Leadership Insight

職場で対人スキルをアップするには?

LEADERSHIP INSIGHT / CCL | 2022/09/27

リーダーとしてのスキルアップの必要性を感じていますか?リーダーにはいろいろなスキルが求められますが、その中でも特に重要視されるスキルが対人スキルです。まずは、人間関係の構築と維持の仕方を学ぶことから始めてみましょう。

Fortune500社のCEOであろうと、学校の教師であろうと、対人スキルは非常に重要です。実際、人間関係を構築するスキルは、リーダーが備えるべき能力の中でも上位に位置づけられることが、様々な調査により明らかになっています。

人間関係を構築し、維持することに長けている人たちには、いくつかの共通した特徴があります。ここでは、対人スキルの観点から見て、多くの有能なリーダーが持つ共通点を紹介していきます。

有能なリーダーたちが共通して備えている対人スキルとは

最も有能なリーダーたちが普段から人間関係を構築する際に活用する5つの手法

1. 自己認識(Self-Awareness)ができている

自己認識力を高めるには、自分の長所と短所を知るだけでなく、自分の行動が周囲どのような影響を与えるかについても知ることが必要です。例えば、中小企業の経営者や営業チームのリーダーが、顧客との関係をマネジメントできていると自負しているとします。同時に、細かく指示出しする方法は、部下たちに対して自分が信頼されていない、評価されていないという印象を与え、部下たちが不満に感じる可能性があることも認識しています。自分の行動が与える影響を頭に入れることで、顧客や社員にどう接するべきかを調整することができるのです。

2.重要な仕事や意思決定を厭うことなく委譲することができる

部下に仕事を任せることは、効率的なリーダーシップの方法であるだけでなく、チームに対する信頼感の確立や、社員が経験値を高め、自信を得ることに寄与するものです。また、部下に仕事を任せることで、リーダーは率直かつ一貫性を持った評価を行い、社員のやる気を引き出し、その努力に対して報酬を与えることになります。親が子に後片付けをするようにしつける様子を考えてみてください。最初はゆっくりかもしれませんが、やがて子はスキルを身につけ、家庭内でいろいろ手伝いができるようになるのです。

3. 強い対人関係能力(インターパーソナル・スキル)を有する

有能なリーダーになるには、誰ひとり孤立させることなく、交渉を行い、仕事上の問題を処理することが求められます。そのためには、リーダーとしての共感力と、相手の視点やニーズを理解することが必要です。対人スキルを磨いたリーダーたちは、職場内で優しさを発揮し、あらゆる人と調和の取れた人間関係を構築できます。生徒、保護者、教師、教育委員会と同じように接することができる校長に出会ったことはありませんか?もしそうなら、彼らの人間力の高さを実感しているはずです。

4. 参加型のマネジメント・スタイルを採用する

優れたリーダーは、リスニングスキルやコミュニケーションを効果的に活用して、周囲を巻き込み、合意形成し、意思決定に影響を与えます。異なるスタイルを持つ2人の市長を例に比べてみましょう。片方の市長は参加型で、もう片方は独裁型です。当初、人間関係や協調性、幅広いコミュニケーション能力を重視する市長は、独立心がより強い市長に比べて、有能さに欠けるように見えるかもしれません。しかし、時間が経つにつれ、参加型の傾向がより強いマネジメント・スタイルを採用し、強力な対人スキルを持つ市長は、周囲に影響を与えながら重要な施策への支持を得ることができるようになり、優れたリーダーであり才能に溢れた行政官だと評価されます。一方、権威主義的な市長は、多くの政治的障害に直面し、非常に問題の多い人物とみなされます。

5. 建設的かつ効果的なフィードバックを行う

フィードバックを効果的に行いつつ、フィードバックを行う際に犯しがちな間違いを避けることは、リーダーの対人スキル向上における最良の方法の一つです。フィードバックを与えることで、部下たちは現状を知り、目標を再確認させ、強い努力を促すことができます。フィードバックをする場合、「一つのメッセージに絞る」「具体的な内容にする」「気配りをする」ことを重視しましょう。そして、相手の人となりではなく、実際にとった行動で判断することを忘れないでください。

人間関係の構築に長けていることは、単なる性格的特徴ではなく、リーダーシップ上の重要なスキルです。そして、一般的なリーダー(エブリデイ・リーダー)にとって朗報なのは、それらのスキルは誰もが向上することできるということです。

なぜ仕事上での対人スキルの構築が重要なのか

単なる業務成果だけでなく、対人スキルや人間関係を構築する能力の有無が、成功するエグゼクティブになることができるか否かを決めます。会社の観点で言えば、「良い人間関係は金なり」です。そして、会社が必要としている人材は、人間関係を構築できる人材です。

成功しないマネージャーを類型化し評価する研究によれば、彼らの最大の弱点は、人間関係を構築・維持する能力がないことであり、それが企業にとり最大の障害であると結論付けています。人間関係の構築能力が低く、インターパーソナル・スキルが弱いリーダーは、キャリアにおいて道を踏み外す危険性が高いことがあらゆる研究を通じて判明しています。

確かに、人間関係を構築し、発展させ、維持する能力を生まれつき有する人も存在します。しかし、成功できるエグゼクティブは、たとえどんなに賢くても、「自らの知識や経験を駆使すれば、対人スキルにおける欠点を補うことができるだろう」などという希望を抱いていません。対人スキルを備えることは、職場環境において非常に重要です。

強固な人間関係がなければ、リーダーはチームをまとめ上げる場合や、プロジェクトを達成する場合に苦労することでしょう。社員たちが同じ目標に向けて協力し合い、彼らの関係が良好であるという条件において、協力関係の構築こそが職場環境で有効な手段なのです。

協力体制、言い換えれば、協力体制により築かれる人間関係は、絶えず変化するグローバル市場において、エグゼクティブが自らの経営スタイルを適応させようとする場合の手助けとなることでしょう。

そして、人間関係は今後ますます複雑化することでしょう。これからの時代に求められるリーダーシップのスキルには、職場における「ソフトスキル」とかつて呼ばれたものが含まれます。なぜなら、ソフトスキルは職場における「真の」影響力につながるからです。また、影響力を「暗示する」役割にすぎない役職上の肩書きだけでなく、人間関係における強みによって、社員が上司に従い、仕事を成し遂げるために必要なことは何でもしようという気持ちにさせます。そのような特性を有することこそが、決断力を効果的に発揮でき、機知に富んだリーダーになることができる唯一の道です。

企業人として成功するにあたり、このようなソフトスキルは非常に重要なのです。

対人スキルを構築する方法とは

世界のエグゼクティブを対象とした調査によると、対人スキルは高く求められるスキルであり、同様に、対人スキルを向上させ、変化する企業文化の中でそのスキルを活用することも高く求められています。幸いなことに、対人スキルは習得することが可能です。

仕事上での対人スキルを向上させる3つのヒント

1. 自己認識を強化する

より効果的な人間関係を築くための第一歩は、現実的な視点に立ち、自らの能力を見極めることです。自己認識を高めるには、まず自分がどのように同僚たちと接しているか見つめ直しましょう。自らが同僚たちにどのような対応をしているかを評価し、同僚たちは身振りや言葉を使ってどのような反応を示すかに注目するのです。

こうしたことはオフィスに籠もっていたらできないので、自ら表に出ましょう。社員たちとアイコンタクトをとりましょう。他の拠点に散らばっている社員がいれば、会いに行きましょう。電話やメールに頼っていれば関係を築くことはできません。相手が来るまで待つのもいけません。また、画面上だけのコミュニケーションにとどまる場合は、バーチャルなコミュニケーションを可能な限り効果的な方法で行うようにしましょう。

この最初の評価によって、社員や同僚との立ち位置を把握することができます。自覚ができたら、弱点を取り除き、既存のスキルを強化するための継続的な取り組みを始めてください。

2. あらゆるレベルの人々と繋がりを持つ

人との関係は何もないところには生まれません。組織内のあらゆる種類の人々やあらゆるレベルの人々と関わりを持つ努力をしましょう。優秀かつ有能なマネジャーは、このようにすることで、社内の部下たちに対する視野を広げることができます。成功するエグゼクティブは周囲を巻き込むのに長けていますが、何よりもそれを始めるための人脈がなければ、他人を巻き込むことは不可能です。

人間関係は、積極的に耳を傾け、情報を共有することで生まれます。これは、良い状況でも悪い状況でも同じです。チームメンバーから直接情報を得ることによってのみ、エグゼクティブは意思決定を下す際や改革時において影響を受ける人々を巻き込むことができるのです。

耳を傾け、情報を共有し、企業の目的を広めることで、エグゼクティブは先を見越して解決策を見出すことができます。良好な人間関係は、ポジティブな方法による問題を対処することで築かれます。厳しい決断を下す場合でも、周囲を孤立させないポジティブな方法で伝えることで、より受け入れやすいものになります。最も優れたマネージャーは、合意点を見つける努力をし、どのようにすれば人の扱いがうまくなるかを知っているのです。

3. 対立関係が生まれることを認識する

最後に、最も実用的な対人スキルを構築する方法は、現実を受け入れることです。相反する状況を生まない決断や戦略は存在しないことを認識しましょう。優れた対人スキルがあれば、対立や意見の相違を最小限に抑えることができます。

また、当事者間で対立する可能性があるとしても、有能なリーダーであればその問題に対処することが可能です。彼らであれば、優れた対人スキルを活用して、状況を落ち着かせ対立状態を解決し、協調精神を築き上げることができるのです。