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ソフトスキルを開発する:どのレベルのリーダーの成功にも必要となる「ヒューマン・スキル」とは

目次
- 1 ソフトスキルとは何か、そしてなぜ重要なのか
- 2 ソフトスキルはあらゆるレベルのリーダーに必要である
- 3 自らをリードする:一般社員に必要なソフトスキル
- 4 他者をリードする:新人マネージャーおよびフロントライン・マネージャーに必要なソフトスキル
- 5 チームをリードする:ミドルマネージャー(中間管理職)に必要なソフトスキル
- 6 事業部門をリードする:シニアリーダーに必要なソフトスキル
- 7 企業をリードする:経営幹部レベル(C-Suite)のリーダーに必要なソフトスキル
- 8 ソフトスキルを開発するための方法
- 9 ソフトスキル開発のベストプラクティス
- 10 ソフトスキル開発を活用して、社員を強化し、新たな人材を獲得する
「ソフト」という言葉は、脆さをイメージさせる場合がありますが、「スキル」と組み合わせると、脆さとは真逆の意味合いになります。「ソフトスキル」の誕生は50年以上前に米軍が実施したワークフローと学習効率を向上させるための取り組みまでさかのぼります。今日、多くの専門家が「ソフトスキル」に代わって「パワースキル」という言葉を提唱していますが、これは誤用と言えるでしょう。数十年にわたる数多くの研究により、最も有能なリーダーは高度に発達したソフトスキルを備えていることが証明されています。
ソフトスキルとは何か、そしてなぜ重要なのか
「ソフトスキル」とは、共感、思いやり、信頼性など、他者との強いつながりを形成するために必要な特性を表す言葉としてよく使われます。
COVID-19の世界的な蔓延、政治的・経済的な不確実性の広がり、リモートワークやハイブリッドワークの増加といった課題がある中、ソフトスキル開発はこれまで以上に重要です。なぜなら、対人関係の構築と円滑なバーチャルコミュニケーションの両方が、地理的に分散しても高いパフォーマンスを産むチームになるために必要だからです。
CCLでは、ソフトスキルの強化を重視する組織やリーダーとは、グループを育成し、より適応力が高く、インクルーシブで、影響力の高い文化を共創するための手助けをする人または組織を指すと考えます。リーダー自身のソフトスキルを高め、それを他の社員に示し、チームメンバーに成長の機会を与えることで、リーダーはより有能なチームを構築できるだけでなく、社員を引き留め、社員を惹きつけ、社員のモチベーションを高めることができるようになるのです。
ソフトスキルは、管理職にあるすべてのマネージャーに欠かせないものですが、あらゆるレベルのリーダーが、的を絞ったソフトスキル開発をすることで、成果を最大化することができます。組織全体のエンゲージメントとパフォーマンスを向上させるために、部下に求められる重要なスキルについて紹介します。
ソフトスキルはあらゆるレベルのリーダーに必要である
リーダーとして組織図のどの位置にいるか、組織階層のどこにいるかにかかわらず、強力な会話力とコーチングスキルは不可欠です。なぜでしょうか?これらのスキルは、組織が共通のリーダーシップ言語を構築するときの基礎となるからです。これによりコーチング文化が育まれます。これは、組織全体の社員が安心して率直にフィードバックをし、互いの考えをサポートし、伸ばすことができるようになる環境です。
全社員が次の4つのスキルを身につけることで、組織はより個別的または具体的な能力開発に取り組むことができるようになります。
- 傾聴力
- 効果的な質問をする
- チャレンジとサポート
- 責任の明確化
これらのスキルを身につけ、コーチング文化を構築するためのリソースは、すでに組織内に存在します。詳しくは、CCLの記事What It Takes to Coach Your Peopleをご覧ください。
自らをリードする:一般社員に必要なソフトスキル
一般社員のリーダーシップ開発は必要でしょうか?答えはもちろんYesです。直属の部下を持たない場合でも、リーダーシップのスキルは必要です。一般社員、ひいてはその組織は、ソフトスキル開発から大きな恩恵を受けるのです。
一般社員といっても、新しいテクノロジーやビジネスプロセスの導入に最終的な責任を負っており、それが組織のイノベーションの原動力となります。多くの一般社員は、顧客と接する最前線にいるか、部門横断的なプロジェクトに自らの専門知識を提供する立場にいます。このようなチームプレーヤーは、目標や目的を達成できるように、他のチームメンバーと簡潔かつ明確なコミュニケーションをとり、関係性を深めることが重要です。
リーダーレベルに関わらず、常に必要とされるものが、「リーダーシップの基本4スキル」とわれわれが呼ぶ次の4つのスキルです。
- 自己認識力
- コミュニケーション能力
- 影響力
- ラーニング・アジリティ(学習敏捷性)
これらの重要なソフトスキルの育て方については、リーダーシップスキルとは?必須スキル4つを人材開発のプロが紹介で詳しく解説しています。
他者をリードする:新人マネージャーおよびフロントライン・マネージャーに必要なソフトスキル
多くの組織では、フロントライン・マネジャーがリーダー職の約40%を占めますが、彼らは必ずしもリーダーとしての心構えを備えているわけではありません。新人マネジャーは、一般社員から昇進してから間がなく、プロジェクトや社員を効果的にリードすることに苦労しており、自分がいかに影響力のある存在であるか、あるいはなることができるかに気づかないため、的を絞ったソフトスキルの開発が必要となります。
初めてリードする立場になった社員は、以下のソフトスキルを身につけることで、有能なリーダーとなることができます。
- 自己認識力
- ラーニング・アジリティ
- コミュニケーション能力
- 組織内の政治力学の知識
- 他人を動機付ける能力
- 結果に対する影響力
新人リーダーには、フロントライン・リーダーシップのスキルを身につけさせることで、単なる上司ではなく、リーダーを育成することができます。
チームをリードする:ミドルマネージャー(中間管理職)に必要なソフトスキル
ミドルマネージャーは、人生の中で最もストレスの多い時期に役割を任されることが多いものです。仕事、家庭、地域社会からの要求はかつてないほど高く、多くのミドルマネージャーは、あらゆる方面から押し寄せる重責を処理するために必要な、リーダーとしてのレジリエンス(逆境を跳ね返す力)をまだ備えていません。また、中堅レベルのリーダーは、組織内政治をさばく必要があり、上層部や下層部からのプレッシャーを感じることが少なくありません。
以下のソフトスキルを身につけることで、ミドルマネージャーとしてリーダーシップを発揮することができます。
- 体系的に思考し行動する能力
- レジリエンス
- コミュニケーション能力
- 影響力
- ラーニング・アジリティ
- 自己認識力
ミドルマネジャーが成長するために必要なリーダーシップスキルについては詳しくはこちらをご覧ください。
事業部門をリードする:シニアリーダーに必要なソフトスキル
一般社員として成功したフロントマネジャーがリーダーへと昇進したように、シニアリーダーもまた、特定の部署やチームを有能に率いた結果、事業部門全体の責任者に昇進することがよくあります。しかし、幹部レベルの役割を新たに担う立場に昇進すると、そのリーダーは、これまでとは異なる、より大きな要求が待ち受けていることに気づかされます。
より多くの経験を積んだリーダーのソフトスキル開発は、個人の目標設定や自己省察の時間がないため、見過ごされがちです。しかし、シニアリーダーが以下のソフトスキルを磨くことができるように組織がサポートしたら、戦略的思考やプランニングの能力が向上し、業績にプラスの影響を与えることができるようになります。
- 協調性
- 影響力
- 前向きな思考
- 好結果へ導く能力
- エンゲージメントを創出する能力
- 革新的機会を明確にする能力
- グローバルなリーダーシップ
シニアリーダーがこのレベルで成功するために必要なソフトスキルの開発を受けると、垣根を超えて協力し、重要な協力関係を構築し、ビジネスの成功をもたらし、組織全体の目標を達成することがより一層可能となります。
シニアリーダーが直面する一般的な課題と、彼らが活躍するために必要なシニアリーダーシップスキルについて、詳しくはこちらをご覧ください。
企業をリードする:経営幹部レベル(C-Suite)のリーダーに必要なソフトスキル
CCLでは、経営幹部レベル(C-Suite)に到達するための4つの鍵として、経験、個人としての心構え、社外ネットワークの構築、そして人間関係の構築を挙げています。プレッシャーのかかる大きな役割で成功を収めるには、いくつかの重要なソフトスキルが必要ですが、それらは必ずしも履歴書に反映されるものではありません。
経営幹部レベルのリーダーたちは、以下のソフトスキルを用いて大局的な課題に対処する必要があります。
- ビジョンを効果的に表現する能力
- 影響力
- 鼓舞させる能力
- アジリティ
- コミュニケーション能力
- 誠実性
- 自己管理能力
- 新しいアイデアを受容する力
- エグゼクティブ・プレゼンス(幹部としての振る舞いや存在感)
ソフトスキルを開発するための方法
この記事の読者の中には、チームマネージャーや人事・人材育成のリーダーで、社員のスキルアップを考えている方もいることでしょう。あるいは、業界独自の認定資格に加え、ソフトスキルのトレーニングやリーダーシップ開発カリキュラムを入れたいと考える業界団体や高等教育機関の方もいることでしょう。いずれにせよ、ソフトスキル開発は、独自のニーズに合わせて行うことが大切です。
以下のオプションを参考にしてください。
- 対面式リーダーシップ開発:参加者のリーダーレベルに応じたソフトスキル開発に特化したリーダーシッププログラムが多くのところから提供されています。
- オンライン型リーダーシップ開発コース:学習者の立場に即した(ヒューマン・センタード)、ダイナミックかつ、コラボレーションが可能なコースを選択しましょう。オンライン学習の利点は多岐にわたり、コースは通常、司会者付きのオンラインコースから自己学習まで、さまざまな配信形式で提供されます。
- ワークショップ・キット:全ての学習内容が予め含まれているワークショップ・キットを利用すれば、拡張性のあるモジュール式のリーダーシップ開発プランで社員のスキルアップを行い、オンラインまたは対面式の少人数グループ向けの簡潔かつ的を絞ったトレーニングを実施することができます。
- ライセンシングされたリーダーシッププログラムおよびソリューション:必要な場合に応じて、社内のリーダーシップ開発プログラムに、信頼できるプロバイダーからライセンシングされたコンテンツを供与してもらうことで、社内のリーダーシップ開発を補完し、特定のリーダーレベルや特定のニーズに対応した効果的なソフトスキル開発を実現することができます。
ソフトスキル開発のベストプラクティス
どのような手段を採るにせよ、まずは目標とする組織文化を育成するために必要なソフトスキルを定義し、そのスキルに焦点を当てることから始めましょう。
ギャップ領域が明確でない場合、360度評価は、社員が取り組むべきソフトスキルを明確にし、順位付けするのに有効です。この評価法は、個人単位で実施することが可能であり、各ソフトスキル開発が得意とする分野や機会を確実に把握することができます。
ソフトスキル開発と並行して、学習する組織文化を強化するための措置も講じましょう。簡単に身につくスキルもありますが、ソフトスキルは時間をかけることで誰でも身につけることができるものです。特に、公平さ、信頼性、そしてソフトスキル開発を強化するコーチング文化があればなおさらです。
最後に、すべての社員が職場で心理的安全性を実感できるような共感とインクルーシブな環境を育むことの重要性を見逃してはいけません。これはつまり、安心して新しいソフトスキルを実践し、間違いを認め、お互いが配慮し、お互いの弱さを認める環境を指します。これらの成果は、今日の新しいハイブリッドな職場環境で働くリーダーにとって、特に重要な開発項目です。
ソフトスキル開発を活用して、社員を強化し、新たな人材を獲得する
能力開発の機会を公平に提供することは、もはや社員が「あったら嬉しい」と感じる福利厚生ではありません。“War for Talent”が繰り広げられる今日において、社員は、組織が学習と成長のための十分な機会を提供することを期待しています。
ソフトスキル開発によって、組織は2つの面で競争力を維持することができます。現在の社員が、互いに密接かつ有能に働くために必要なツールを身につけることで、社員はますます複雑化する課題を共に乗り越えていくことができるようになります。また、あらゆるレベルのリーダーの育成に投資することで、各社員の成長を重視する姿勢を示し、より多くの人材を惹きつけ、維持することが可能になります。
ソフトスキル開発を含め、優れた能力を発揮するために必要なサポートを提供することで、企業のミッションと未来のために効果的に協力できる、自信と共感を持った社員の育成を続けていきましょう。