爆速リーダーシップ開発
LEADERSHIP INSIGHT / CCL | 2021/12/21
目次
サラはグローバルに展開する大手銀行でタレントマネジメントのプロフェッショナルとして活躍しています。彼女は金融業界が過去10年間に経験した変化を目の当たりにしてきました。
市場における最近の急激な変化はサラを圧倒しました。規制だけでなく、従来とは違う市場への新たな参入者、DX(デジタルトランスフォーメーション)などがビジネスにさまざまな影響を与えており、銀行は組織の形を変え、さらなる合理化を余儀なくされています。
サラは、これらの変化がビジネスだけでなく、タレントマネジメントのプロフェッショナルとしての自分の存在意義にも見直しを迫られているということを理解しています。リーダーシップチームが打ち出した新しいビジネス戦略を見れば、新たなリーダーシップスキルと組織の文化の変革が必要だということは明らかです。
サラは、トレーニングに対するアプローチを見直す必要があると考えていました。リーダーシップとは、もはやトップに立つ個々のリーダーだけのものではありません。したがって、トレーニングも彼らだけに焦点を当て続けることはできません。そして、従来のリーダーシップ開発では、このように目まぐるしく変化する職場をサポートできないことを彼女はよく分かっています。
しかし、どうすれば古いパラダイムを変えることができるのでしょうか?求められる変革に対して賛同を得るにはどうすればいいのでしょうか?教育・開発予算を増やすことなく組織全体でリーダーシップ開発を加速させたり、重要なリーダーシップメッセージに沿った組織にしたりするにはどうすればよいのでしょうか。
リーダーシップ開発・リーダー育成方法をどう見直すか?
皆さんが置かれている状況は多かれ少なかれサラと似たようなものではないでしょうか?今日のビジネス環境では、すべての従業員が戦略を実行し、リーダーシップ開発を拡大・加速させる必要があります。
私達の調査研究で説明しているように、ここでいう「リーダーシップ開発を拡大・加速させる」の拡大とはトレーニングプログラムに留まらず、システム全体を見直す必要のある大規模な取り組みのことです。それを実現させるためには、組織全体で大きなコミットメントが必要です。
ここでは、人事・労務担当者がリーダーシップ開発の規模の拡大と加速を成功させるために推奨する3つのステップをご紹介します。
1.戦略と計画から始める
まず事業戦略を掘り下げるところから始め、戦略上関連するリーダーシップの推進要因(強みを生かすためにどのようなポジショニングを選択すべきか)を特定します。その上で、事業戦略がリーダーシップに与える影響を検討します。例えば、事業戦略が地理的な拡大を伴うものであれば、リーダーには短期学習能力、レジリエンス、そして分散したバーチャルチームを率いる能力が求められます。
往々にして、リーダーシップ開発を拡大する取り組みが、ビジネス戦略との整合性を欠いたまま展開されることがあります。このような事態を避けるために、リーダーシップ開発の拡大と加速を考える際には、どのようなビジネスの機会や課題をリーダーシップによって解決しようとしているのかをしっかりと見極めるようにしてください。
2.組織全体でリーダーシップ開発を拡大・加速するためのプロセスを構築する
戦略が整ったら、次は拡大をサポートするための学習の構造について検討します。そのためには、さまざまなレベルのニーズと、必要な投資を明確にすることが重要です。
幸いなことに、リーダーシップに関するライセンス化された教材や、業界の専門家による教材、外部業者によるコンテンツ配信、書籍、デジタル・コンテンツなど、今日ではさまざまな形態の教材が揃っています。
但し、それらは大抵の場合まとまりがなく、整合性に欠け、パッケージ化もされていません。学習内容を検討する際には、次のことに配慮するようにしましょう。
- 一極集中型トレーニングと地域分散型トレーニングのバランスをとる。
- 個々のリーダーを満足させるとともに、集団としての整合性をとる。
- 対面式とバーチャルの両方の手法を活用する。
- 簡単にできる解決策を提供する一方で、ゆっくりと問題に向き合う時間も十分に確保する。
成果をどのようにもたらすかに関わらず、戦略を成功に導くための重要なリーダーシップスキルについて、共通の言語を作成することが不可欠です。すべてのレベルの学習目標の中で、この取り組みを定着させるようにしましょう。
3.適切な人材とパートナーの活用
リーダーシップ開発を加速するためには、アウトソーシングとインソーシングを組み合わせることを検討してください。まずは外部のパートナーのサポートを受け、その後、社内のチームを巻き込むことも一つの方法です。より深く、より複雑な開発が必要な上級管理職など、特定のグループについては外部パートナーを活用し、その後、社内のリソースを活用して企業全体で開発を拡大していきましょう。
人事部の通常の社内トレーナー以外に、社内のファシリテーターを特定しましょう。また、重要なリーダーシップメッセージをチームに伝えることができるビジネスリーダーの参加も検討します。そうすることで、組織は社内のリーダーシップ開発の効果を最大化するとともに、チームメンバーに貴重な洞察を提供することができます。
例えば、CCLでは、あるクライアントの組織のトップに対する取り組みから始めました。上級幹部のために学習課程をカスタマイズ作成した後、組織の他の人にとって重要なリーダーシップスキルに焦点を当て、他のレベルのための具体的なソリューションを設計しました。
その後、組織内のファシリテーターを育成し、彼らが社内で研修を行えるようにしました。身近な人が自分たちのペースでリードすることで、重要なリーダーシップスキルを企業全体に拡大・普及させていくことができたのです。