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将来の不確実性に備える ― ハイポテンシャル人材の育成法

目次
急激な変化と予測困難な未来が続く現在、企業にとって真に求められるのは、不確実性の中でも柔軟に判断し、行動できる次世代リーダーの育成です。特に、将来を担う「ハイポテンシャル人材(将来有望なリーダー候補)」に対しては、従来の延長線上にある育成ではもはや不十分です。
本稿では、こうしたハイポテンシャル人材をどのように育て、組織全体としてどのように支援すべきかを考察します。ポイントは以下の通りです:
- センスメイキング(不確実性の高い環境下でも的確な判断ができる力)を育む体験型学習の重要性
- 不確実な未来に備えるための、「思考の器」を広げる垂直的成長とコーチングの活用
- ハイポテンシャル人材の成長を支えるために必要な組織文化、戦略、経営層の関与
個人の成長と同時に、組織としての包括的な育成戦略を再設計することが、未来のリーダーシップの礎となります。今こそ、未来を見据えたリーダー育成に本気で取り組むときです。
センスメイキング(不確実性の高い環境下でも的確な判断ができる力)を高め、未来のリーダーを育てる
ハイポテンシャルリーダーは、組織の未来を担う存在です。しかし、彼らが活躍すべき「未来」は、これまで以上に不確実で、不明瞭で、不透明です。そのような時代において、彼らをどのように育てるべきなのでしょうか。
人事担当者として、現在のビジネス戦略を支える人材を活かしつつ、同時に未来に備えたリーダー育成を行うにはどうすればいいのでしょうか。
その鍵となるのが「コーチング」です。コーチングは、ハイポテンシャル人材の能力開発と定着を実現し、今と未来の成功に導く、組織にとって非常に有効な手段の一つです。
『The Center for Creative Leadership Handbook of Coaching in Organizations』の中で「Developing High-Potential Leaders(ハイポテンシャルリーダーの育成)」を執筆したケビン・オゴーマン氏はこう指摘します。
「多くの場合、ハイポ人材の価値は“今”のビジネス戦略に基づいて評価されている。しかし、それだけでは不十分です」
「ハイポテンシャルリーダーを育てる本質的な価値は、“未来の曖昧さ”に対応できる能力を試し、鍛える場を作ることにあります」
通常、企業はハイポテンシャル人材を選抜・育成する際に、近い将来および中長期的なニーズを予測して、そこに合ったスキルや能力を強化しようとします。しかし、オゴーマン氏はこう警鐘を鳴らします。
「ハイポ人材こそ、予測不能な未来でリーダーシップを発揮する存在なのです。だからこそ、“どんな状況にも適応できる力”を身につけさせる必要があります」
もちろん、ハイポテンシャル人材の育成には「今、目の前にある現実」への対応力も欠かせません。しかし同時に、「未知なる未来」に対応するためのスキルと対応力を伸ばすサポートを行うことが、これからの人材開発において非常に重要なのです。
ハイポテンシャル人材には「迅速かつ集団的なセンスメイキング」が必要
では、ハイポテンシャルなリーダーたちに、どうやって「センスメイキング(不確実性の高い環境下でも的確な判断ができる力)」を身につけさせればよいのでしょうか?
その答えは、目の前の課題に対して「受け身」ではなく「能動的に理解しようとする姿勢」を育むことにあります。
未来の不確実な状況でも成功できるリーダーを育てるには、彼らを「意図的に混乱させるような学びの体験」にさらす必要があるかもしれません。たとえば、非常に困難なミッションを与えることで、今までの考え方では通用しないような体験をさせたり、未知の領域や新しい役割に挑戦させて、他者の思考法に触れながら曖昧な状況を乗り越えさせたりといったことです。
こうした「ヒート・エクスペリエンス(心理的に負荷の高い体験)」を通じて、ハイポテンシャル人材は自分の根本的な前提や思い込みを見直すことになります。
このような体験に対して、「垂直的成長(思考の枠組みそのものを進化させる成長)」とコーチングを組み合わせることで、彼らは経験の中から深い意味や気づきを引き出し、長期的な視点で物事を捉えられるようになります。
多様な視点や困難な状況、学びの機会を通じて、自らの体験を整理・内省する過程で、彼らは「より広く深い思考」を手に入れていきます。つまり、世界を捉える視野が一段と大きく、洗練されていくのです。
その結果として、ハイポテンシャル人材は以下のような力を高めることができます:
- 複雑なパターンを見抜く力
- 対立や両極性(ポラリティ)を理解し活用する力
- 学習能力と柔軟性(ラーニングアジリティ)…(なぜなら、優れたリーダーとは、優れた学習者でもあるからです)
このような成長は、ビジネス上の課題に対して新たな視点からアプローチする力を育み、最終的には組織の未来を支える大きな武器となるのです。
ハイポテンシャル人材が成功するために必要なこと
最後に、人事リーダーが忘れてはならない重要な視点があります。ハイポテンシャル人材の育成は、彼ら「個人」だけの問題ではないということです。
本質的には、組織全体のリーダーシップ文化、支援体制、そしてパフォーマンス戦略が深く関わっているのです。以下のような問いかけを、自社に対して行ってみてください:
- 組織には、短期的・長期的な視点の両方を踏まえた一貫したリーダーシップ戦略が存在しているか?
- リーダーシップに関する知識や能力が、次世代にしっかりと継承されるようなサクセッションプラン(後継者育成計画)は整備されているか?
- 次世代リーダーを支援・育成し、その成長に責任を持つ経営層の関与(スポンサーシップ)や仕組みは確立されているか?
もしこれらが整っていなければ、どれだけ優れたコーチングや育成を行ったとしても、ハイポテンシャル人材の成長には限界があり、組織は変化に対応できないまま取り残されてしまうリスクがあります。
また、せっかく選抜されたハイポテンシャル人材であっても、十分な支援が得られないことでモチベーションを失ったり、最悪の場合は離職してしまう可能性もあります。
だからこそ、ハイポテンシャル人材の定着(リテンション)を高める仕組みをしっかりと整備し、組織のリーダーシップパイプラインを強化することが、これからの不確実な時代において非常に重要なのです。
なお弊社「株式会社インヴィニオ」は、組織能力開発・人財開発の専門企業として20年以上にわたり支援実績を積み重ねてきました。CCLをはじめ世界中のアライアンスパートナーから最先端のノウハウを得ており、知識習得や能力アップのレベルに留まらせるのではなく「成果を生み出すための実力」へと昇華させることにコミットしています。
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