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「なぜ」を超えて:グローバルリーダーのための“4つの知識領域”

目次
今日のグローバルリーダーは、破壊的な変化を脅威ではなく機会として捉え、これまでの前提を疑い、謙虚さ、自信、そして好奇心をもって受け入れる必要があります。そのため、これからのリーダーシップの成功は、リーダーがすでに知っていることよりも、何を知ればよいのかを見極め、そして矛盾・パラドックスに対してどれだけオープンで心地よくいられるかに、より大きく依存することになるでしょう。
混乱が激化し、地政学的リスクや複雑なグローバル課題が深刻化する時代において、リーダーシップの問題は「重要」なだけでなく「喫緊」の課題となっています。既存のシステムが揺らぎ、前提が覆され、変化のスピードが対応を上回る状況で、いかに効果的に組織を導くことができるのでしょうか。
CCL(Center for Creative Leadership)は、国際リーダーシップ協会(ILA)との継続的なパートナーシップを通じて、この問いに深く取り組んできました。世界中の経営幹部、政府高官、学識者を集め、議論を重ねる中で明らかになったのは、従来のリーダーシップの枠組みが大きく変わってきているという事実です。連鎖的に発生する変化の中では、従来型のモデルはもはや十分ではありません。いま求められているのは、より適応的で、協働的で、そして目的志向の強いリーダーシップです。
このグローバルな対話の核心にあるのは、新たな命題です。それは、固定的な能力を超え、リーダーが破壊的変化を単に生き延びるだけでなく、その中で適応し、変革を遂げるためのマインドセットと方法論を育むことです。
シンガポールで開催した「Future of Global Leadership Summit」での議論でも明らかになったのは、最も効果的なリーダーは、破壊を機会と捉え、既存の前提を問い直し、謙虚さ・自信・好奇心をもって複雑さに向き合う人材であるということです。
リーダーシップの未来は、すべての答えを知ることではありません。より良い問いを立て、共通理解を育み、他者が貢献できる場を創り出すことにあります。
ここでは、複雑性と多重危機の時代において、リーダーがレジリエンスを高め、先見性を養い、意味ある変化を生み出すために不可欠な「4つの知識領域」を探ります。
コントロール(管理)ではなく、アジリティ(俊敏さ)で舵を取る
今日のリーダーは、かつてないレベルの複雑性に直面しています。「なぜこれほど多くの混乱が起きているのか?」「なぜ世界の動きはこれほど予測不能なのか?」「なぜビジネス環境はこれほど急速に変化しているのか?」こうした問いが、リーダーたちの頭をよぎります。その結果、多くのリーダーは分析麻痺や様子見モードに陥りがちです。あるいは、責任転嫁に走り、自分やチームを未知のリスクから守ろうと後退するケースもあります。
しかし、多重危機(ポリクライシス)の時代において、こうした反応は不十分です。
今日の破壊的変化の中で求められるリーダーシップは、単なるコントロールではなく、不安定な環境を積極的に航行する力なのです。
「知っている量」ではなく、「知り方」を変える時代
予測不能なシステムを航行するためには、レジリエンスに加え、意味づけ(Sensemaking)、先見性(Foresight)、そして集団的行動(Collective Action)の新たな能力が求められます。
リーダーシップの未来を決定づけるのは、「どれだけ知っているか」ではありません。「どのように異なる知り方に投資できるか」なのです。
知識への投資:4つのリーダーシップ領域を定義する
不確実性の中で、より強く、リスクを軽減し、適応力を高めるために、リーダーは何をすべきでしょうか。
その出発点は、知識への投資の仕方と投資の対象を変えるすることです。複雑な環境で生き残り、成長するために必要なアジリティを養うには、次の4つの重要な領域に焦点を当てることが有効です。
課題を正しく知る
すべての危機を予測することはできません。しかし、直面している課題を明確に把握することは不可欠です。重要な課題とそうでない課題を見極められるリーダーは、より良い意思決定を行い、資源を効果的に配分できます。
グローバルサミットで、Zuellig PharmaのCEOであるジョン・グラハム氏はこう語りました。
「パンデミック時にCOVID-19ワクチンの流通に関わった際、私たちはリーダーがリスクを管理しながら、プラスの側面に潜む機会を見出せるよう支援しました。鍵は、その機会を見つけ出し、人と組織の利益につなげることです。」
この明確さを高める実践的な方法の一つが、リーダーシップチーム内での「チャレンジ・マッピング」です。
課題を単なる緊急度ではなく、潜在的な影響度と複雑性で優先順位づけします。
さらに、シナリオ・プランニングも有効なツールです。これは、不確実性に麻痺することなく、幅広い可能性を検討する助けとなります。ポジティブなシナリオとネガティブなシナリオのバランスを取ることが、ますます重要になっています。
可能性を知る
リーダーは「望ましいこと」だけでなく、「実現可能なこと」を理解するために投資する必要があります。
この現実感は、戦略を確かなものにし、ステークホルダーとの信頼を築きます。
同時に、リーダーはチームを鼓舞し、制約的な思い込みを超えて、コンフォートゾーンの外に挑戦させ続けなければなりません。何が可能かを深く理解し、人々をその先へ導くには、エネルギーとレジリエンスが不可欠です。
Maran Ship Suppliesのマネージングディレクター、アリス・ルンポス氏はこう語ります。
「リーダーシップとは、可能なことを追求すること?私は不可能を追求することだと思っています。リーダーは人々を“不可能”の領域へ導くべきです。」
破壊的変化の中で優れたリーダーは、危機を後退ではなく跳躍台として捉えます。
「可能性思考(Possibility Thinking)」とは、制約を創造的に活用し、障害を方向転換の機会と見なし、戦略を柔軟に適応させることです。この思考は、危機対応と意味ある変革をつなぐ架け橋となります。実践面では、パイロットプログラムやイノベーションラボを通じて、アイデアを迅速に検証・改善することが有効です。また、リスクを「戦略的学習」として再定義し、小さな賭けを行い、結果を測定し、価値と実現可能性が確認された段階でスケールすることが重要です。
ネットワークを知る
ポリクライシスの時代におけるリーダーシップは、もはや単独で完結するものではありません。強固なチーム、多様なパートナーシップ、そして包括的な関与が不可欠です。シンガポールでのサミットで、ある経営幹部はこう語りました。
「リーダーシップは、ますます“チームスポーツ”になっています。違いを生み出す機会を見つけることが重要です。」
他の参加者も、オープンさの必要性を強調しました。
「どれだけのリーダーシップチームが本当にオープンで、閉ざされていないのか?どれだけが好奇心を持ち、過信していないのか?」
混乱と不確実性の中で、多くのリーダーは自分や自分のチームに閉じこもりがちです。しかし、こうした時こそ、ネットワーク内に適切なつながりを持つことが最も重要です。適切なネットワークを持つリーダーは、より影響力があり、効果的であることが証明されています。
若手がベテランにメンタリングを行うリバースメンタリング、世代横断的なマルチジェネレーションのチーム、異文化間の連携は、もはや単なる組織トレンドではありません。複雑性を乗り越えるための必須条件です。組織内外に信頼のエコシステムを構築することが、迅速で協調的な行動を可能にします。
自らの能力(強み)を知る
最後に、リーダーは自分自身と組織の能力を明確に把握する必要があります。どのスキルや能力がすでに存在し、何を開発する必要があるのか。強みと課題を適切にマッチさせることが、俊敏性の鍵です。
Harley Davidson APACの元副社長ディミトリス・ラプティス氏はこう語ります。
「リーダーとして、迅速な意思決定と自分らしさを保つバランスが必要です。そして最も重要なのは、人間関係と信頼をどう維持するかです。」
Credera APACのCEO、ケビン・マクドナルド氏もこう付け加えます。
「効果的なリーダーは、本物であり、謙虚であり、優れた調整役です。」
この時代に求められる能力とは、技術的な熟達ではなく、適応力とマインドセットです。実践的な戦略としては、スキルセットだけでなくマインドセットも評価するリーダーシップ能力レビューの定期実施や、ヒートエクスペリエンス(未知で困難な状況でのストレッチ課題)を提供することが挙げられます。これにより、リーダーは未知の環境で学び、成長する力を養うことができます。
未知を超えて進む
長い歴史の中で、変革を阻む最大の障壁としてしばしば挙げられてきたのは「未知」です。
しかし、未知の存在を認め、その影響を繰り返し強調することは、もはや疲弊を招くだけです。リーダーは、不確実性を行動可能な形に変換することに注力すべきです。具体的には、より良い問いを立てること、システム思考に投資すること、そして目標と学習の明確化を優先することです。
あるリーダーはこう語りました。
「危機の時代は、まるで麻雀のようです。混沌の中に秩序をどう見出すか。何が本当に重要なのかを見極め、共通の目的を共有し、団結を促進することが必要です。鍵は、人々を共通の目標と希望のもとに集めることです。」
ポリクライシスの時代において、リーダーシップの「何を」「どのように」は変化しています。最も効果的なリーダーは、適応を受け入れ、謙虚さを実践し、目的を持って導く人材です。こうした時代、リーダーは明確な目標や到達点を設定したくなりますが、目的地は安定して存在することがほとんどありません。
したがって、最も優れたリーダーは、「方向性を持ちながら、適応し続けること」に焦点を当てるのです。
弊社「株式会社インヴィニオ」は、20年以上積み重ねてきた実績と、CCLを含む世界中のアライアンスパートナーから得た最先端のノウハウを用いて、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」や「業績」へと昇華させることにコミットしています。
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