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世界中のリーダーが直面する「20の主要なリーダーシップ課題」 | 48,000人を超えるリーダーから得られたリアルな声からの示唆

目次
リーダーシップの課題は共通している
共通の目標に向かってグループを導く立場にある人は、誰しも道中で何らかの課題に直面します。しかし、今日の組織運営において最も困難なことは何でしょうか?リーダーシップにおける主な課題とは何か、そしてそれらはパンデミック以降に変化したのでしょうか?
CCL(Center for Creative Leadership)の研究チームは、あらゆるレベルのリーダーが直面する最も一般的な課題や問題を把握するために、何十年にもわたってこうした問いを探求してきました。(詳細については、2023年のリサーチブリーフ、2021年の技術報告書、2013年のホワイトペーパーをご覧ください。)
リーダーシップの課題に関する私たちの研究
世界中の7,000以上の組織から報告された共通の課題と、CCLが実施したグローバルな360度評価を通じて収集された個人の匿名データに基づき、CCLの研究チームは、過去数年間にわたり48,000人以上のリーダーたちが最も重要だと認識してきたリーダーシップの課題を調査しました。
AIを活用した言語処理モデルを用いて彼らの回答を精査・分析した結果、世界中のさまざまな業界や分野に共通するリーダーシップの課題が明らかになりました。さらに、これらの課題がパンデミック後にどのように変化したのかについても、データを詳しく分析しました。
あらゆるレベルに共通するリーダーシップの主な課題
ここでは、CCLの調査によって明らかになった、現在のリーダーシップにおける最大の課題、つまりパンデミック以降の重要度に基づいてランク付けされた、組織内の各レベルのリーダーが直面している「トップ5の課題」をご紹介します。
リーダーのレベルごとの課題に対応したデータを活用することで、より効果的な人材育成が可能になるため、このリストは世界中のあらゆる組織における研修・開発活動の中心的な指針となり得ます。
現場マネージャー(フロントライン・マネージャー)の課題
- 人と時間に対するフラストレーション
- 初めての部下マネジメント
- 不十分な業務プロセス
- チームのパフォーマンス
- 自己成長
中間管理職(ミドル・マネージャー)の課題
- 自分自身の能力やスキルの限界
- 複雑で変動するビジネス環境への対応
- 対人スタイルの非効果性
- 部門横断的な影響力の不足
- 人材とプロジェクトの優先順位のジレンマ
上級管理職(シニア・リーダー)の課題
- 信頼性・説得力の不足
- 市場や売上の伸び悩み
- 複数部門にまたがるプロセス改善の難しさ
- 自己認識の欠如
- 新たな役割への移行期における戸惑い
経営層(エグゼクティブ)の課題
- 激変するビジネス環境への対応
- 戦略的責任の遂行
- 対人スタイルの硬直化
- 不確実な時代における組織の備え
- 社内協力の欠如とその克服
現場マネージャー(フロントライン・マネージャー)が直面する主なリーダーシップ課題
地域や職場に関係なく、監督的な立場で他者を管理する人々が最も多く挙げたリーダーシップの課題は、「人と時間に対するフラストレーション」でした。そしてこの問題は、パンデミック以降さらに頻度が増していることがわかっています。以下は、この調査に基づく、現場マネージャーにとって最も一般的な5つの課題です。
人との関わりや時間の使い方に対するフラストレーション
多くのフロントライン・マネージャーが、非効率な業務や人間関係に起因するストレスを「最も大きな悩み」として挙げています。
具体的には、以下のような状況です:
- 部下に対して適切な指示やガイダンスを出すのが難しい
- 変化に抵抗するメンバーへの対応に困る
- 問題行動をとる社員との関係構築に苦労する
- 多様な価値観や性格を持つ人々と、柔軟なコミュニケーションを取る必要がある
こうした「人と時間」にまつわる課題は、パンデミック後にさらに頻度が高まっており、多くのマネージャーが精神的にも圧迫されている状況です。
はじめて部下を持つことへの戸惑い
新任マネージャーに特有の課題として、以下のような「立場の転換」に関する悩みが顕著です:
- かつての同僚を部下として管理するプレッシャー
- 自分より年上のメンバーを指導する難しさ
- 「新しい上司」としてどう信頼を築けばよいか分からない
多くのマネージャーが、「人を率いる」こと自体が初めてであり、自己の存在価値やリーダーシップの在り方に悩んでいます。
業務プロセスの未整備や非効率さ
業務の土台となるプロセスや仕組みが十分に整備されていないことも、大きな課題として挙げられています。
- 業務フローが非効率
- 誰が何をすべきかが不明確
- 現場でトラブルが頻発する
こうした構造的な問題が、マネージャー自身のパフォーマンスやチームの生産性に大きく影響しています。
チームとしての成果が出せない
チームをまとめ、成果を出すという本質的なリーダーシップ課題も深刻です。以下のような点が特に難しいとされています:
- チームメンバーの能力を引き出す
- 効果的なフィードバックを行う
- 明確な方向性を示す
- コーチングや面談での対応
- 部下からの反発や受け入れの拒否への対処
チームづくりとパフォーマンス管理は、現場マネージャーにとって日々頭を悩ませるテーマです。
自身の成長に対する不安や課題意識
リーダーとしての「ありたい姿」に近づくために、自己成長も大きなテーマとなっています。具体的には:
- 相手の立場を理解するための「傾聴スキル」の強化
- 柔軟性を高め、反射的な反応を抑えること
- 感情的にならず、冷静な判断を心がける
こうした「内面の成長」は、単なるスキル習得以上に難しく、多くのマネージャーが時間をかけて取り組んでいる部分です。
中間管理職におけるトップ5のリーダーシップ課題
中間管理職は、組織の中で「上からの戦略」と「下からの現場」をつなぐ、非常に重要なポジションにいます。そのため、リーダーシップにまつわる課題も多面的です。以下は、私たちの調査で明らかになった、ミドル・マネージャーが最もよく挙げる5つの課題です。
自身の限界と不安
この階層のリーダーが最もよく訴える課題は、「自分の限界に対する不安」や「自信のなさ」です。
- 「自分にはこの役職を担う力があるのか」と悩む
- 同僚や上司からの評価・信頼を得られていないと感じる
- 自分の判断が正しいのか迷う
こうした「インポスター症候群(自分は偽物だと感じる心理)」を克服するためには、自信を持ち、時に周囲に助けを求めながらも、自らの価値を信じて行動する勇気が求められます。
特にパンデミック以降、リモートワークやハイブリッド勤務といった新しい働き方により、「自分の存在感をどう示すか」が一層難しくなっています。
不安定なビジネス環境下でのマネジメント
業績へのプレッシャーが高まる中で、中間管理職は「限られた資源で成果を出す」という極めて困難な任務を任されています。
- 不安定な市場や業界動向に翻弄される
- リソース不足の中で成果を求められる
- 社員のモチベーション維持が難しい
ビジネス環境の混乱が続く中で、戦略的思考と日々のオペレーションの両方を求められるため、心理的な負担は小さくありません。
対人関係スタイルの非効果性
ミドル・マネージャーにとって、コミュニケーションスタイルは成功と失敗を分けるカギです。
- 発言が強すぎて対話を妨げる
- 逆に、自信が持てず主張できない
- チーム内でオープンな議論ができない
リーダーとして効果的に人と関わるには、誠実で率直な対話を重ねることが不可欠です。対人スキルの向上は、職場の信頼関係づくりに直結します。
影響力の欠如
正式な「権限」がなくても、他部署や他チームに働きかけて成果を出す――これがミドル・マネージャーに求められる能力です。
- 自部門の外に影響を及ぼせない
- 他部門とのネットワークや信頼関係が築けていない
- パートナーシップや協力関係を橋渡しする力が弱い
自分のグループを超えて「周囲を動かす」ためには、信頼性、説得力、そして戦略的な人間関係構築力が重要になります。
人とプロジェクトの優先順位の板挟み
中間管理職は「人間関係」と「成果(タスク)」の両方を同時にマネジメントしなければなりません。
- プロジェクトの納期と、メンバーの成長や満足度の両立に悩む
- 限られた時間や人員の中で、誰をどう活かすか迷う
- 性格や能力が異なるメンバーへのアプローチを変える必要がある
この「人間重視」と「成果重視」のバランスは非常にデリケートであり、ミドル・マネージャーの手腕が試されるところです。
上級管理職(シニアリーダー)におけるトップ5のリーダーシップ課題
シニアリーダーは、組織の中でビジネスユニット、部門、地域などの大きな単位を統括する責任を担っています。そのため、戦略的思考や組織全体への影響力が強く求められます。今回の調査では、パンデミックを境に課題の傾向がやや変化していることがわかりました。
パンデミック以前は「自己認識の欠如」が最も多く挙げられていた課題でしたが、近年ではその比率が下がり、代わって「信頼性の構築」がより重要なテーマとして浮上しています。
信頼性のギャップ
現在、シニアリーダーが最も大きな課題として挙げるのが、「信頼を得ること」、つまり組織全体からの信頼性をどう築くかという点です。
- ステークホルダーからの信頼を獲得する
- 組織内での「見える存在」になる
- リーダーとしてのプレゼンス(存在感)を高める
上級管理職として求められるのは、単なる成果ではなく、「この人なら任せられる」という周囲からの確固たる信頼です。そのためには、自らのリーダー像を磨き、透明性と一貫性ある行動が不可欠です。
市場・売上の伸び悩み
市場の変化に合わせて、組織をどう戦略的に変革させていくかは、シニアリーダーにとって避けて通れない課題です。
- 既存商品以外の領域への拡大
- 顧客中心の視点へのシフト
- セールス戦略と組織全体の整合性の見直し
- 新市場の開拓やリーチの拡大
つまり、これまでのやり方に固執せず、「成長の方向性を再設計する」ことが強く求められています。
部門横断的なプロセス改善
複数の部門・部署を巻き込んで、より良い仕組みや業務プロセスを導入・改善することも、大きな挑戦です。
- 組織内の「壁」を越えて影響力を発揮する
- 全社的な視点(システミックビュー)で物事を見る
- 変化に対する社内の抵抗を乗り越える
- 組織を動かすための“境界を超えたリーダーシップ”を発揮する
プロセス改善は単なる業務効率化にとどまらず、組織文化やマインドセットの変革を伴う取り組みであり、シニアリーダーの戦略性と粘り強さが試されます。
自己認識の限界
自分が周囲からどのように見られているのか、どんな影響を与えているのかを正しく理解するのは、意外にも多くのリーダーにとって難しい課題です。
- 難しいメッセージを伝える際の「伝え方」
- 自信と親しみやすさのバランス
- フィードバックを受け入れる姿勢
シニア層になるほど、周囲からのフィードバックが減り、自分の振る舞いや影響力を客観視しづらくなる傾向があります。だからこそ、「自分を知る力」がますます重要になるのです。
新たな役割への移行
昇進、異動、または将来的な役員候補としての準備など、新しい役割への適応も大きな課題のひとつです。
- 役割や責任の変化にどう適応するか
- これまでの同僚を部下として指導する難しさ
- 新しい組織文化への適応や、新たなチームのマネジメント
特に、C-suite(経営幹部層)への準備段階にあるリーダーは、「どう自分を進化させるか」という視点が不可欠です。
エグゼクティブ(経営層)が直面する5つのリーダーシップ課題
経営層、いわゆるC-suite(CEO、CFO、COOなど)のリーダーたちは、企業全体の未来を担う立場として、他の階層とは一線を画す課題と向き合っています。CCLの調査では、次の5つが、彼らにとって最も重要なリーダーシップ課題として浮かび上がりました。
激変するビジネス環境への対応
パンデミックを機に最も顕著に増加したのが、この課題です。規制の変化、市場や経済の不確実性、競争の激化、成長戦略の転換など、経営者はあらゆる要素に即応しなければなりません。
- 組織構造や事業モデルの再設計
- 変革を支える人材の確保と育成
- 絶え間ない変化に対応する組織カルチャーの形成
エグゼクティブには、「予測不能な世界で決断を下す能力」が強く求められています。
戦略的責任の遂行
経営層にとっての中核的課題のひとつが、組織全体の方向性を定め、実行に移すことです。
- 各部門の施策や優先順位を戦略に沿って統一する
- 戦略遂行を支えるチームを育成・編成する
- ビジネス戦略とリーダーシップ戦略をつなげる視点を持つ
全社的な整合性をとりつつ、戦略を「動かす」ことが、エグゼクティブのリーダーシップの真価です。
対人スタイルの硬直化
経営層に共通する課題として、自身の関わり方を柔軟に変える難しさが挙げられます。
- ビジョンの伝え方
- 他者を動かす際の影響力の使い方
- 状況や相手に応じて接し方を変える柔軟性
エグゼクティブは、「伝える力」「引きつける力」「任せる力」など、対人スキルの総合力が問われる立場です。
不確実な時代における組織の備え
未来の変化に対して、組織をどれだけ柔軟に準備できるか――これもエグゼクティブの大きな課題です。
- 組織のミッションや方向性の再定義
- 限られた資源の中での改革推進
- テクノロジー変革や新しい働き方への適応
外部環境だけでなく、内部構造をも変革する視点が求められます。
社内協力の欠如とその克服
とりわけ新任の経営層が多く直面するのが、他の幹部や元同僚との協力関係の構築です。
- 経験や価値観の異なる幹部との連携
- 自分の影響力を協力へとつなげる工夫
- 部門横断での信頼関係づくり
経営層であっても、「周囲を巻き込む力」は常に磨き続ける必要があります。
リーダーシップ課題への3つの対応アプローチ|最も一般的なリーダーシップ課題にどう向き合うか
ここまでで、リーダーが直面する代表的な課題について理解いただけたかと思います。では、これらの課題にどう対応すればよいのでしょうか?
私たちの調査から浮かび上がった大きなテーマに注目することが、その第一歩となります。
組織のあらゆるレベルに共通して見られたリーダーシップ課題は、以下の3つの大きなテーマに分類されます:
- 個人の成長に関する課題
- 人と業務のマネジメントに関する課題
- 組織全体やシステム全体を横断してマネジメントする課題
以下に、それぞれのテーマに対する推奨される対応方法をご紹介します。これらは、すべての役職・キャリア段階において必要とされる、リーダーシップの基礎スキルを育成するためのヒントでもあります。
個人の成長に関する課題:自分の価値を最大化する
このテーマでは、「自分にはリーダーとしての資質があるのか?」という不安や、自信のなさ、他者からどう見られているかへの意識など、内面的な課題が中心となります。
こうした課題を乗り越えるには、自分にしかできない「独自の価値」に焦点を当てることが重要です。自分の強みを理解し、それ以外の業務はできる限り委任することで、リーダーとしての価値を最大限に発揮できます。
また、自分の性格や行動、習慣を見つめ直し、何が課題の引き金になっているのかを理解することで、自己認識を高め、必要なスキルを強化し、個人として成長することができます。
多くのリーダーが直面する内面的な課題には、以下のようなものがあります:
- 自信の欠如
- 失敗への恐れ
- 自己アピールと本来の自分とのギャップ
- 短気や忍耐力の不足
- 新しいアイデアへの抵抗感
- 職場での対立の対処が苦手
これらを乗り越えることは、リーダーとしての「個人ブランド」を築くことにもつながります。
人・業務のマネジメント課題への対応:より多くの業務を委ねる
このテーマでは、部下のマネジメントや複数の業務の優先順位づけ、チーム内の協力体制の構築などが課題となります。
効果的に業務を委任することで、自分の生産性が上がるだけでなく、チームメンバーの主体性や信頼感も高まります。ただし、単に仕事を「任せる」だけではなく、以下の4つのステップを繰り返すことが重要です:
- 自分の好みを理解する:どの業務を自分で行い、どれを他者に任せるかを判断し、どの程度フィードバックを求めるかを明確にします。
- 部下を理解する:適切な知識やスキルを持つ人に業務を任せるためには、部下の能力や志向を把握する必要があります。委任は、部下の成長を促す機会でもあります。
- 業務の目的を明確にする:業務の「意味」を伝えることで、チームや個人の目標と結びつけ、目的意識を持ったリーダーシップを実現できます。
- 評価と報酬:業務の達成度を確認し、適切に評価・報酬を与えることで、信頼関係とモチベーションを高めます。
組織全体・システム横断の課題への対応:境界を越えて連携し、高い成果を生むチームを構築する
このテーマでは、変化の激しいビジネス環境への対応、業務プロセスの改善、部門横断的な影響力の発揮などが課題となります。
効果的なチームを構築するためには、以下の4つの要素からなる「チーム効果性フレームワーク」を活用することが有効です:
- Core(核):チームの存在意義や目的を明確にし、全員がその価値を理解する。チーム憲章(チャーター)を作成するのも有効です。
- Collective Mindset(集団思考):チームメンバー全員が、自分の役割や責任、チーム内のルールを理解し、協働の姿勢を持つこと。
- Cohesive Relationships(結束力ある関係性):心理的安全性のある職場環境をつくり、互いに尊重し合い、効果的にコミュニケーションを取れる関係を築くこと。
- Connection(つながり):多異なる背景や経験を持つ人々と協働することで、組織全体に影響を与えるチームとなり、イノベーションや連携が促進されます。
最後に:人材開発・HR担当者へのメッセージ|リーダーの課題に対応した育成施策を設計するために
これらのリーダーシップ課題は、どれも実際の現場で起きている「リアルな声」に基づいています。
だからこそ、人材開発やL&D(学習と成長)プログラムを設計する際には、こうした課題に正面から向き合う設計が重要です。リーダーたちが今、どこでつまずいているのかを正確に捉え、それに沿った支援を提供することで、組織の未来を支えるリーダーシップ力を確実に育てることができます。
弊社「株式会社インヴィニオ」は、20年以上積み重ねてきた実績と、CCLを含む世界中のアライアンスパートナーから得た最先端のノウハウを用いて、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」や「業績」へと昇華させることにコミットしています。
「リーダーの階層に合わせたリーダーシップの課題を解決し、組織として成果につながるリーダーシップを実現したい」と思われる方は、まずはこちらから気軽にお問い合わせください。