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明暗を分ける組織文化と取締役会の役割|事例紹介
目次
自社の将来における明暗は、組織文化によって決定づけられるといっても過言ではありません。その上で、良好な組織文化の形成には、取締役会の役割が重要です。
今回は、業績向上に必要な具体的課題を特定できる診断ツール「デニソン組織文化診断」を実際に用いた企業の事例を基に、「業績と組織文化の相関性」や「取締役会の重要性」について解説します。
なおデニソン組織文化診断は、コカコーラやNASAといった世界的企業をはじめ、8,000社以上もの企業の組織パフォーマンス向上を支援してきた米国企業「デニソンコンサルティング」が開発した世界水準の診断ツールです。
企業の明暗を分ける組織文化と取締役会の役割
取締役会の重要な役割の1つは、企業における戦略的資産として機能することです。より具体的には、取締役会は以下のような様々な役割が求められます。
- 自社の競争優位性を守る
- 人材の豊富さを保つ
- 株主価値を長期的に高く保つ
- 倫理感のある経営を行う
- コンプライアンスを遵守した経営を行う
- 成功する戦略を構築する
しかし、取締役の多くは主要な財務指標や目に見える課題に時間を費やすばかりで、これらの根底にある「組織文化」の重要性を認識していません。
自社の人材におけるポテンシャルの発揮やモチベーション向上、倫理観の醸成などの基礎となる組織文化の形成こそ、取締役会がまず果たすべき役割といえるのです。
過去にエンロン社やワールドコム社の汚職事件が発生した時、取締役は大変な苦労をしました。
それにもかかわらず、組織文化やリーダーシップに対する監視の欠如によって重大な事件が再び発生してしまったのです。ウェルズ・ファーゴ社では、業績目標を達成するために顧客名義で何百万もの隠し口座を開設していたことが発覚し、このクロスセリング戦略に関わった5,300人の従業員が解雇されました。
ただし、このスキャンダルの規模を見れば、問題は5,300人の“悪いリンゴ”ではなく、むしろ彼らを生み出した“悪い果樹園”であったことが明らかです。
またフォルクスワーゲン社は、数百万台の車両に影響を与えた10年前の工程を「数人の社員による重大なミス」が招いた結果だと主張して、大きな信用を失いました。
実際には、世界中の何千人もの従業員の取り組み不足が原因であったことがすぐに明らかになったのです。
以上のような2つの例は、「組織文化の失敗が、事業の失敗にいかにつながりやすいか」を示しています。今こそ、組織文化を取締役会の議題の中心に据えるべきといえるでしょう。
時折「組織文化は定義も測定も難しい」という意見も耳にしますが、とくに取締役会に関わるレベルの幹部は、時間をかけて組織文化の概念を学び、専門家になる責任があるといえます。
以下では、ある企業が組織文化を測定し、どのようにして会社を再建したのかを紹介します。
業績と組織文化の相関性と取締役会の重要性:製造業者の事例
「業績と組織文化の相関性」と「取締役会の重要性」が、5年間にわたって組織文化の調査と分析を行った製造業者の事例から明らかとなりました。
事例で用いた「デニソン組織文化診断」の概要
この過程には「デニソン組織文化診断」が用いられました。デニソンモデルでは、業績に最も大きな影響を与えるという研究結果が示す「強い方向性」「高い適応性」「社員の自律性への深いコミットメント」「一貫性のある強い基盤」という4つの文化的特性を重視しています。
図1:デニソンモデルによる組織文化診断のしくみ
本モデルに関する調査は数多く行われており、その結果は非常に明確です。下記の図2は、文化と業績の関連性を示す一例です。
図2: 組織文化と業績の相関性
上記では、60社の非上場企業を対象にカルチャーのスコアが高い企業と低い企業の業績差を調査しました。本調査の結果、組織文化スコアが高い企業は、EBITDAと売上高の両方において、より強力な成長を遂げていることがわかりました。なおEBITDAとは、企業価値を評価するための指標です。計算方法は厳密には定義されていませんが、最も多く使用されるのは「営業利益+減価償却費」です。
5年間にわたる組織文化の調査結果
2010年、同社が初めて企業文化を評価した際は「可もなく不可もなく」といった結果でした。初年度の結果は取締役会でも共有され、リーダーシップチームはビジネスの改善に役立つ行動計画を立てたはずでした。ただ実際には、以降3年間で業績は急速に悪化していきました。
2013年に改めて評価を行うと、結果は大きく悪化していました。診断結果が示す組織文化の現状が、どのような悪影響を業績にもたらすかは誰が見ても明らかでした。しかし、取締役会は文化を真剣に捉えることができなかったのです。
やがて、取締役会はCEOを交代させることを決定しました。2013年の企業文化診断の結果と向き合った取締役会は、「組織がどこまで衰退したのか」「なぜ業績の問題がこれほど深刻になったのか」をようやく理解できた結果の判断でした。
図3:製造業者の診断結果(2010年・2013年)
新しいCEOの最初の任務は骨の折れる仕事となりました。しかし、組織文化診断によって、取締役会と新しいリーダーは、課題に取り組むためのロードマップを得ることができたのです。
そして、2013年のどん底の状態から、組織文化および業績の改善に取り組み、ついに事態を好転することができたのです。ただ、2010年から2013年までの間に、取締役会がこの結果をもっと詳細に追跡していたならば、さらに早く改善できたことは悔やむべき点です。
図3:製造業者の診断結果(2013年・2014年・2015年)
結論:3つの教訓と取締役会ですべきこと
本事例から、取締役は3つの重要な教訓を得ることができました。
- 組織文化と業績の間には直接的な相関関係があるため、業績向上のためにも組織文化について深く理解することは不可欠である
- 「企業がどのように組織文化を定義しているのか」「組織文化の検証や監視に必要なプロセスやツールは何か」を理解することは、取締役会の重要な役割である
- 優れた組織文化を持つ企業をリードした経験のある経営者を取締役に迎えることが有効である
御社においても取締役会の議題として「組織文化」を必ず取り上げましょう。
まずは、本分野の専門家を取締役会に招き、「成功する企業とそうでない企業の組織文化の違い、組織文化を測定するテクニック、何が潜在的な問題を警告するイエローフラグとなるか」などについて紹介してもらいましょう。
その際、社内の主要な幹部およびリーダーに、自社の現時点における組織文化を定義してもらうことを推奨します。これで明確になることはたくさんあります。
例えば、本事例で紹介した企業の幹部は、どん底であった2013年に「組織文化の現状」を動物に例えるよう求められました。その際、ある幹部が「今の当社は、くまのプーさんに出てくるイーヨーのようだ」と例えたのです。今の組織は「頭を下げ、やる気をなくし、あてもなく歩き回り、壁にぶつかっているようなものだ」と説明しました。実際にその当時は、トップクラスの社員はすでに組織を去ったか、または退職しようとしており、残っているのはイーヨーとその仲間だけだったのです。
本調査を通じて、取締役会は真実を示す戦略家として機能しなければならないことが証明されました。本事例の製造業者は、組織文化の重要性とそれがビジネスに与える影響を決して忘れないでしょう。
自社を明るい未来へ導くための組織文化診断
自社を明るい未来へ導くためには、まず「自社における組織文化の現状把握」が不可欠なことが、今回の事例で明らかとなりました。
そこで推奨したいのが、本事例でも用いられていた「デニソン組織文化診断」です。25年にわたって50か国以上・8,000社以上もの業績および組織パフォーマンスの向上を支援してきたデニソンコンサルティングが開発した診断ツールです。
そして弊社インヴィニオは、デニソンコンサルティングの日本パートナーとして国内企業向けに「デニソン組織文化診断」を提供・実施しています。実績に裏づけられた組織文化診断を用いることで、把握や分析のレベルに留まらせるのではなく「実績向上」にコミットします。
「変化が激しい時代において、安定した発展を成せる盤石な組織文化を築きたい」といった企業様は、以下から気軽にお問い合わせください。もちろん「そもそも当社に組織文化診断が必要なのか」といったご相談も歓迎いたします。