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職場の心理的安全性とは?リーダーがすべき5つのことをプロが紹介
目次
職場の心理的安全性とは、職場において自らのアイデアや気持ちを誰にでも安心して発信できる状態のことです。
活発なダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包括性)に関する研究結果を見ると、ほとんどの人事担当者や組織の上層部が「思考の多様性と包括性は組織・職場に恩恵をもたらす」という意見には賛同しています。
異なる人生経験を持つ人たちで構成された職場には、多くの貴重な意見が集まります。そして、多様な職場は、同じような人生経験を持つ人々ばかりの職場よりも、問題を認識しやすく、創造的な解決策を提示することが可能です。
しかし、「職場で発言することに抵抗を感じる人」がいたらどうでしょうか。
懸念を共有することを恐れたり、質問することに抵抗があったりしたら?
拒絶されるのを恐れて、革新的なアイデアを提案することを避けているとしたら?
残念ながら、多くの人がこのように感じているのが事実です。2017年のギャラップ社の調査により、社員10人のうち3人が「自分の意見は職場では重要ではない」と強く思っていることが明らかになっています。まさに「職場の心理的安全性」の欠如が起きているのです。
そこで今回は職場の心理安全性について、4つのステージ、心理的安全性を高めるためにリーダーがすべき5つのこと、各メンバーが心理的安全性を育む方法、リモートワークにおける心理的安全性についてを紹介します。
今回の内容もリーダー育成分野の権威であるCCL(Center for Creative Leadership)が40年にわたる綿密なリサーチをもとにして特定したものですので、職場の心理的安全性アップにぜひお役立てください。
職場の心理的安全性とは
職場の心理的安全性とは、職場において自らのアイデアや気持ちを誰にでも安心して発信できる状態のことです。
職場での心理的安全性の欠如は、ビジネスに大きな影響を及ぼします。上手く進行していないことがあるのにも関わらず、それを口にすることができなければ、失敗を防げません。また、社員が自らの業務に注力できない(コミットできていない)状況では、組織は人材の強みを引き出せていないことになるのです。
「真の変化をもたらすアイデアを生み出すためには、人々が思ったこと・感じたことを気軽に発言し、素朴な疑問を投げかけ、現状に異議を唱える必要がある」と、CCLのCOOであるデビッド・アルトマンは述べています。職場での心理的安全性とは、誰もが常に親切であるということではありません。葛藤を受け入れ、声を上げ、さらにチームと皆さんがお互いに支えあっていることを知るということなのです。
また、「The Fearless Organization: Creating Psychological Safety in Workplace for Learning, Innovation and Growth(恐れのない組織:心理的安全性が学習・イノベーション・成長をもたらす)」の著者であるエイミー・エドモンドソン博士は、真に革新的な文化を生み出すためには、人々が中途半端な考えを口にしたり、突拍子もない質問をしたり、大声でブレインストーミングをしたりすることが許されなければならないと述べています。
職場の心理的安全性における4つのステージ
職場の心理的安全性には4つのステージが存在します。職場に相互の信頼や敬意を払う風土が定着していると、各メンバーは自由にコラボレーションでき、リスクを取っても安心していられるため、迅速なイノベーションを行えます。
心理的に安全な職場は、帰属意識から始まります。マズローの欲求階層では、人間は基本的な欲求が満たされないと能力を発揮できないとされています。同様に、社員は自分が認められていると感じられなければ、組織を改善することができません。
「The 4 Stages of Psychological Safety(未訳)」の著者であるティモシー・クラーク博士は、社員が自由に価値ある貢献をしたり、現状に異議を唱えたりするには、以下4つのステージを経る必要があると述べています。
- ステージ1 – Included (インクルージョンの観点からの安全性)
インクルージョン(包括性)の安全性とは、つながりたい、帰属したいという人間の基本的な欲求を満たすことを指します。この段階に達すると、安心して自分らしくいることができ、自分のユニークな属性や特徴を含め、ありのままの自分が受け入れられていると感じることが可能です。 - ステージ2 – Safe to Learn (学習者の安全性)
学習者の安全性とは、学びたい、成長したいという欲求を満たすことを指します。この段階に達すると、安心して質問をしたり、フィードバックを与え(受け入れ)たり、試行錯誤を繰り返したりして、学習プロセスを通じて交流することができます。 - ステージ3 – Safe to contribute (貢献者の安全性)
貢献者(コントリビューター)の安全性とは、変化をもたらしたいという欲求を満たすことを指します。つまり、安心して自分のスキルや能力を使って有意義な貢献をすることができるという状態です。 - ステージ4 – Safe to challenge (挑戦者の安全性)
挑戦者(チャレンジャー)の安全性とは、物事をより良くしたいという欲求を満たすことを指します。つまり、変革や改善の機会があると思えば、安心して声を上げ、チャレンジすることができるという状態です。
職場の心理的安全性を高めるためにリーダーがすべき5つのこと
職場の心理的安全性を高めるためにリーダーがすべき5つのことを紹介します。社員が4つのステージを経て、最終的に対人関係などのリスクを気にせず、安心して能力を発揮できる環境を整えるために、リーダーは、以下の5つを実行して、チームの心理的安全性を育み、促進する必要があるのです。
- 心理的安全性の重要性を明示する
職場の心理的安全性を高めることが「組織のイノベーション、チームのエンゲージメント、インクルージョンの促進」といった重要な目的につながることを明確に示します。そして、自らが模範となることを決意しましょう。 - 全員が発言することを促す
「純粋な好奇心を示す率直さ」と「真実や本音を語ること」を尊重しましょう。誰かが勇気を出して現状を覆すような発言をした時には、心を開き、思いやりと共感をもって接することが重要です。コーチング文化のある組織では、真実を語る勇気のある社員が多くなるものです。 - 失敗したときの対処法の規範を確立する
試行したり、合理的なリスクを取ったりすることを咎めてはいけません。失敗や失望から学ぶことを奨励し、失敗から得られた教訓を率直に共有しましょう。そうすれば、イノベーションを妨害するのではなく、促進することができます。 - 新しいアイデアを受け止める
アイデアを受け入れる時は、そのアイデアを広くサポートする体制で臨みましょう。熟慮して首尾の整ったアイデアだけに耳を傾けるのではなく、十分に練られてはいないものの、創造性に富んだ既成概念にとらわれないアイデアを受け入れることも、職場の心理的安全性を高めるためには大切です。新しいアイデアを積極的かつ好意的に受け入れ、チーム内でより革新的な考え方を育みましょう。 - 建設的な対立を受け入れる
対立は、建設的な対話と議論を促進することで解決します。リーダーは、対立を変化につなげるために議論の場を設けましょう。
チームで以下を話し合うこともおすすめです。
- 上手くいっていないことがある場合、その懸念をどのように伝えればよいか?
- 言いにくいことを同僚に伝えるためにはどうすればよいか?
- 相反する意見をまとめるための基準とは?
心理的安全性は組織の風土や文化を表すものです。文化を変えるとなると、途方もない作業のように感じてしまうかもしれません。
しかし、アルトマン氏は、「変革は小さな一歩から始まる」と述べ、「少しずつ変化させ、少しずつ成果を上げる」という考え方を提案しています。日々の目標に対して1%ずつ改善できるかと問われたら、ほとんどの人ができると答えるはずです。皆さんも同僚に毎日1%ずつ改善していこうと呼びかけてみましょう。そうすれば1年後には30倍以上も良くなっています。
チームメンバーが職場で心理的安全性を育む方法
職場の心理的安全性を高めるためには、チームの文化を形成する要となるリーダーの働きも重要ですが、一人ひとりのチームメンバーの貢献も欠かせません。
「文化とは、簡単に言えば “私たちの仕事のやり方 “のことです。私たちは皆、自分のチームと組織の両方で、職場での仕事のやり方に役割を持っています」とアルトマン氏は語ります。
以下のステップを実践して、生産的な対話と議論を促進しましょう。
- 事実だけでなく感情や価値観を理解するために、アクティブリスニングを心がける
- 失敗は学びと成長の機会であることを認識し、失敗を共有することに同意する
- 感謝であれ失望であれ、自分の気持ちを伝えるときは、素直にそれを表現する
- 助けを求め、求められたときに助けを惜しまない
- ひとりの「ヒーロー」ではなく、多くの専門家がいると考える
- 感謝の気持ちを伝えることで、チームメンバーの自己肯定感を高める
最も重要なことは「個人間のポジティブなやり取りや会話は信頼の上に成り立つ」ということです。チームメンバーがリスクを冒したり、助けを求めたり、ミスを認めたりした時には、それを大目に見てあげましょう。その代わりに、彼らも同じことをしてくれるはずです。
またリーダーは、組織全体の「会話の質」向上に貢献できます。会話の質が向上すれば、組織文化も向上します。会話のスキルが向上して心理的に安全な環境が整えば、部下やメンバーは言葉にできない不安を共有したり、気兼ねなく解決策を提案したりすることができるようになります。職場環境で対人関係のリスクを取ることを恐れなくなれば、組織文化はより強固かつダイナミック、革新的なものになるでしょう。
なお、部下育成および組織開発の有効な「アクティブリスニング」についての詳細は、ぜひこちらの記事もあわせてご覧ください。
アクティブリスニングとは?コーチングに不可欠なスキルのトレーニング法
リモートワークにおける心理的安全性とは何か
職場の心理的安全性はリモートワークが主体の職場でも高めることが可能です。
リモートワークで働く社員がいると、心理的安全性を確保するのが難しいと感じがちです。事前にスケジュールを決めて、画面越しにしか会話ができない状況で、どうやって信頼関係を築けばよいのでしょうか。
アルトマン氏は、リモートワーク・在宅勤務は、チームメンバーが意識さえしていれば、人脈を築き、心理的安全性を高めるユニークな機会を与えることを示しています。Web会議と通常の対面式の会話を対比した上で「オンラインの対話では相手の言葉を聞くだけでなく、相手の感情をより推察しやすくなる」と述べています。一度に30秒あるいは数分間、人を見つめることは気まずいものです。しかし、Web会議では誰が誰を見ているのか分からないので、感情的知性を応用する能力が高まるのです。
また、職場の心理的安全性を確保するためには、チームメンバーが勇気を持って弱い部分を見せることも必要ですが、バーチャルな職場環境はその機会を得やすくなります。
アルトマン氏は、「人前で弱音を吐くのは難しいかもしれませんが、コンピュータを使えば、チャットであれば弱音を言いやすくなることもあります。また、どのように伝えたいかをじっくり考えることができ、さらに相手のコメントを見て反応を探ることもできるのです」と提案しています。
バーチャルな環境を効果的に用いて、職場の安全性を高めるコミュニケーションを実践してみてはいかがでしょうか。
職場の心理的安全性を高めるリーダーを育成するためには
職場の心理的安全性を高めることの目標は、チームメンバーが自らの発言を否定される心配をしなくて済む状態にすることです。こうした環境を実現できれば、チームメンバーは対人関係におけるリスクを必要以上に恐れることなく、変化に対してより順応できるようになります。つまり、メンバーそれぞれが組織全体の課題と機会を理解し、組織をより良い場所にするための自分の役割を認識できるようになるのです。
そのためには組織をけん引する各リーダーが、職場の心理的安全性を高める能力を習得する必要があります。
弊社「株式会社インヴィニオ」は、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットしています。事業上の成果として表れるように、人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化させることを重視しています。
職場の心理的安全性を高めるリーダーを育成し、組織文化レベルや成果をさらに高めたいとお考えの場合は、ぜひこちらからお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人:インヴィニオ編集部