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企業がDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の宣言・声明を行う際の重要点をプロが解説
目次
DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)についての宣言や声明を発表する企業が増えています。
そこで本記事では、世界を代表するリーダー育成のプロフェッショナルであるCCL(Center for Creative Leadership)が示したリサーチ結果を基に、企業がDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の宣言・声明を行う際の重要点などを紹介します。
DE&Iとは
DE&I(Diversity, Equity & Inclusion:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは、多様性・公平性・包括性のことです。
より具体的には、個々の違いを認め合うダイバーシティ、資源や機会を隔たりなく利用できるエクイティ、そして認め合った違いを包括して組織が一丸となるインクルージョン。これらが組織内で実現されてこそ、全従業員が実力を発揮し、組織としての成果を最大化できるという概念です。
なお、3要素それぞれの定義は、以下の通りです。
ダイバーシティ(Diversity):特徴、価値観、信念、経験、背景、行動などの違いを認め、賞賛すること
エクイティ(Equity):すべての個人やグループがその可能性を最大限に発揮するために必要な資源や機会を、状況に応じて公平に利用できること
インクルージョン(Inclusion):ダイバーシティで認めたそれぞれの違いを個性や強みとして発揮し、組織が一丸となって活動すること
DE&Iが世界中で重視される背景
企業としてのDE&Iに関する宣言・声明はますます注目されつつあり、具体的な行動を貫くための組織の説明責任が必要になっています。これには、以下のような背景があります。
従業員による
統計によると、DE&Iを実践できている多様かつ包括的な企業は、より革新的で、収益性が高く、人材にとって魅力的であることが明らかです。従業員はこのような価値観を受け入れる企業で働くことが当然であり、またそれを期待しているのです。
Axiosの調査によると、およそ80%の従業員が、人種差別や社会正義といった事柄について、会社が行動することを期待しています。また、2022年のエデルマン・トラスト・バロメーターによると、回答者の60%がCEOに対して、自分たちが関心を寄せる社会的・政治的な問題について公の場で発言することを期待していることがわかります。
従業員の活動がますます盛んになり、従業員がパーパスを持ったリーダーシップを求める時代になっています。
新たな世代の受け入れ
DE&Iは新たな世代を受け入れる、もしくは惹きつけるためには欠かせない要素であることが挙げられます。
2025年には、世界の労働人口の75%がミレニアル世代(2000年代に成人・社会人となる世代)で構成されます。これは、今後数年間でミレニアル世代が続々とリーダーシップの役割に就いていくことを意味します。各組織における価値観は、間違いなく変化していくでしょう。
こうした変化によって、世界中の企業におけるDE&Iに対する宣言・声明、そして取り組みに注目が集まっているのです。
アメリカで起きた痛ましい事件
2020年以前からダイバーシティ&インクルージョンに関する宣言を策定していた組織もありました。ただ、米国で起きたジョージ・フロイド殺害事件を市民が集団で目撃したことで、世界中の企業が人種差別を糾弾し、より公平な文化の構築に向けて前進することを誓うステートメントを発表することに拍車がかかったことも忘れてはなりません。
DE&Iステートメントとは
DE&Iステートメントとは、「多様性、公平性、包括性」に関する企業の価値観、期待、目標を明確かつ簡潔に表現したものです。
組織の目的とその存在理由を説明するミッション・ステートメントという考え方があります。それと同様に、自らの組織が「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」に対して、いかに取り組むかを示したものを「DE&I・ステートメント(宣言・声明)」と表現したものと理解するとより分かりやすいでしょう。
DE&Iステートメントは、社会正義の問題に対する組織の見解と、より平等で多様な、包括的な文化を創造するための行動ステップを概説するものです。組織の優先事項を従業員や一般市民に伝えるための強力な手段でもあります。
ただし、こうしたステートメントを作成して宣言する目的は、組織文化の変革を促すことであり、自社ブランドを位置づけるものではありません。少なくともDE&Iステートメントは、単なるマーケティング戦術として使用されるべきではないのです。
企業としての信頼を築きつつ真の変化を生み出すには、自社の「多様性、公平性、包括性」に関する声明にある言葉が、表面的でなく具体的な言動に表れている必要があるのです。
企業がDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に取り組む際の注意点
CCLは、効果的なDE&Iコミュニケーションについて理解を深め、DE&Iステートメントの内容、リーダーの動機、組織文化の変革提案との関係を明らかにしたいと考えました。そこで、フォーチュン100社とCEOアクション・ネットワーク社の体系的人種差別に対応する企業声明を分析するために調査を実施しました。
そして200社以上の企業を分析した結果、以下3つの一貫したテーマが浮かび上がりました。
- 抑圧は、いつでも、どこにでもある
ジョージ・フロイド事件(アフリカ系アメリカ人の黒人男性が殺害された事件)の発生を受けて、多くの指導者が、抑圧と他の集団による特定の集団の組織的な不当扱いを認める声明を発表しました。声明は、抑圧が組織や組織のネットワークの中に存在することを広く認識しています。
- リーダーとは、人を巻き込む存在である
リーダーは、心を開き、共感し、理解を促進するための共通点を見出すことに関心を持つ人物として位置づけられています。有能なリーダーは、組織的な抑圧、日常的な差別、不作為、沈黙をまず認めた上で対処します。その結果、各従業員が大切にされ、権限や力を与えられたと感じて、DE&Iは表面的な領域を超えたものになることを理解しています。
- 宣言内容と測定基準は一致させる必要がある
DE&Iステートメントの内容は、組織内で認識されている問題に沿ったものであり、組織の行動(各従業員の言動)に対して望ましい結果を示すものです。宣言内容を達成できているかを短期的・中期的に評価するための基準も必要です。
また、企業がDE&Iに関する取り組みを行う動機としては、表面的なコンプライアンスから深い変革に至るまで、3つの動機があることも明らかになりました。
それは、「イメージアップを目的としたDE&Iステートメント」「会話のきっかけ」「コミットメントの促進」です。
CCLが分析したデータ群では、表面的な動機が支配的でした。また、96%の企業声明には、長期的な組織文化の変革や、公言した価値観やコミットメントを支持する具体的な行動に対して組織の責任を追及するための要素が欠けていることがわかりました。
皆さんの組織は、公平性、多様性、包括性に関する企業声明から何を学ぶことができるでしょうか。
DE&Iを推進する際には、その動機とこれまでの声明においてどの位置を占めているかを考慮することが重要です。DE&Iステートメントは、真摯な対話を通じて、具体的かつ持続可能な行動をとることを約束するものであるべきです。
もし、皆さんの組織のDE&Iステートメントが、変革のための手段ではなく、広報戦術に過ぎないのであれば、その動機を再検討し、再考することが不可欠です。
その際、CCLが開発した4つのステップからなるREAL™フレームワークは、持続可能な変化を起こすためのガイドとして役立ちます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
DEI(ダイバーシティ・公平性・インクルージョン)を実現する方法 – 株式会社インヴィニオ (invenio.jp)
企業がDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に取り組む際の重要点
企業がDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に取り組む際の重要点を3つ紹介します。
1.DE&Iはみんなの問題であることを忘れない
「一緒に」「力強く」「私たち」「私たち全員」などの言葉を含む包括的な言葉を使い、コミュニティを作り、誰もが互い、自分自身、そして組織を大切にするようにという招きを理解し行動できるようにしましょう。これは、DE&Iを一次的なパフォーマンスではなく、より持続可能なものにするための最初のステップです。
2.リスニングファーストでリードする
パフォーマンスになってしまうことを避け、より誠実な公平性、多様性、包括性の宣言を行うには、まず「聞く」アプローチを採用することです。
DE&Iの取り組みを公表する前に、リーダーは、公平性、多様性、包括性が彼らの仕事や私生活にどのような影響を与えるのか、社内外のステークホルダーの声に耳を傾ける必要があります。
耳を傾けることで、リーダーは、過去と現在の問題、進捗、状況、要件、リソースの能力と限界に関する重要な情報を収集できます。これらの洞察は、組織の公平性、多様性、包括性に関する声明文に反映可能です。
3.会話に参加し、コミットする
メッセージと指標を一致させることも欠かせません。組織のDE&I活動を具体的に支援するための人的・金銭的リソースを割り当てるために、データに基づいた判断と決定を行いましょう。
CCLの調査では、「反人種主義」「旅」「パートナー」「提供」「疎外された人々」などの言葉やフレーズが、DE&Iステートメントに含まれていることがわかりました。
こうした文言を用いて、組織内の運営、外部の慈善活動、公共的・公平性の観点から、皆さんの組織が約束する行動について具体的に考えてみてください。そして、これらのコミットメントを短期・中期・長期の測定可能な改善策に具体的に落とし込んでください。
企業がDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を実行するには
企業がDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を実行するにはDE&Iステートメントを表明した後、次のような方法で裏付けとなる行動を起こす必要があります。
組織内の認識を高める
DE&Iステートメントで示したコミットメントを実行するために、リソースを利用するか、ソリューションプロバイダーと協力して、組織の変革を始めるための2〜3の主要目標を特定します。
例えば、インクルージョン(包括性)の指標を分析し、リスニングセッションを開始し、EDIの取り組みについて組織全体の認識を高めることをお勧めします。
DE&Iステートメントに対して、社内で生じる認識のズレなども認めつつ、組織として目指すべき方向を説明しなければなりません。
“上から目線 “を卒業する
行動はどの席からでも起こせますが、有意義で 持続可能な変化を触媒する位置づけの力を持つのは、リーダーです。そのためには、まず組織の現状を把握する必要があります。
組織文化の診断ツールを導入するのと同時に、リーダーは、従業員のレビューを閲覧できるサイト(転職関連サイトなど)などから採用から定着、昇進、退職に至るまで、各従業員が遭遇している特定の問題について理解することが求められます。
診断ツールやレビューは、従業員が公式・非公式なネットワークの中でどのように働いているか、組織文化がどれほど多様で包括的か、雇用や業績に関連する体系的なメリットとデメリットについて重要な洞察を得ることができます。
リーダーは、代表的な指標の収集と共有、給与の公平性の達成、仕事の適切な分配、そしてDE&Iに関して生じている不安や懸念を、従業員目線で理解することが重要です。
耳を傾け、コミュニケーションを取り続ける
DE&Iの実践は変革の旅であることを認識し、時間をかけて取り組むことが大切です。少なくとも声明を出すだけで終わりではありません。組織の価値観を共有し、実践を開始したら、フィードバック、洞察、透明性のための機会を定期的に設けましょう。
例えば、リーダーは、専門的能力の開発、質の高い雇用、ヘルスケアにおける公平性を促進する方法について耳を傾けることができます。このような生の情報は、自社におけるDE&Iに関する新しい知識を生み出し、偏見を識別し緩和する能力を向上させ、組織のリーダーとステークホルダーが互いにベストを尽すための環境を促進できるでしょう。
重要度が増すDE&Iの取り組みを成功させるために
重要度が増すDE&Iの取り組みを成功させるためには、本記事で紹介した注意点や重要点を踏まえた継続的な取り組みが必要です。DE&Iステートメントを発表することは良い第一歩ですが、将来に向けて旅を続け、前進を続けるために具体的な行動を取ることがより重要なのです。
また、「企業としてDE&Iの宣言・声明が必要となる理由・構築する際のアドバイスをまとめた資料」もこちらからあわせてご覧ください。なおCCLは、DE&Iを「EDI」と呼んでいます。これはエクイティ(Equity:公平性)の文化を土台として投資した上で、多様性と包括性を追求することの重要性を強調しているためです。
そして弊社「株式会社インヴィニオ」は、組織能力開発・人財開発の専門企業として20年以上にわたり支援実績を積み重ねてきました。CCLをはじめ世界中のアライアンスパートナーから最先端のノウハウを得ており、表面的な能力アップに留まらせるのではなく「成果を生み出すための実力」へと昇華させることにコミットしています。
「組織の実力強化につながるDE&Iの取り組みを実施したい」「DE&Iステートメントを広報戦略に留めたくない」という場合は、こちらから気軽にお問い合わせください。