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360度評価より360度フィードバックを|違いや成功のポイントをプロが解説
360度評価・360度フィードバックが注目を集めています。被評価者の納得度が高く、個々人のパフォーマンス向上にもつながりやすいといったメリットを期待してのことでしょう。
ただ一方で「360度評価と360度フィードバックの違いが分からない」「導入を検討したいが失敗したという話も聞くため不安」といった悩みを抱える企業も多いのが実情です。
そこで今回は、360度フィードバックについて、定義および360度評価との違い、メリット、成功させるためのポイント6つ、導入手順などを紹介します。
なおここで紹介する内容は、企業における人材育成のプロであるCCL(Center for Creative Leadership)が綿密なリサーチおよび支援実績を通じて明らかにしたものですので、ぜひ参考にしてください。
360度フィードバックとは
360度フィードバックとは、上司・同僚・部下・顧客など様々な関係者によって多面的な評価を行いつつ、従業員のパフォーマンスやスキルの向上を図ることです。
360度評価と360度フィードバックの違い
360度評価と360度フィードバックの違いは、「評価と成長のどちらに重きを置いているか」です。
360度評価は、言葉の通り被評価者の「評価」に重きをおいており、給与査定などの根拠として用いるためのものです。
対して360度フィードバックは、被評価者の「成長」に重きをおきます。フィードバックは受け取る相手が主役であり、行動変容や成長につなげるためのコミュニケーションのため、「評価」とは明確に役割が異なります。
混合したり区別せずに使われたりしがちですが、本来の意味を理解しておき、被評価者の成長に重きをおく「360度フィードバック」を行うようにしましょう。
360度フィードバックが注目される背景
360度フィードバックが注目される背景について解説します。
ミレニアル世代・Z世代の層が増えるにつれ、組織内で価値観の多様化が進行すると同時に、育成やフィードバックの在り方も変化を迫られています。また、リモートワークの普及により、これまではオフィスで仕事ぶり以外も見れていたものが、細かな行動まで観察できないという状況も常態化しつつあります。
さらに、これまでに当たり前とされていた「上司からの評価」だけでは被評価者は納得感を持てなくなっており、リーダーシップの在り方が揺らぎ、育成につなぐための道筋をつけにくくなっているのが実情です。
こうした背景から、より被評価者の納得度が高く、本人の成長ひいては組織としてのパフォーマンスアップにもつながる360度フィードバックが注目されているのです。
360度フィードバックのメリット
360度フィードバックのメリットを4つ紹介します。
従業員のパフォーマンスが向上する
複数の関係者からの評価を受けることで、被評価者は自らのスキルや行動に対する客観的な視点を得られます。各従業員は、その視点を基に自らの成長にも重点を置いた目標設定や行動の改善を行います。その結果、個々のパフォーマンスが向上し、組織全体の生産性や業績の向上にもつながるのです。
人材に関する優先課題が明らかとなる
360度フィードバックにより企業は、戦略的目標を達成するために何が必要かを特定することができます。各従業員の能力とポテンシャルを理解すれば、目標達成のためにはどの役割やポジションを強化すべきなのかといった人材や人員配置に関する優先課題を明らかにできるのです。また収集されたフィードバックは、学習だけでなく、さらなる能力開発のための強力なツールとなります。
リーダーの育成につながる
組織レベルの360度フィードバックは、変化に焦点を当てたコーチングプログラムにもなります。フィードバックを与える側のリーダーとしての成長はもちろんのこと、受け取る側のリーダーシップを強化し、リーダー候補の育成も並行して行えるのです。
組織全体の安定化を図れる
360度フィードバックの実施が、リーダー同士の歩調を合わせたり、新しいビジネス戦略への危機感を作り出したり、さらには計画の迅速な実行につながったりと、組織全体の安定化にもつながるでしょう。
360度フィードバックを成功させるポイント6つ
360度フィードバックを成功させるためのポイントは以下の6つです。
ポイント1:目的と戦略を明確にする
360度フィードバックで「何を達成したいのか」を戦略性をもって決めていなければ、導入した結果、何が良くなったのかを測ることはできません。
360度フィードバックの取り組みが失敗に終わったという話を耳にしたことはないでしょうか。
CCLの報告によると360度フィードバックが失敗するのは、ツールや過程ではなく、導入を始める時点に原因があると指摘されています。
このことから、360度フィードバックの導入を開始する前に、まずは360度フィードバックの取り組みが、自社のビジネス戦略や人材戦略とどう関わるのかを考えておくことが不可欠です。
具体的には、以下の項目を検討しましょう。
- 目的
なぜこの取り組みが必要なのでしょうか?どのようなビジネス上の問題を解決しようとしていて、何の役に立つものでしょうか? - 必要性
なぜ今、必要なのでしょうか?なぜこれを優先すべきなのでしょうか? - 対象
誰のためのものなのでしょうか?360度フィードバックの対象者は?ビジネス上の問題を解決するために、なぜその人を対象者にすべきなのでしょうか? - 成果
組織での360度フィードバックの取り組みにどのような成果を期待していますか?
導入に際してはこちらもご参照ください。
人事チームが開発に 360 度フィードバックを使用する方法
ポイント2:体制を整える
360度フィードバックの導入は、複雑な作業を伴います。データ収集やレポート作成の技術が進歩しても、多くの人が関わらなければうまくいかないものです。
360度フィードバックの導入を計画する際には、「いつ」と「誰が」の両方を慎重に検討する必要があります。
- いつ
「マイルストーンは何で期限はいつなのか・プロセスの中で個々の参加者がフィードバック者の返答率をどのようにモニタリングするか」などについて検討し、スケジューリングしておきましょう。 - 誰が(役割)
「360度フィードバックベンダーとの連絡窓口、社内のプロセス管理者、参加者との連絡窓口」など、必要な役割を誰が担うかを検討しましょう。
最初は少人数で試験的に導入し、徐々に人数を増やしていきましょう。フィードバックプロセスに参加するのが初期段階か成熟期かにかかわらず、どの参加者も同様に質の高い経験ができるようにしておくことが大切です。
部門長クラスのサポートは非常に重要です。最良の結果を得るためには、プロセスの早い段階で彼らを巻き込みましょう。イニシアチブと具体的なビジネス目標とを結び付け、彼らをパイロットグループとすることに同意を得るのです。彼らが自分たちの経験や360度フィードバックを組織全体で共有することで、全体の足並みを揃えることへの貢献を期待できます。
また、部門長クラスが「先陣を切る」ことによって、マネジメントが360度フィードバックのプロセスを尊重し、この取り組みの重要性を認識しているという強いメッセージを送ることもできます。
部門長クラスからスタートすることが困難な場合は、最初の参加者を選んだ理由を明確にしておきましょう。360度フィードバックを受けることを希望する人を対象とすることが大切です。
ポイント3:信頼を築く
信頼があり風通しの良い「心理的に安全な職場」であれば、社員は安心して、率直で真正な360度フィードバックを提供することができます。
とくに重要なのは、データの機密性やフィードバックを提供する側の匿名性についての対策を、あらかじめ明示しておくことです。
職場の心理的安全性については、こちらの記事もぜひご覧ください。
職場の心理的安全性とは?リーダーがすべき5つのことをプロが紹介
ポイント4:組織内での支持を得る
360度フィードバックプロセスの展開を計画する際には、組織内の支持を得るためのコミュニケーション計画を立てて実行する必要があることを念頭に置いておいてください。
また、ポジティブで持続的な影響力を発揮するために、管理者の役割とプロセスを明確にしておきましょう。現実的なスケジュールを作成した上で、コミュニケーションを図ります。
「新しいプログラムを発表します」という当たり障りのないメールを全社員に送るだけでは効果がありません。単に新しいプログラムについて伝えるだけではなく、社員にとってのメリットを強調しつつ関わりを深められる方法で発表しましょう。
また、人材育成の社内マーケティングキャンペーンを展開するかのように、プログラムの利点を様々な視点から紹介するのも良いでしょう。
評価者となる全ての従業員は、プログラムの目的と期待を正確に理解する必要があります。360度フィードバックを収集するための最善の方法を理解するようにしましょう。
ポイント5:能力の開発につなげる
360度フィードバックの結果を受け取り、本人へフィードバックし、話し合うことは重要ですが、それだけではありません。その後に続く「能力開発の段階」こそが組織にとって最も重要なのです。
組織と個人が360度フィードバックの効果を最大限に発揮するためには、開発の計画を作成するプロセスが必要であり、そのためのサポートと徹底した実行も不可欠です。
各従業員が360度フィードバックの結果の真意を理解できるを理解できるようにし、さらに開発目標を設定して達成するための枠組みも設定しましょう。
また、フォローアップを計画することによって、組織的な360度フィードバックの取り組みの投資対効果を最大限に高めることができます。
各従業員とトレーニングを受けたファシリテーターとの間で1対1のプライベートセッションを行うことで、360度フィードバックプロセスの効果をさらに高めることができます。また、フィードバック後に、さらにコーチングを行えば、能力開発を強化し、学習効果を高めることも可能です。
ポイント6:専門企業と連携する
360度フィードバックを成功させるためには、人材開発について専門的なノウハウを有した外部企業との連携を推奨します。
専門企業と連携した上で、自社のコンピテンシーモデルや求める成果など、自社のビジネスニーズに合致した360度のフィードバック方法を構築しましょう。
連携先の専門企業を選ぶ際には、内容が研究や実績に基づいているかどうかや、フィードバックに関する理念、導入までのサポートレベルなどを確認しましょう。
360度フィードバックの導入手順まとめ
360度フィードバックの導入手順を簡潔にまとめて紹介します。
- 360度フィードバックの目標を明確にする
- 個人と組織の体制を整える
- プロセスを設計する
- ツールやデザインを選択する
- 参加者を特定する
- 組織の準備を整える(目的や手法の周知)
- 360度フィードバックを実行する
- 結果を処理し、学習内容を応用する
本手順は、CCLより発刊の書籍「360度フィードバックの影響力を強化する 」に基づいています。
360度フィードバックで組織の実績を高めるには
360度フィードバックで組織の実績を高めるには、単なる評価に留めるのではなく、個人の成長および能力開発につなげることが重要です。
弊社「株式会社インヴィニオ」は人材育成のプロとして、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットしています。事業の成果として表れるように、人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化させることを重視しています。
また、今回ご紹介したような最先端の知見や、各企業様が求める成果を上げるために有効な人財開発、組織開発のノウハウを、世界中の教育機関やコンサルティング会社とアライアンスを組んで導入しています。
実績に直結する人材育成や能力開発、各種取り組みに関してご相談がございましたら、ぜひこちらから何でも気軽にお問い合わせください。