leadership-insight
リーダーシップインサイト
- ホーム
- リーダーシップインサイト
- 社会的アイデンティティとは?リーダーとしての必須知識【セルフチェック付】
社会的アイデンティティとは?リーダーとしての必須知識【セルフチェック付】
目次
社会的アイデンティティがリーダーに求められています。
近年、浸透するグローバル化やコロナ禍の影響により、半ば強制的にリモートワーク・リモートマネジメントが新たな働き方として定着しつつあります。さらに、資本主義の限界を感じさせる動きや格差社会の解消が活発化し、これまで以上に多様な働き方・労働力が急速に誕生しました。
職場におけるダイバーシティ(多様性)についての取り組みは重要ですが、永続的なパフォーマンスを生み出すには、それだけでは不十分です。
従業員の多彩な経験と能力を活用し、新しい人的資本経済の中で成功したい場合、組織の各リーダーは、あらゆる境界を越えて協力する方法を理解する必要があります。そのためにリーダーは、チームが能力を最大限に発揮できるように、メンバーのさまざまな経験を理解し、考慮しなければなりません。その最初のステップが『社会的アイデンティティを理解すること』なのです。
そこで今回は社会的アイデンティティについて、基本的な情報から、どのように形成されるのか、リーダーとして理解すべき重要ポイントを解説します。さらに、社会的アイデンティティに対する認識を確認するための「セルフチェック」も掲載していますので、ぜひ最後までご覧ください。
いずれもリーダー育成分野の権威であるCCL(Center for Creative Leadership)が40年にわたる綿密なリサーチに基づいた内容ですので、ぜひ参考にしてください。
社会的アイデンティティとは
社会的アイデンティティは、人々が自分自身や他の人を特定のグループとして分類および識別するためのラベルのようなものです。一般的な社会的アイデンティティには、世代、民族、人種、宗教、性別、性的指向、国籍、障害、政治的所属、交際状況、職業、社会経済的地位が含まれます。
社会的アイデンティティは、「自己概念」の1つです。つまり、自分をどのような人間と認識しているかということです。例えば、背が高い・良心的であるなど、自分自身を説明するために使用する個人的な属性に加えて、価値観・自分自身や他者について語るストーリー・特定の行動に対する動機づけなどが含まれます。
社会的アイデンティティはどのように形成されるのか
社会的アイデンティティの形成方法はひとつではありません。
例えば、特定の世代(例:団塊の世代やZ世代)として、社会的アイデンティティを獲得した状態で生まれます。一方では、例えば医者になるなど、自らが選択した結果として社会的アイデンティティを獲得することも可能です。
また、実際の経験が新しい社会的アイデンティティを作成する場合もあります 。具体的には、事故や病気によって能力やステータスが変わる場合などです。
さらに社会的アイデンティティの中には、目に見えるものと目に見えないもの、生涯にわたって保持するものもあれば、生涯を通じて変化するものもあります。
社会的アイデンティティは複数の要素で成り立っている
社会的アイデンティティは、性別や人種などしばしば単一のカテゴリー の観点から語られますが、人はそれぞれ複数の要素で社会的アイデンティティを形成しています。たとえば、お金持ちか貧しいかどうか、異性愛者かLGBTの価値観の持ち主かどうか、など複数のアイデンティティを持っていることの方がむしろ普通なのです。
社会的アイデンティティは社会や文化によって形成される
社会的アイデンティティは社会と文化によって形成されます。たとえば、現在のほとんどの社会集団では、目の色は社会的アイデンティティと見なされていませんが、肌の色は社会的アイデンティティと見なされています。社会的アイデンティティは評価に依存しているため、社会的アイデンティティと見なされるか見なされないかは、その時代における社会情勢や異なる文化において変化する可能性があります。
社会的アイデンティティに関するセルフチェック
特定の社会的アイデンティティは、特定の状況や環境でより意識されるようになります。たとえば、あなたが日本人であり国内に居住していれば、自分の国民性について深く考える機会はあまりありません。しかし、もしアメリカで駐在員の立場に立つとしたら、突然「日本人であること」という社会的アイデンティティが強く意識されるようになるのです。なぜなら、それはあなたの経験をどのように解釈するかだけでなく、他の人からどのように見られるかに影響を与える可能性が高いからです。
社会的アイデンティティは互いの違いを認識できるサインである一方で「思い込み、固定観念、先入観、偏見」の基となってしまいがちです。
また、社会的アイデンティティグループは、不平等な権力や特権の根底にも存在します。社会的アイデンティティの微妙な違いを理解することは、組織においてダイバーシティを推進する上で重要なステップです。
自他の社会的アイデンティティを認識する際にかかるバイアスや偏見を取り除くためには、次のようなセルフチェックが有効です。
1.あなたの社会的アイデンティティを可能な限り挙げてください
人種、性別、民族、宗教、世代、社会的役割、職業、国籍、性的指向、障害、などのカテゴリーを考慮してください。
2.あなた自身の社会的アイデンティティについて考えてください
・あなたが自分自身を語る上で、最も中心的な社会的アイデンティティは何ですか?また、それはなぜですか?
・他者からあなたへ最も大きな影響を与える社会的アイデンティティは何ですか?理由とその答えが環境(例えば、職場、家、友達と)によって変わるかも考えてください。
・職場で隠している社会的アイデンティティはありますか?それは周囲の人にどのような影響を与える可能性がありますか?
・あなた自身について他者に知ってほしいと思っている社会的アイデンティティはありますか?
・あなたの社会的アイデンティティに基づいて、他者はあなたにどのような仮定をおいていると思いますか?
・あなたは他者の社会的アイデンティティに基づいて、どのような仮説をもっているでしょうか?(あの人は〇〇だから××するに違いない等)
3.あなたの社会的アイデンティティが、自身にどのような影響を与えるかを考えてください
・特定の社会的アイデンティティを持っていることで、情報や予算といった経営資源や、経営幹部へのアクセスが可能になっているでしょうか、それとも制限されているでしょうか?
・自分自身の仕事をコントロールしたり、他者の仕事を指導する場合に有利に働いているでしょうか、それとも制約が生じるでしょうか?
・意思決定についてはどうでしょうか?
・仕事とプライベートにおける影響力の行使にはプラスに働いているでしょうか、それともマイナスの影響があるでしょうか?
リーダーとして必須の社会的アイデンティティにおける重要ポイント
社会的アイデンティティを無視してダイバーシティマネジメントを行うのは、今日の社会においては不可能です。リーダーに必須の基本概念ですが、その有効な活用手段はまだまだ発展途上とも言えます。
ただし、次に挙げるようなポイントを押さえるだけで、一定の失敗を避けることができ、独自の多様性マネジメントの方法論を打ち立てるための一歩を踏み出すことが可能です。
組織内での社会的アイデンティティへの注目
あなたのチームや部署で「社会的アイデンティティがどのように機能するか」により注意を払いましょう。具体的には以下のような問いかけで確認すると良いでしょう。
・属している組織において、一般従業員と意思決定者レベルでは同じようにダイバーシティが確保されているでしょうか?
・特定の社会的アイデンティティにのみダイバーシティが適用されていないでしょうか?
・チーム内や組織内で置き去りにされている人の社会的アイデンティティを十分に理解しているでしょうか?
日常的な多様な社会的アイデンティティへの接触
偏見とステレオタイプを減らすための最もシンプルかつ有効な戦略は、異なる社会的アイデンティティグループの人々の接触機会を増やすことです。
日常業務ではあまり接することのない社会的アイデンティティグループが交わることができる機会の創出を検討してみてください。(例: プロジェクト、社交イベント、修養会、またはチームビルディング活動)。
社会的アイデンティティの理解を促進して公平性(Equity)を高める
組織のダイバーシティを考えるとき、公平性(Equity)は重要な要素です。公平性とは、成功するために必要となる資源や機会を人々に提供することです。よく比較される概念に「平等」がありますが、平等とは、すべての人に均一のリソースを提供することです。
公平性がなければ、ダイバーシティの効果が薄れ、すぐに重要性が忘れ去られてしまうでしょう。
公平性を実現していくことが困難なケースであっても、社会的アイデンティティに関する理解を活用することで、公平性を高める機会を明らかにすることができます。
例えば、新しいポリシーを作成するときは、さまざまな社会的アイデンティティを持つ人々にどのように影響するかを調べます(例:シングルマザー・障害者・ノンバイナリー・高卒)。
その際、過小評価または抑圧されている可能性のある社会的アイデンティティがないかに注意してください。特定のグループに負担を与える可能性があると思われる場合は、それを調整する方法を検討し、影響を受ける可能性のある社会的アイデンティティを持つ人々の声も積極的に聞きましょう。
ダイバーシティを重要視して多彩な人々を惹きつけ、包括的にリードし、パフォーマンスを高めることができれば、同じ組織内に全く異なる世界観を実現することすら可能なのです。
社会的アイデンティティをマネジメントに活かせるリーダーを育成するには
社会的アイデンティティについて、基本的な情報から、どのように形成されるのか、リーダーとして理解すべき重要ポイントを解説しました。今後、さらにダイバーシティの重要性が高まることをふまえると、特に組織における各リーダーが社会的アイデンティティについての理解を深めることは不可欠です。
ただ、セルフチェックの項目の多さからも明らかなように、社会的アイデンティティを正確に理解した上で、マネジメントにまで活かすことは決して容易でありません。
弊社「株式会社インヴィニオ」は、知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットしています。事業上の成果として表れるように、人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化させます。
ダイバーシティに適応するためのリーダー育成に関してお困りごと・ご相談などございましたら、こちらからお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人:インヴィニオ編集部