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360度フィードバックの正しい使い方

目次
ミレニアル世代、Z世代等の層が増えるにつれ、組織内での価値観の多様化が進むと同時に、育成やフィードバックの在り方も変化を迫られています。さらにはリモートワークの促進により、これまではオフィスで仕事ぶり以外も見れていたものが、なかなか細かい行動まで観察できないという状況も常態化しつつあります。さらに、これまでに当たり前とされていた「上司からの評価」だけでは被評価者は納得感を持てなくなっており、自分自身のリーダーシップの在り方、育成へのつなげ方への道筋がつけられなくなっているという現象も見られるようになってきました。
このような変化の中で360度フィードバックが再び注目を集めています。
*少し余談ですが、このコラムでは一般的に流通している360度「評価」という言葉を避けています。日本ではフィードバックと評価をあまり区別せずに使われてることがありますが、厳密にはフィードバックと評価は異なります。フィードバックは、受け取る相手が主役であり、その人の行動変容や成長につなげるためのコミュニケーションであり、給与査定等と繋がっている「評価」とは明確に役割が異なります。
360度フィードバックで収集されたフィードバックは、学習だけでなく、さらなる能力開発のための強力なツールとなります。リーダーの現在の能力とポテンシャルを理解すれば、組織の成功のための土台を作ることができるでしょう。
リーダーとしての能力開発は、自分自身の強みと弱みを率直にフィードバックすることから始まります。
360度フィードバックをタレントマネジメント計画に組み込むことで、企業は、戦略的目標を達成するために何が最も重要であるかを特定することができます。360度フィードバックフィードバックを全社的に導入することに成功すれば、企業の財務パフォーマンスを向上させ、既存の人材を強化できるだけでなく、将来のリーダーシップ候補も強化することができるでしょう。
企業によっては、組織レベルでの大規模な360度フィードバックが、リーダー同士の歩調を合わせたり、新しいビジネス戦略への危機感を作り出したり、さらには迅速に計画を実行したりするために必要な要素となるでしょう。また、組織レベルの360度フィードバックは、変化に焦点を当てたコーチングプログラムを成功させるための出発点にもなります。
組織の360度フィードバックプロセスを成功させるには
以下の5つのステップを実施すれば、リーダーシップ能力開発のための強力なツールを組織全体に展開することができます。
1.目的と戦略を明確にする
最近では360度フィードバックが広く普及しているため、もし皆さんの会社で360度フィードバックが実施されていなければ、時代に乗り遅れているかのように感じられるかもしれません。しかし、360度フィードバックで何を達成したいのかを戦略的に決めていなければ、投資した結果何が良くなったのかを測ることはできません。
360度フィードバックの取り組みが失敗に終わったという話を聞いたことがあるでしょうか。ある調査結果によると、360度フィードバックが失敗するのは、ツールそのものが原因ではなく、導入からうまくいっていなかったことが典型的な原因であるようです。このことから、360度フィードバックの取り組みを開始する前に、まずは360度フィードバックの取り組みがビジネス戦略や人材戦略とどう関わりがあるかを考えておくことが必須です。
導入前には以下の項目を必ず検討しましょう。
- なぜこの取り組みが必要なのでしょうか?どのようなビジネス上の問題を解決しようとしていて、何の役に立つものでしょうか?
- なぜ今、必要なのでしょうか?なぜこれを優先すべきなのでしょうか?
- 誰のためのものなのでしょうか?360度フィードバックの対象者は?ビジネス上の問題を解決するために、なぜその人を対象者にすべきなのでしょうか?
- 組織での360度フィードバックの取り組みにどのような成果を期待していますか?
360度フィードバックを人事部の能力開発やビジネスにどのように活用できるかを具体的に検討し、計画しましょう。
フィードバックを実施するベンダーと緊密に連携して、自社のビジネスニーズに適した360度のフィードバック方法を選択し、さらに、選択したフィードバック方法が自社のコンピテンシーモデルやビジネスの成果に合致するようにしましょう。
組織の360度フィードバックの提供元を選ぶ際には、内容が研究に基づいているかどうかや、フィードバックに関する理念、導入までのサポートレベルなどを確認しましょう。HRのシニアリーダーは、測定基準を定義した上で、他の幹部と協力して基準の整合性を取っておきましょう。
2.体制を整える
360度フィードバックを導入することは、非常に複雑な作業です。データ収集やレポート作成の技術が進歩しても、多くの人が関わらなければうまくいかないものです。
360度フィードバックの導入を計画する際には、「いつ」と「誰が」の両方を慎重に検討する必要があります。
- いつ:マイルストーンは何か、締め切りはいつなのか、プロセスの中で個々の参加者がフィードバック者の返答率をどのようにモニタリングするかなどについて検討し、カレンダーを作成しておきましょう。
- 誰が:360度フィードバックベンダーとの連絡窓口、社内のプロセス管理者、参加者との連絡窓口など、必要な役割を誰が担うかを検討しましょう。
最初は少人数で試験的に導入し、徐々に人数を増やしていきましょう。フィードバックプロセスに参加するのが初期段階か成熟期かにかかわらず、どの参加者も同様に質の高い経験ができるようにしておきましょう。
シニアマネジメントのサポートは非常に重要です。最良の結果を得るためには、プロセスの早い段階で彼らを巻き込み、イニシアチブと具体的なビジネス目標とを結び付け、彼らをパイロットグループとすることに同意を得ましょう。彼らが自分たちの経験や360度フィードバックを組織全体で共有することで、全体の足並みを揃えることに貢献してくれるでしょう。また、シニアマネジメントが「先陣を切る」ことによって、マネジメントが360度フィードバックのプロセスを尊重し、この取り組みの重要性を認識しているという強いメッセージを送ることもできます。
シニアマネジメントからスタートすることができない場合は、最初の参加者を選んだ理由を明確にしておきましょう。360度フィードバックを受けることを希望する人を対象としましょう。
3.信頼を築く
信頼があり、風通しの良い心理的に安全な職場であれば、社員は安心して、率直で真正な360度フィードバックを提供することができます。
重要なのは最初からそれをはっきりさせておくことです。成果がはっきりしていること、データの機密性やフィードバックを提供する側の匿名性についてしっかりと対策がとられていることを明確にしておきましょう。
4.組織内での支持を得る
組織の360度フィードバックプロセスの展開を計画する際には、強力なコミュニケーション計画を立てて実行する必要があることを念頭に置いておいてください。また、ポジティブで持続的な影響力を発揮するために、管理者の役割とプロセスを明確にしておきましょう。現実的なタイムテーブルを作成した上で、コミュニケーションを図っていきましょう。
「新しいプログラムを発表します」という当たり障りのないメールを全社員に送るだけでは効果がありません。単に新しいプログラムについて伝えるだけではなく、社員の関わりを深められるような魅力的でユニークな方法で、新しい組織的な360度フィードバックの取り組みを発表しましょう。また、人材育成の社内マーケティングキャンペーンを展開するかのように、プログラムの利点を様々な視点から紹介するのも良いでしょう。
参加者、マネージャー、フィードバックへの回答者は、プログラムの目的と期待を正確に理解する必要があります。360度フィードバックを収集するための最善の方法を参加者が理解するようにしましょう。
5.能力の開発につなげる
360度フィードバックのレポートを受け取り、フィードバックし、話し合うことは重要ですが、それだけではありません。その後に続く能力開発の段階こそが組織にとって最も重要なことなのです。
組織と個人が360度イニシアチブの効果を最大限に発揮するためには、開発の計画を作成するためのプロセスが必要であり、そのためのサポートと徹底した実行も不可欠です。参加者が360度フィードバックの結果の真意を理解できるようにし、さらに開発目標を設定して達成するための枠組みも設定しましょう。
また、フォローアップを計画することによって、組織的な360度フィードバックの取り組みの投資対効果を最大限に高めることができます。参加者と、トレーニングを受けたファシリテーターとの間で1対1のプライベートセッションを行うことで、360度フィードバックプロセスの効果をさらに高めることができます。また、360度フィードバックについてしっかりとフィードバックした後に、さらにコーチングを行えば、能力開発を強化し、学習効果を高めることができます。
組織で360度フィードバック・イニシアチブを成功させるためのヒント
以下のポイントを踏まえて、組織の360度プロセスの導入を成功させましょう。
- 360度フィードバック・イニシアティブの目標を明確にする
- 個人と組織の体制を整える
- プロセスを設計する
- ツールやデザインを選択する
- 参加者を特定し準備する
- 組織の準備をする
- フィードバックを実施する
- 結果を処理し、学習内容を応用する
さらに詳しいヒントについては、当社の書籍「360度フィードバックの影響力を強化する 」をご覧ください。