くとどまる傾向がある
- 仕事やキャリアに対する満足度が高い
- 業績評価で高く評価されやすい
さらに、メンティーは組織内での影響力も大きく、以下のような特徴も見られます:
- 創造性や革新性が高く評価される
- 失敗や逆境に対する回復力(レジリエンス)が強い
- 強固なネットワークを築いている
(この内容の詳細は、「人が育つ組織は強い──メンタリングを文化にする実践のすすめ」の記事でも紹介しています)
ただし、メンターが必ずしもスポンサーであるとは限りません。スポンサーとは、単に助言を与えるだけでなく、その人のキャリアの前進のために実際に行動を起こす、特別なタイプのメンターです。
スポンサーは、支援対象であるスポンサリーの成果やポテンシャルを積極的に評価し、周囲に伝えます。人脈を活用して有益なつながりを提供し、より大きな役割への推薦も行います。また、挑戦的なプロジェクトに取り組むよう後押しし、非公式な場面(密室での意思決定や会議など)でもキャリアの進展を推し進めるのです。
このように他者の成長や機会を後押しできる人物は、ある程度の権限を持つ立場にいる必要があります。つまり、スポンサーとなり得るのは多くの場合、組織内の上級リーダーや意思決定層の人々です。
そして現実として、多くの組織ではその層の多くが今もなお男性で占められているのです。
そのため、スポンサーは男性にとっても重要ですが、女性にとっては不可欠とも言える存在です。しかし現状では、男性の方がスポンサーを持っている割合が高いというデータもあります。
キャリアのどの段階においても、メンタリングは重要ですが、「代弁者」となってくれるスポンサーの存在がなければ、女性、特に有色人種の女性は不利な立場に置かれやすいのです。
なぜ職場におけるスポンサーシップは男女で不均衡なのか?— 女性リーダーが「スポンサー」を得にくい4つの理由
「似た者同士」は惹かれ合う
人は本能的に、自分と似ている相手に親近感を覚える傾向があります。そのため、男性リーダーたちは無意識のうちに、同じ男性の部下や後輩をメンターやスポンサーとして支援しがちです。
一方で女性は、自分より何段階も上の立場にある人(特に自分とは見た目や背景が異なる人)に対して、助言や支援を求めづらいと感じることがあります。こうした関係性のギャップは、他に明確な要因がなかったとしても、男性の方がスポンサーを得やすく、リーダー層の構造が固定化されたままになる要因のひとつです。
無意識のバイアスが影響する
リーダー像や理想の上司像は、歴史的に「男性的な特性」と結びつけられてきました。そのため、女性は男性に比べて「リーダーにふさわしい人材」と見なされにくい傾向があります。
さらに、研究によると、女性は「有能さ」と「好感度」のどちらかしか評価されにくい、という“ダブルバインド(二重拘束)”の問題にも直面しています。
また、男性に比べて、女性には責任ある挑戦的な仕事が与えられる機会が少なく、パフォーマンスに対しても曖昧で個人的、かつあまり有益ではないフィードバックが多い傾向にあるという調査結果もあります。こうしたことが、女性の成長や学びの機会を阻んでいます。
思い込みによる判断
女性自身が十分なスキルや意欲を持っていても、昇進や重要なプロジェクトの候補にすら挙がらないことがあります。これは、CCLの女性向けリーダー育成プログラムでもたびたび指摘される課題です。
上層部のリーダーたちが、女性の意欲やライフスタイルについて勝手な前提や思い込みをもとに判断してしまうのです。たとえば:
- 「彼女は優しすぎるから、この仕事は向いていないだろう…」
- 「小さい子どもがいるから、出張が多いこの仕事は無理かもしれない…」
- 「引っ越しが必要なポジションは、家庭の都合で断るだろう…」
- 「これまでやったことがないから、自信がないはず…」
これらの考えは、たとえ本人の口から語られなくても、女性が本来適任であるはずの役割から外されてしまう原因になります。
「クイーン・ビー・シンドローム」も影を落とす
苦労の末にガラスの天井を破って昇進した女性たちが、さらに上に行こうとしたときにも、依然として性別によるバイアスが存在します。
多くの女性リーダーは、後輩の女性たちを支援したり、昇進を後押ししたりしますが、そうでない人もいます。こうした支援的でない女性は、時に「クイーン・ビー(女王蜂)症候群」と呼ばれ、女性同士の足の引っ張り合いの象徴のように捉えられることもあります。
しかし私たちの調査では、女性リーダーが他の女性の昇進を支援した場合、評価や業績スコアが下がる傾向があることが分かっています。つまり、「他の女性を支援することが、自分自身の評価や立場を危うくする」と感じてしまうのです。
一方で、男性が女性を支援する場合には、そのような不利益はほとんどなく、むしろ多様性を推進する存在として評価されることもあります。
こうした状況を変えていくためには、権限ある立場にいるすべての人が、性別に関係なく才能ある人材のメンターやスポンサーになることが必要です。
日々の小さな行動の中にも、バイアスや力の作用は潜んでいます。だからこそ、リーダーたちは自らの思考を見直し、必要に応じて軌道修正を行い、バイアスを見かけたときにはそれを指摘する姿勢が求められます。
男性は、女性にとって意味のあるスポンサーやメンターになれるのか?— 男性自身も得るものがある
職場におけるジェンダー平等は、「女性の問題」として女性だけが取り組むべき課題ではありません。リーダーシップの立場にある男性こそ、組織における優秀な女性人材の離職を防ぎ、そのキャリアを前進させることで、リーダーの育成パイプラインを強化できる立場にあるのです。
また、メンターやスポンサーとして他者を支援することは、支援される側だけでなく、支援する側にとっても多くのメリットがあります。
CCLの調査によれば、他者のメンタリングやスポンサーを積極的に行っているリーダーは:
- 組織へのコミットメント(忠誠心や貢献意識)が強い
- 他者から「優れたリーダー」として高く評価されやすい
- 仕事・人生の満足度が向上し、ウェルビーイング(心身の充実)をより強く感じている
さらに、職場でメンタリングやスポンサーシップを実践している人は、自分自身のネットワークを広げたり、業務や組織に関する情報に早くアクセスできたりといった利点も得られます。そして何より、自分自身がよりよいリーダーへと成長していくのです。
とはいえ、中には「自分と違う立場にある相手(たとえば女性)をうまく支援できるか不安だ」と感じる男性もいます。また、「女性と近しい関係にあると、周囲にどう思われるかが心配」という声も少なくありません。
こうした不安を和らげるために、組織は、すべてのリーダー(男性を含む)に対して“効果的な味方になる方法”を学ぶ機会を提供することが大切です。
CCLが提供する無料のワークブック「女性を支援するスポンサー&メンターになるための手引き」では、男性リーダーが優秀な女性社員をどのように支援できるかについてのヒントを多数掲載しています。チームと一緒にこの資料を共有し、組織としてアライ(味方)になる文化を育んでいきましょう。
女性リーダーが強固なネットワークを築くために、組織ができること
女性リーダーにとって、メンターもスポンサーも両方が必要です。ただし、その役割やタイミングは異なります。
多くの女性リーダーは、「キャリアを前進させる責任」や「新しい役職で成功すること」を自分ひとりの責務と捉えがちです。女性リーダー育成プログラムで、次のような声を耳にしたことはありませんか?:
- 「ちゃんと仕事をすれば、誰かが見てくれているはず。もう少し努力すれば、自然とチャンスが来る。メンターやスポンサーなんて必要ないと思うんです。」
- 「自分の力で昇進したい。上層部の人に支えてもらうのは、ズルをしているみたいで抵抗があります。」
- 「今はタイミングじゃない。次の機会にチャレンジしようと思います。」
こうした悩みや躊躇を抱える女性は多く、職場で自分を積極的にアピールすることに気まずさや罪悪感を感じることもあります。
しかし、自分を支援してくれるキーパーソンたちに直接アクセスできなかったり、避けられない困難に直面したときに頼れる存在がいなかったりすれば、キャリアの進展は止まってしまう可能性があります。その結果、短期的にはモチベーションの低下、長期的には昇進機会の損失といった形で、大きな影響が生じることになります。
だからこそ、どのキャリア段階にある女性に対しても、「チャンピオン(後押ししてくれる人)」のネットワークを築けるよう支援することが重要です。そうした人々に囲まれることで、女性たちは考え方や行動の幅を広げ、組織内でより大きな影響力を持てるようになります。
組織としてできる具体的な支援策には、以下のようなものがあります:
- 従業員リソースグループ(ERG)への制度的サポートを提供する
- 若手・次世代リーダーを経営層の会議に招く機会をつくる
- 女性向けのリーダー育成プログラムへの継続的な投資を行う
こうした取り組みによって、女性リーダーたちは強いネットワークの土台を築き始めることができます。
また、個人としてネットワークづくりに取り組みたい女性リーダー向けには、CCLの記事「女性のためのネットワーキング5つのヒント」もぜひ参考にしてみてください。
女性リーダーのためのメンタリング&スポンサーシップを前進させるために— 人事・経営層の皆さん、今すぐ始めましょう!
理想を言えば、すべての女性がキャリアの道筋を照らしてくれるメンターと出会い、彼女たちの能力と可能性を見抜いた上級リーダーが、進んでスポンサーになってくれるべきでしょう。
しかし、現実には多くの組織でそれが「自然に起きる」わけではありません。そのため、優秀な女性人材が途中でキャリアから離れてしまう「リーキーパイプライン(途中離脱)」の状態が続いています。
変化を起こすのは簡単ではありません。
女性を支援したいと本気で考える組織であれば、まず取り組むべきは、自社のシステム全体を見直し、「なぜ女性が昇進しないのか」「なぜ離職してしまうのか」といった根本原因を探ることです。
その第一歩として効果的なのが、メンタリングとスポンサーシップを、女性に向けて意識的に促進することです。組織全体に対して「これは優先事項である」というメッセージを明確に伝えましょう。
そして、計画を実行に移せるように、十分なリソースと“実行の場”を提供してください。「女性たちが自分でメンターやスポンサーを探すべきだ」といった個人任せの姿勢ではなく、組織としての責任として取り組むことが重要です。私たちは、才能ある女性たちのために「チャンピオン」のネットワークをつくることができます。
なぜなら、女性がより多くの場でリーダーとして活躍することで、個人が力を発揮できるようになり、組織全体も未来の課題に立ち向かう力を得るからです。
弊社「株式会社インヴィニオ」では、20年以上積み重ねてきた実績と、CCLを含む世界中のアライアンスパートナーから得た最先端のノウハウを用いて、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットしています。
育成だけでなく事業上の成果として表れるように、個人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化できるのが強みです。
組織全体を成長させるために、女性リーダーの育成に取り組みたいとお考えの場合は、ぜひこちらから気軽にお問い合わせください。