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柔軟な働き方が企業に求められる理由をプロが解説
目次
柔軟な働き方が企業に求められています。コロナ禍より前は企業において「柔軟な働き方」が求められるのは、あくまでケースバイケースの出来事でした。例えば、毎週火曜日に子供を学校に迎えに行くために早く帰らなければならない社員がいる場合、その社員は水曜日の残業によって補填したものです。
こうした対応は、コロナ禍前においては、原則ではなく例外的なことでした。なお、リーダー育成分野の権威であるCCL(Center for Creative Leadership)によると、当時は75%以上の会社でリモートで働く従業員の割合が10%に満たなかったとのことです。
コロナ禍のあおりを受け2020年に在宅勤務が多くの企業で導入されるようになって以降は、企業はリモートワークのようなより柔軟な働き方への適応を迫られました。企業文化や従業員の生産性に関する従来の考え方を変えなければならなくなり、必然的に企業に求められる柔軟な働き方の定義は転換点を迎えたのです。
そこで今回は柔軟な働き方について、企業に求められる理由、実現の方法、メリットについてを紹介します。ここで紹介する内容は、企業における人材育成のプロであるCCLが綿密なリサーチによって明らかにしたものですので、ぜひ参考にしてください。
柔軟な働き方が企業に求められる理由
柔軟な働き方が企業に求められる理由は、従業員のエンゲージメントおよび定着に影響するためです。
コロナ禍を経て、ビジネスにおける様々な面で変化が生じています。特にこれまでと違うのは、それが従業員主導のモデルであるということでしょう。従業員が交渉力を持つことはもう何年も目にしなかったことです。
パンデミックの際、組織の存続のために多くの労働者が長時間働きました。オフィスが閉鎖され、企業が収益を失っても、従業員の努力で危機を乗り越えてきたのです。おかげで生産性を高く維持することはできたのですが、逆に燃え尽き症候群も多く発生しました。
コロナ禍において持続不可能なペースで働き続けた結果、一旦立ち止まって、自分の人生やキャリアで本当にやりたいことは何かを自問するようになった人が多いのではないでしょうか。このように労働時間を増やすことが生産性の向上にはつながらず、どこかで糸が切れてしまうことに多くの人が気づいたのです。
2021年4月、米国労働統計局は400万人が辞職したと報告しました。これはいわゆる「大辞職(Great Resignation)」という現象で、多くの人が自分の仕事を見つめなおし、自分の人生に何を求めるのかに向き合った結果といえます。
彼らが求めているのは「柔軟な働き方」です。しかも、それはコロナ以前の柔軟性の定義に戻ることではありません。彼らは、いつ、どこで仕事をするかということに対して、企業側が考え方を一新してほしいと願っています。
彼らは在宅勤務をすることによって、重要なことに気付いたのです。まず、通勤の手間が省けた点、次にコストを大幅に削減することができたという点です。なかには、年間平均5,000ドル以上の節約になったという報告もあります。さらに生産性の向上も実感しました。
Envoy社が最近発表した「職場復帰に関する報告書」によると、調査対象となった従業員の約半数が、パンデミック後、「今後職場に柔軟な働き方がもたらされなければ、仕事を辞める」と答えています。ここでいう柔軟な働き方とは、在宅勤務とオフィスでの勤務を組み合わせたハイブリッドワークのことです。
実際、労働者の大半は、柔軟な働き方やリモートワークの選択肢が残ることを望んでいます。ある調査では、64%の労働者が、30,000ドル(300万円)以上の昇給よりも永続的な在宅勤務を希望しているという結果も出ています。企業が将来にわたって実績を向上させたいのであれば、柔軟性を持たせるべきかどうかではなく、どのように柔軟性を持たせるかが重要です。
参考:Employees have a vision for the future of work and it’s hybrid | Envoy
柔軟な働き方を企業が実現するために
柔軟な働き方を企業が実現するためには、各部署や部門のリーダーの働きが重要です。
各企業における柔軟性のあり方は、組織の業務内容や従業員からのフィードバックによって異なります。ハイブリッドワークを導入している組織もあれば、一定の基準で従業員に自分のスケジュールを決めてもらうようにしている組織もあります。
なお、ハイブリットワークについての詳細についてはこちらをご覧ください。
新たな働き方としてのハイブリッドワークとリーダーが採るべきアプローチ
柔軟な働き方とは、個人が上司と協力して、自分の立場や責任に最も適したスケジュールを決める機会を持つことを意味します。
新しい働き方を推進するのは従業員であるため、人事の幹部はプロセスの初期段階から従業員を巻き込んで検討する必要があります。従業員が在宅勤務やオフィス勤務についてどのように感じているかを調べるためにアンケートを実施している企業や、座談会を開いたり、上司とチームのミーティングを予定したりしている企業もあります。その目的は、生産性とエンゲージメントの向上につながる職場をどのように構築するかということです。
ハイブリッドやその他のフレキシブルな職場モデルへの移行が進むにつれ、公平性が問題となる可能性があります。なぜ同じ職場の同僚なのに、在宅勤務できる人とできない人がいるのかを理解しようとすればするほど、公平性をめぐる疑問が出てきます。
そのため、組織の方針には「役割ごとの基準」を盛り込むことが必要です。オフィス勤務が必要な仕事と、リモートでもできる仕事の判断基準を明確にしましょう。
また、従業員がいつどこで働くかにかかわらず、キャリアアップの機会やリソース、リーダーシップ開発への投資は公平に分配しなければなりません。従業員と密にコミュニケーションを取り、彼らの疑問に対処することで、信頼の文化を育むことができます。
柔軟な働き方が企業にもたらすメリット
柔軟な働き方が企業にもたらすメリットについて紹介します。職場環境に柔軟性を持たせることは、従業員個人にメリットがあるだけではありません。具体的には、以下3つのメリットがあります。
1.生産性の向上
従来ほとんどの組織では、従業員の生産性を最大限に高めるためには、現場にいる必要があると考えられていました。 しかし、The Conference Board(全米産業審議会)が2021年4月に実施した調査により、人事部のリーダーの6割が「コロナ禍でリモートワークが普及した1年の間で組織の生産性が実際に向上した」と回答しています。
2.採用力の強化
柔軟な働き方の実現は自社の魅力となり、新たな人材を惹きつけるのに役立ちます。
また、かつての企業は、物理的なスペースや快適な設備によって自社の魅力や文化を定義づけようとしていました。多くの企業がオシャレなオフィス、おいしいコーヒーやスナック、コラボレーション用の快適なワークスペース、珍しい内装などをアピールしていたのです。しかし、オンラインでの業務がメインになれば、必要性は薄れます。そこから捻出されたコストを、採用に投資することも可能となります。
3.エンゲージメントの向上
新しいバーチャルな環境下において人事部のリーダーは、社員の意欲と生産性を維持するために、どのようにリモートワークの文化を構築し、維持するかを改めて検討しています。
広いカフェテリアなどの特典よりも、チームワーク、コミュニケーション、エンゲージメントがより重要視されるようになった環境では、柔軟な働き方の実現が企業文化の差別化を図る鍵となります。
柔軟な働き方の鍵を握るリーダー育成
柔軟な働き方の鍵を握るのはリーダーをいかに育成できるかです。柔軟な働き方を通じて生産性を向上させ続けるために、リーダーはコミュニケーションとコーチングという2つの重要スキルを磨く必要があります。こうしたスキルは、リーダーが従業員との定期的なコミュニケーションをとる際に特に重要になります。その際には、以下のことが求められます。
- 「何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのか」を理解するために、アクティブリスニングのスキルを使う。アクティブリスニングについては、ぜひこちらの記事もご覧ください。
アクティブリスニングとは?コーチングに不可欠なスキルのトレーニング法 - 組織としてのニーズを伝える。
- 従業員のパフォーマンスに対する効果的なフィードバックを行う。
- 能力開発の必要性がある場合は、コーチングを行う。
重要なのは、柔軟な働き方の実現は一朝一夕にできることではなく、プロセスであることをリーダーが理解することです。
コロナのパンデミックは間違いなくこの数十年間で最大の混乱を招いた出来事です。今後、新しい働き方が浸透していく中で、組織は機敏に対応し、試行錯誤を重ねていく必要があります。
ビジネス環境が急速に変化し続ける中、従業員のニーズに対応し、前向きで成功する文化を確保するために、組織は意図して新たな能力を構築する必要があります。リーダー育成とあわせて、組織全体で柔軟な働き方を推進し、まだ見ぬ課題に俊敏に対応できるようにしましょう。
しかし、柔軟な働き方について、組織全体に対する取り組みとリーダー育成を同時に進行するのは困難と言わざるを得ません。
弊社「株式会社インヴィニオ」では、20年以上積み重ねてきた確かな実績と、世界中のアライアンスパートナーから得た最先端のノウハウを用いて、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットしています。事業上の成果として表れるように、人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化させることを重視しているのです。
柔軟な働き方の鍵を握るリーダー育成を行いつつ、実績および組織レベルそのものを向上させたいとお考えの場合は、ぜひこちらからお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人:インヴィニオ編集