Leadership Insight

部下や上司へのフィードバックに有効な「SBIモデル」とは?

LEADERSHIP INSIGHT / CCL | 2021/06/28

誰もが出くわす残念な状況

部下や上司に対してしっかりとフィードバックを行えているでしょうか。

とくに組織やチームに対して、ネガティブな言動や悪影響を与えかねない行為などがあった際には、いかに当事者へのフィードバックが行えるかが重要です。

ただ一方では「注意しにくいな」「どうフィードバックを行えば良いか分からない」などの理由でフィードバックをためらってしまうケースは少なくありません。

そこで今回は、リーダー育成分野の権威であるCCL(Center for Creative Leadership)が40年にわたる綿密なリサーチに基づき明らかにしたSBIモデル(Situation-Behavior-Impact:状況-行動-影響)を紹介します。実際にフィードバックに用いる手順についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

フィードバックが行われない背景

組織で業務にあたるなかで、部下や上司に対して以下のように考える場面はないでしょうか。

「なぜ、周囲に悪影響を及ぼすような言動を行ったのだろう」
「メンバーも厄介者ととして認識している」
「当の本人は気にもしていない、組織でのチームプレーには向いていないではないか」

組織やチームに属していれば、こうしたネガティブな感情を持ってしまうこともあると思います。そしてさらに、ネガティブ感情に基づいて次のような発想に至ってしまうこともあるでしょう。

「もう気にしないでおこう」
「他の誰かに任せてしまえばいい」
「とにかく責任を取らせよう」
「もう少しチーム内の規律を強化するか」

人は他人にがっかりさせられた時には、ネガティブな感情をめぐらし、相手の意図に関わらず無意識的に妄想を膨らませているケースは少なくありません。私たちは他者の行動を見て、「なぜそうしたのか」を知っていると思い込んで反応しがちなのです。

ただ妄想によるストーリー展開は、あまり生産的とは言えません。自分自身の頭の中でネガティブな感情を織り交ぜるよりも、有効な方法があります。

それは「当事者に尋ねること」です。 そして当事者がもたらした影響を知らせる唯一の方法は「当事者に伝えること」です。一見すると当たり前に思えることですが、実行されることは少なく、私たちは思い込みに基づいた誤解や行動のもつれの中で日々を過ごしています。

では、ある人がなぜ特定の行動をとったのか知るためには、どのようにその当事者と会話をすれば良いでしょうか?

そこで有効なのが「SBIモデル」です。

フィードバックに有効なSBI(状況-行動-影響)モデルとは?

SBIモデルとは、Situation-Behavior-Impact(状況-行動-影響)を示しており、状況(Situation)を明確に把握し、観察された特定の行動(Behavior)を説明し、当事者の行動が周囲に与えた影響(Impact)を説明するためのモデルです。

フィードバックを行う側の不安を軽減し、フィードバックを受ける側の防御的・否定的態度を和らげることが証明されています。

上司や部下と育成・開発プランを話し合う時にも非常に有効です。

リーダー育成分野の権威であるCCLが40年にわたって収集した膨大なデータに基づき開発したモデルで、世界では広く認知されています。

フィードバックでSBIモデルを活用する手順

SBIモデルを活用したフィードバックの手順について解説します。

1.状況(Situation)を具体的に特定する

まずは、フィードバックを提供したい相手が行動を起こした際の「状況」を説明してください。この際、フィードバックを受ける相手にとっての混乱を避けるため、「先週」などの曖昧な表現は避けてください。具体的には、日付や時間、場所、何の機会かなどを明確にしましょう。

悪い例:「こないだのミーティングで」
良い例:「今朝の午前11時のチームミーティングで」

2.行動(Behavior)を共有する

次に実際に観察した行動を説明してください。ここで重要なポイントは「事実」にフォーカスするということです。主観(意見や判断)を入れないように注意しましょう。あなたが観察した行動は周囲の人も観察しているはずです。

悪い例:「君の態度は失礼だった」
良い例:「チームに1か月の予算について話しているときに話に割って入った」

3.影響(Impact)を伝える

そして行動をとった結果を説明します。

「状況」と「行動」を正確に説明した上で、当該の行動について皆さんがどう思ったか、どう感じたかを伝えるため、聞き手はあなたが言っていることに耳を傾け、受け入れる可能性が高まります。

また、プラスの影響だった場合「幸せに感じた」や「誇りに思う」、「感銘を受けた」などの言葉は、相手の行動が良い影響をもたらしたことを強調します。

例:「私の提案に対して否定することなく、すぐに解決のために取組んでもらえた時には感銘を受けました」

反対にマイナスの影響をもたらした場合、「問題と思っている」や「少し心配している」などの言い回しを用いるとフィードバックを行いやすいでしょう。

例:「あなたは、私が少し間をおいて考えている最中に何度も結論を出すようにせかす行為を、他の人にも行っているのではないかと心配している」

SBIモデルを活用する際は、結果である影響(Impact)を伝えるだけにならないように注意し、状況(Situation)と具体的な行動(Behavior)に関する情報を用いて、会話が双方向になるように意識するとより効果的です。

もう1つの要素でより効果的なフィードバックを

SBIモデルには、もう一つの追加要素が存在します。それが「意図(Intent)」です。フィードバックを伝える相手がとった行動の背後にある「意図」について質問することで、より効果的なフィードバックを実現します。

つまり、フィードバックを提供するためのSBI(Situation-Behavior-Impact:状況-行動-影響)からSBII(Situation-Behavior-Impact-Intent:状況-行動-影響-意図)への拡張です。

4.意図(Intent)を確認する

当該の行動の裏にある意図を確認します。

これにより、相手が意図(Intent)していたことと実際にもたらした結果・影響(Impact)の間にあるギャップに注意を向けさせることが可能です。

例:「その行動を取ることで何を達成したいと思っていましたか?(何が達成できると思っていたのですか?)」

意図と影響を明確にする会話は、信頼と相互理解を深めます。そして「すぐに改善できる点は何か?」といった解決策に関する議論が開始されることで、コーチングのスタート地点にもなりうるのです。

効果的なフィードバックを行える人材を育てるには?

SBIモデルまたはSBIIモデルを意識して相手にフィードバックを与えることで、より本質的なレベルでのコーチングが可能となります。

相手の行動を褒めると言ったポジティブな場面だけではなく、業績評価や懲戒に関する会話の中でSBIモデルおよびSBIIモデルを用いることで、相手がフィードバックを受け入れやすくなり、解決策の立案と実行に向けて前向きな態度を生み出せるのです。

ただ、効果的なフィードバックを行えるようになるためには、知識だけでなくリーダーとしてのマインドや、実践的なコミュニケーションを想定したスキルやノウハウの習得が欠かせません。

弊社「株式会社インヴィニオ」は、知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットしています。事業上の成果として表れるように、人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化させます。

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この記事を書いた人:インヴィニオ編集部