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職場の心理的安全性が低いと危険|具体的な高め方をプロが紹介
目次
職場の心理的安全性とは、職場において自らのアイデアや気持ちを誰に対しても安心して発信できる状態のことです。
多様性の受容やエンゲージメントの向上、人材育成、リーダーシップの発揮など、昨今の組織が抱える課題は多岐にわたります。こうしたさまざまな課題のいずれにも関係しているのが「職場の心理的安全性」です。
ただ一方で、言葉が独り歩きして「職場の心理的安全性とは、何があっても優しく接すること」のような誤った解釈をもってしまい、かえって組織の不活性化を引き起こすケースも散見されます。
そこで本記事では、職場の心理的安全性について、定義を示した上で、低いと危険な理由、高めるために理解すべき8ステップと4つのステージなどを紹介します。
本記事の内容は、世界を代表するリーダー育成のプロであるCCL社(Center for Creative Leadership)が、綿密なリサーチおよび支援実績を基に導き出したものですので、ぜひ参考にしてください。
職場の心理的安全性とは
職場の心理的安全性とは、職場において自らのアイデアや気持ちを誰に対しても安心して発信できる状態のことです。「職場の誰もがアイデア・疑問・懸念などを気兼ねなく表明でき、たとえ失敗をしても罰せられたり恥をかかされることはないと思えている状態」とも表せるでしょう。
リーダーが正直さ、素直さ、真実を語ることを評価し、各メンバーが互いの背中を押すことを知っていれば、人々は自由に「大声でブレインストーミング」し、中途半端な考えを述べ、現状に率直に異議を唱え、フィードバックを共有し、意見の相違を一緒に解決することができるのです。
職場に心理的安全性があれば、人々は安心して本来の自分らしさを発揮し、人前で「自分の意見を表明する」ことに抵抗がなくなります。
そして、心理的安全性が確保された職場環境では、従業員は大胆な質問をしたり、懸念を共有したり、助けを求めたり、計算されたリスクをとったりすることができ、より高い成果をあげられる組織となれるのです。
間違った「職場の心理的安全性」に注意
職場の心理的安全性について「誰もが常に優しく親切に接すること」という間違った解釈が広まっています。これでは、「必要な指摘・指導を行えない」「反対意見を言えない」といった本来目指したい方向とは反対の状況が出来上がってしまいかねません。
職場の心理的安全性が低いと危険
職場の心理的安全性が低いと、組織の収益に影響を及ぼすため危険です。職場の心理的安全性は、「あったらいいな」ではなく不可欠な要素です。
職場においてより高いレベルの心理的安全性を確立できれば、全従業員の才能を引き出し、組織が失敗を回避しつつ、より高い成果を得られる環境の実現につながります。
組織には多様な考え方が必要であり、同じような人生経験を持つ集団よりも、異なる人生経験を持つ集団の方が、より創造的な解決策を提示できることが、あらゆる研究によって繰り返し明らかにされています。
しかし、メンバーの中に以下のような状態の人がいたらどうでしょうか。
- 気軽に発言できない
- 自分の意見を伝えるのが恐い
- 懸念を表明しにくいと感じる
- 挑戦的な質問をためらってしまう
- 反対を恐れて斬新なアイデアを提案できない
残念ながら、多くの人が自分の職場に対してこのように感じています。2019年のギャラップ社の世論調査によると、「職場で自分の意見が重要だと強く思えている」のは、10人中わずか3人しかいないとのことです。こうした傾向は世界共通といえるでしょう。
参考:Want to Change Your Culture? Listen to Your Best People (gallup.com)
職場の心理的安全性が低い組織が行き着く末路
職場の心理的安全性が低い組織が行き着く末路は悲惨です。
職場の心理的安全性が低く懸念や反対意見を表明することに抵抗がある場合、組織は失敗を防ぐための機能をもちません。その結果、うまくいっていないマネジメントや先導のままで前進してしまい、成果を得られないどころか人材も離反しはじめます。
さらには、アイデアは試されず、プロセスは最適化されず、せっかくの解決策は吟味されず、組織は全従業員の才能を活用する機会が失われるのです。
職場の心理的安全性を高める重要性
職場の心理的安全性が高まれば、各従業員が「発言する・質問する・暗黙の了解を共有する・敬意を持って意見をぶつける」など、円滑な業務遂行に必要な「対人関係上のリスク」を許容するようになります。その結果、より革新的かつ包括的な組織文化が生まれます。
職場の心理的安全性を高める方法8ステップ
職場の心理的安全性を高める方法8ステップを紹介します。
1.心理的安全性の確立を共通目標にする
職場で心理的安全を作り出すことの重要性と必要性についてチーム内で話し合い、優先的に取り組むことについて合意形成しましょう。
その際、個々人にフォーカスした心理的安全性の追求に留まらず、組織のイノベーション、エンゲージメント、インクルージョンの向上という全社的な目標につなげて考えることが大切です。
必要なときに助けを求め、求められたら自由に手助けをする。こうした望ましい行動をまずはリーダーが実践してみせ、徐々に環境を整えていきましょう。
2.全員が発言することを促進する
職場では、好奇心と共感を示し、率直さと真実を語ることを尊重しましょう。心を開き、思いやりを持ち、誰かが勇気を持って現状に挑戦するようなことを発言したときには、喜んで耳を傾けます。
3.失敗をどのように扱うかの規範を確立する
合理的なリスクをとって挑戦したことを罰してはいけません。間違いは成長の機会であることを認識させることが大切です。
失敗から学ぶことを奨励し、失敗から得た教訓はオープンに共有します。そうすることで、イノベーションを阻害せずに促進することができます。失敗が生じたときこそ、素直になりましょう。
4.斬新なアイデアのためのスペースを作る
サポートという大きな文脈の中で、どのような挑戦も歓迎しましょう。
徹底的に検証されたアイデアだけが欲しいのか、それとも定式化されていないが、創造性が高く既成概念にとらわれないアイデアを受け入れてもいいのか、よく考えてみてください。厳しい質問をするのは良いことですが、常にサポートする姿勢も欠かせません。
5.生産的な対立を受け入れる
誠実な対話と建設的な議論を促進し、対立を生産的に解決するよう努力します。心理的安全性に寄与する要素について考え、段階的に変化するための環境を整えましょう。チーム内で、以下の質問について話し合ってください。
- うまくいっていないプロセスについて、各メンバーはどのように不安を伝えるのでしょうか?
- どのようにすれば、同僚と尊重し合って共有できるのでしょうか?
- 相反する視点に対処するためのルールとは?
6.よく観察して、パターンを探す
各メンバーの心理的安全性の認識パターンにも着目してください。あるメンバーは、他のメンバーに比べて、心理的安全性が著しく高いあるいは低いのか、それともチーム全体として、そのレベルは均一なのかといった視点を持ちましょう。
心理的安全性は、単に「あったらいいな」ではなく、誰にとっても欠かせない要素です。チームの心理的安全性を高める戦略を立てる際には、現在の信念も踏まえて考慮しましょう。
7.対話を促進するための努力を意図的に行う
各メンバーにおけるフィードバックの受け方と与え方のスキルを向上させ、人々が懸念を表明するための機会を設けましょう。
同僚にパワフルかつ自由な質問をし、積極的かつ真剣に耳を傾け、事実だけでなく、彼らの感情や価値観まで理解するように心がけます。
また、建設的なフィードバックの伝え方と、敬意ある対応とはどのようなものかを学ぶ機会を提供することも大切です。なぜなら、より良い会話は、より良い組織文化の形成につながるからです。
フィードバックのスキルを向上させて心理的に安全な職場環境を作ることで、お互いに暗黙の了解のようなものを共有し、より厳密なストレステストを行った上で実施する解決策を提案できるようになります。
8.成功を祝う
うまくいっていることに気づき、それを承認しましょう。個人間の積極的な交流や会話は、信頼と相互尊重の上に成り立つものです。そのため、一人の「ヒーロー」的な考え方ではなく、多くの人の手柄を共有し、専門知識を受け入れ、集団の成功につなげるようにしましょう。
どんな小さなことでも、うまくいっていることを祝い、彼らの努力に感謝しましょう。励ましと感謝の気持ちを表すことで、チームメンバーの自己肯定感が高まります。
リスクを冒したり、助けを求めたり、ミスを認めたりしたときは、その人が不利にならないように努めます。そして、彼らがあなたに対して同じことをしてくれると信じましょう。
心理的安全性の4つのステージ
組織が心理的安全性を高めていく過程で、4つの段階を認識することができます。
心理的に安全な職場は、帰属意識から始まります。マズローの基本的欲求の階層と同じように、従業員が組織をより良くするために十分な貢献ができるようになるには、自分が受け入れられていると感じることが必要なのです。
The 4 Stages of Psychological Safetyの著者であるティモシー・クラーク博士は、従業員が価値ある貢献をしたり、現状に異議を唱えたりするためには、次の4つの段階を経る必要があると述べています。
- ステージ1:Inclusion Safety(インクルージョンの観点からの安全性)
Inclusion Safetyとは、人とつながり、所属したいという人間の基本的な欲求を満たすものです。この段階では、安心して自分らしさを発揮でき、自分の個性や特徴を含め、ありのままの自分を受け入れてもらえます。
- ステージ2 -: Learner safety(学習者の安全性)
Learner Safetyとは、学び、成長する必要性を満たします。この段階では、質問を投げかけたり、フィードバックを与えたり、実験したり、失敗したりすることで、安心して学習プロセスと交換することができます。
- ステージ3: Contributor safety(貢献者の安全性)
Contributor Safetyとは、違いを生み出す必要性を満たします。自分のスキルや能力を活かして有意義な貢献ができる安心感があることを意味します。
- ステージ4: Challenger Safety(挑戦者の安全性)
Challenger Safetyは、既存の仕事のやり方や、組織の在り方の変化を促し、物事をより良くしたいという欲求を満たします。変化や改善のチャンスがあると思えば、安心して発言し、現状に異議を唱えることができるのです。
各メンバーがこれら4つのステージを経て、最終的に対人関係でリスクを負ったり、発言したりすることに抵抗がない状態を実現するために、リーダーは職場でチームの心理的安全感を育み、促進することが必要です。
チームや組織の風土が人間的な信頼と尊敬の念で特徴付けられると、メンバーは自由に協力し、安心してリスクを取ることができ、結果的にイノベーションをより効果的に推進できるようになるのです。
リモートワーク上でも職場の心理的安全性は高められる
コロナ禍以降、ハイブリッドワークやバーチャルワークの台頭により、今日のリーダーにとって職場における心理的安全性はより複雑なものとなっています。社員が全員同じ場所にいるわけではなく、多くの社員がリモートで仕事をしている場合、心理的に安全な「職場」を構築することは難しくなります。
では、とくにリモートによってチームを率いるリーダーは、いかにして心理的安全性を高めれば良いのでしょうか。
カメラ越しのWeb会議では、実際に会うよりも注意深く人を見ることができます。あなたが誰を見ているのかは分からないため、話し手をじっくり観察し、言葉だけでなく、感情や価値観も吸収することができるのです。
これにより、リーダーたちは「聴く」という行為を通して、バーチャルな場における真のコミュニケーションを探求することが可能です。
また、多くの人は、直接会って話すよりも、チャットなどで脆弱な発言・発信を行う方が安心します。そのため、リモートワーク上では、せっかくの正直かつ重要な意見や進言、指摘などが、発信方法の脆弱性によって効果が発揮されないままになりがちです。
リーダーは、まずは勇気を持って自分の正直な考えを伝える人に敬意を表し、そのために必要な脆弱性を許容した上で、チームひいては組織にとって重要な発言をないがしろにしない姿勢が大切です。
職場の心理的安全性の鍵を握るのは上級管理職層
CCLが2年半にわたって約300人のリーダーを対象に行った調査では、心理的安全性が高いチームはパフォーマンスレベルが高く、対人葛藤のレベルが低いことが報告されています。
しかし、すべてのチームメンバーが同じ認識を持っているわけではないことに注意することが重要です。特に、上級管理職(部長クラス以上)のチームでは、心理的安全性のレベルに大きな差があることが分かっています。CCLによる調査の結果、上級管理職の62%がその他従業員との心理的安全性に対する認識に大きな差があることが示されました。
このことは、ビジネスにも大きな影響を与えます。例えば、革新的なアイディアが積極的に語られなければ、創造的な問題解決は妨げられ、組織はコラボレーションやイノベーションの可能性を十分に発揮することができなくなるのです。
職場の心理的安全性を高めて、理想の組織文化を実現するために
職場の心理的安全性のレベルは、組織の風土や文化を表しています。文化とは、簡単に言えば「ここでのやり方」であり、仕事がどのように行われるかについて、誰もが役割を担っているのです。特にリーダーは、チームと組織の両方において、組織文化を形成する上で重要な役割を担っています。
文化を変えることは決して簡単なことではありませんが、各従業員の心理的安全性を構築するために組織を変革することは、間違いなく価値のあることです。
もしそれが高いハードルだと感じたら、変革は小さなステップによって成されることを思い出し、少しずつ変化を積み重ねてください。毎日1%ずつの改善であれば周囲の賛同を得やすいはずです。そして1年後には、あなたの組織は指数関数的に強くなっていくでしょう。
目標は「発言しても拒絶される心配のない、心理的に安全な職場環境を作ること」です。そうなれば、対人関係において「必要なリスク」に怯えることなく、変化に対するチームの適応力も高まります。
そして弊社「株式会社インヴィニオ」は組織能力開発・人財開発の専門企業として、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットしています。事業上の成果として表れるように、人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化させることを重視しています。
職場の心理的安全性を高めて、組織文化レベルや組織としての成果をさらに高めたいとお考えの場合は、ぜひこちらから気軽にお問い合わせください。