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研修転移とは?学習転移との違いや方法をリーダーシップ開発を用いて解説
目次
研修転移とは、研修で学んだ知識やノウハウを「定着」させ、職場・現場で「実践」に活かして「成果」を生み出すことです。
人材不足が叫ばれるなか、組織を未来へとつなぐため各企業とも人材教育に注力しています。特にリーダーの教育・育成を重視する企業が多いのではないでしょうか。
ただ一方で、研修内容を数週間ひいては数年後にも参加者の心に残して成果につなげるにはどうすればよいか頭を悩ませている企業も少なくありません。まさに学びを成果に変える「研修転移」が重要なテーマとなっているのです。
そこで今回は研修転移について、学習転移との違い、研修転移の課題、研修転移を促進するためのポイントを解説します。さらに研修転移に有効なモデルと、研修転移の3フェーズについてもあわせて紹介します。
なお本内容は、リーダー育成分野の権威かつ専門機関であるCCL(Center for Creative Leadership)が40年にわたる綿密なリサーチに基づいた内容のため、ぜひ参考にしてください。
研修転移とは
研修転移とは、研修で学んだ知識やノウハウを「定着」させ、職場・現場で「実践」に活かして「成果」を生み出すことです。研修には、リーダーシップなど特定の能力を開発するプログラムも含みます。
研修や開発プログラムは社内で開催するにも社外へ参加させるにも、費用や労力、時間などのコストがかかります。組織としては掛けたコスト以上の成果を期待したいところですが、成果を十分に得られている企業は決して多くないのが実状です。
研修転移と学習転移との違い
研修転移と似た言葉に学習転移があります。学習転移とは、過去に身につけた知識やスキル、ノウハウ、経験などが、その後の別の学習へ影響を与えることを指します。
その上で、研修転移と学習転移の違いは主に2つです。
1つ目は、研修転移は研修や開発プログラムといった形式のみを対象としていますが、学習転移は学びを得るすべての場面を対象としています。つまり、仕事上での経験・体験など意図せず学び得た内容も含むのです。つまり、研修転移は学習転移の一例といえます。
2つ目は、研修転移は学びによるプラスの作用のみを対象としますが、学習転移は学びによるマイナスの作用も対象とします。マイナスの作用における例としては、日本語を学び得ているが故に、文章の骨格や語順が異なる英語の理解が阻害されるなどが挙げられます。
研修転移の課題
研修転移の課題について、ここでは特に課題とする企業が多い「リーダーシップ」を習得させたいケースを例として取りあげます。具体的には以下の通りです。
- 研修は学習の一側面に過ぎないということ
- リーダーシップやその開発は、常に周りの人や環境に左右されること
- リーダーがすでに責任過多の状態にあること
- 研修で学ぶことが最も重要なことと一致するとは限らない
- 学習の文化と業務運用の文化が相対すること
しかし、こうした状況においても、リーダーと組織が転移学習に関する課題を克服し、リーダーシップ開発への投資から大きな利益を得られるようにすることは可能です。
研修転移を促進するためには
研修転移を促進するためには、そもそも研修はプロセスであり、単なるプログラムではないと考えたほうがよいでしょう。リーダーシップ開発には、研修や能力開発プログラムなどがありますが、それは学習全体を構成するパズルの1ピースに過ぎず、それに対応するピースは仕事の現場の中に存在します。
研修で学んだ内容を職場で応用して、研修内容と職場を結びつけることの価値は、これまでの研究によって明らかにされています。組織の管理職の多くが、重要なスキル・行動・考え方を学び、リーダーとしての自分を形成させたのは職場での経験だと述べています。
調査によれば「上級管理職が成長の糧となったとして挙げた経験の内訳」をみると、「仕事上の課題が70%、周りの人が20%、形式的な研修やトレーニングが10%」でした。CCLは、この「70-20-10の法則」を学習体験を作り出すための公式ではなく、あくまでガイドラインと捉えています。ただし、これら3つのカテゴリーのすべてから学びを発生させることで得られる経験は、研修転移および学習転移を向上し、成長を加速させられることも確かです。
また、研修転移・学習転移は社会的なプロセスであり、研修によってのみ素晴らしいパフォーマンスが生まれるのではありません。ロールモデル、メンター、コーチ、上司からのサポートなどを含めた職場の環境こそが、学んだことをリーダーとしての行動に変える力に大きく作用するのです。
研修転移に有効なモデル|リーダーシップ開発を事例として
研修転移に有効なモデルを紹介します。CCLでは、大人の学習者に対する理解と経験をもとに、学習を定着させるためのホワイトペーパーを作成し、学習の転移のための「3×3×3モデル」を開発しました。このフレームワークは、リーダー育成の権威でもあるCCLが実施しているリーダーシップ開発に反映されており、御社内の開発プログラムやイニシアチブに応用していただくことが可能です。
CCLがリーダーシップの学習を定着させるために開発した「伝達学習における3×3×3モデル」は以下の通りです。
3つのフェーズで考える
学習は一度きりではなく、以下の3フェーズ(3段階)を経て時間をかけて行います。
- 準備フェーズ
- エンゲージメントフェーズ
- 応用フェーズ
この3フェーズについては、次の項目で詳しく説明します。
3つの戦略を使う
少なくとも3つのアプローチによって学習を深め、強化する機会を得るようにしましょう。
- リーダーシップの重要な課題
- クラス内のアカウンタビリティ・パートナー(研修の目的達成にむけて当事者として学ばせるためのサポート)
- 現場でのラーニング・パートナー(現場に戻ってから研修内容を実践に活かすためのサポート)
3人のパートナーを巻き込む
3者それぞれが責任を持って学習を提供および享受して、受動的な活動にならないようにする必要があります。
- 学習者または参加者
- 組織
- トレーニングの提供者
研修転移の3フェーズ
研修転移の3フェーズについて解説します。研修や能力開発プログラムの前後は、研修自体の内容や提供する方法と等しく重要です。その研修やプログラムの期間に関わらず、それが対面式でもオンラインでも、あるいは継続的でも一回限りでも重要さに変わりはありません。CCLは、個人や組織がリーダーシップ開発から最大限の効果を得られるようにするために「準備」「エンゲージメント」「応用」の3つのフェーズを定義かつ重要視しています。
以下では、リーダーシップ開発を事例に研修転移の3フェーズを解説します。
1.準備フェーズ
誰かをリーダーシッププログラムに指名したり、リーダーシップ研修に参加させようと思った時から、開発プロセスは始まります。
参加者がすぐに学習を始められるようにするにはどうすべきでしょうか。自分の「リーダーシップ経験・課題・ニーズ」について考えてもらうにはどうしたらいいでしょうか。どうすればそれらを研修の「目的・内容・価値」に結びつけることができるのでしょうか。
このフェーズでは、上司からのサポートが不可欠です。準備フェーズとは「学習の進め方」や「期待される項目」について十分なコミュニケーションを図るだけでなく、学習体験を自分のものにするための感情的なつながりを構築する時期でもあるのです。
また、研修やプログラムへの参加を学習者の「To Doリスト」のひとつとするのではなく、学習者自身の関心を引き、興味を持ってもらうチャンスとなる時期です。調査によると、参加者が上司やメンター、コーチと計画を立て、必要なサポートについて話し合い、そのプログラムが自分にどのようなメリットをもたらすかを理解できたときに、初めて参加者の開発体験が始まるといわれています。
CCLは、参加者が学習体験をするための準備として、主要な利害関係者へのインタビューのガイドラインを提供したり、コースの学習内容を応用するための課題を選択したり、学習者やその同僚に自身のリーダーシップスキルやスタイルについての評価を行ってもらったりします。それ以外にも、リーディング課題、過去の参加者が体験談を語る動画、教員によるウェルカムビデオやウェビナーなども用意しています。
2.エンゲージメント・フェーズ
学習体験の内容も重要ですが、その見せ方も重要です。ただ話を聞いたり、資料を読んだりするのはあくまで受け身の学習プロセスです。学んだ知識やスキルを定着させるには「応用練習」を通して参加者が関連性を見出し、自発的に取り組む、つまり実践に結びつけるためのエンゲージメントを行うプロセスが必要です。
CCLは、対面式でもオンライン研修でも、学習者が常にエンゲージメントできるよう、さまざまな方法で学習体験を提供しています。スキルアップ、アクションラーニング、振り返り、シミュレーション、体験型アクティビティ、目標設定、コーチングなど、さまざまなアクティビティを組み合わせましょう。
3. 応用フェーズ
研修転移には、実際の職場・現場でも時間をかけて強化とサポートを行うことが不可欠です。参加者が新しい学習を職場やそれ以外の場所で使用し、継続する機会をどのように作ればよいでしょうか。
行動の変化をもたらすためには、新しい概念を適用したり、新しいスキルを実践したりする場が必要です。新しいスキルを初めて使うときに見られるぎこちなさを克服できるようなサポートや奨励が不可欠なのです。
CCLは、実際の仕事上の課題に関連したアクションラーニングプロジェクト、新しい学習を既存のビジネス課題に結びつけるための会話、読書、ディスカッション、ツールキット、フォローアップ研修、目標達成に焦点を当てたバーチャルエグゼクティブコーチングなど様々なツールを活用しています。
研修転移を成功させてリーダーを育てるには
研修転移を成功させてリーダーを育てるには、今回紹介した「3×3×3モデル」を活用するのが有効です。
ただ、重要性は理解できたものの「実際に自社で実施するにはどうすれば良いのだろう」「本当に効果のある研修や育成を実施するために、より具体的なアドバイスが欲しい」という企業も多いのではないでしょうか。
弊社「株式会社インヴィニオ」は、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットしています。事業上の成果として表れるように、人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化させることを重視しています。
「研修をいかに成果にコミットさせるか」やリーダー育成に関して、お困りごと・ご相談などございましたら、ぜひこちらから何でもお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人:インヴィニオ編集部