Leadership Insight

従業員の目標と組織の目標を整合させ、帰属意識と意欲を向上させる

LEADERSHIP INSIGHT / CCL | 2022/08/17

組織の目標は、それが日々の業務にどのような意味を持つかを理解するだけでなく、従業員が自らその目標にコミットしていると感じることで、現実のものとなる。

パーパス・ドリブン型企業の特徴には、企業が社会のニーズを満たす点以外に、従業員が自らと企業の目標との繋がりを感じることを通じて、より献身的に働くという点があります。明確な目標を設定することにより、従業員は自らの仕事と組織がより広範な影響力を有することを認識できます。こうした関係性は、従業員が自らの存在よりも大きなものの一部であるという所属意識を高め、共通の目標を達成するためのモチベーションを高めることになります。

パーパスフル(目標を持った)リーダーシップに関するCenter for Creative Leadershipの研究によると、従業員の個人的な価値観や目標が企業の目標と合致し、従業員がより大きな課題や価値と共鳴する場合、従業員が全身全霊で仕事に打ち込むようになり、仕事への取り組み度合いをより深めることができることがわかっています。

ここでは、従業員の目標と組織の目標を強く結びつけるために、リーダーが備えるべき3つの責務を紹介します。

1.     目標が有する「パワー」を信じる

タレントマネジメントに関して言えば、外発的動機づけ(報酬などの外的インセンティブに基づく行動)よりも、内発的動機づけ(個人的な満足感や楽しみに基づく行動)がより強力であることが証明されています。毎日、目的意識を強く持ち仕事に取り組む従業員は、自然とより高い充実感が得られ、より積極的に仕事に取り組むようになります。組織は、従業員のキャリアプランの各段階において意図を持って目標を設定するという形により、目標の持つ力を引き出すことができます。これにより、組織は従業員個人の目標と会社の価値観を関連付けし、従業員が自らの目標を特定し実現する手助けを行うことができるようになります。

このコンセプトを具現化した例として、インドに本社を置くグローバルIT企業TCSのオリエンテーション・プログラムが挙げられます。TCSの新入従業員は、最初の顧客として非営利団体とペアを組みます。新入従業員はそれにより、給与の範囲を超えて「より大きな」目標の達成に貢献しているのだと理解できるようなります。同社はその他にも、非営利団体の理事会への参加、無償プロジェクトでの陣頭指揮、コミュニティサービスの主導など、従業員のキャリアを通じてさまざまな活動に参加することを推奨しています。同社は、「従業員は一度きりのボランティア活動をはるかに超えた、より大きな目標を実現させる自由を有するべきである」とする理念を掲げています。

リーダーが組織の中で目標を与え、帰属意識や意欲を育む方法は数多くありますが、その出発点は、目標により従業員が自信を持ち、変化を起こす可能性があると信じることです。

2.     目標を定義する際にはオーセンシティ(ありのままの姿)を堅持する

組織の目標は、組織のウェブサイトや受付の壁に掲げられる社是よりも、はるかに大きく重要です。目標を実現する第一歩はインサイド・アウト型のアプローチであり、リーダーたちが有言実行することで示されます。漠然とした目標は「グリーンウォッシュ(見せかけの環境対策)」や「パーパスウォッシュ(行動が伴わない目標設定)」に転換する可能性があります。「グリーンウォッシュ」や「パーパスウォッシュ」であることが露見されると、従業員がやる気を失い、組織がブランドイメージに取り返しのつかないダメージを被る場合があるのです。

組織の目標とは別に、個人が真の目標を探求する場を提供することは、信頼関係を構築し、究極的には、意欲的な従業員を確保する上で大きな役割を果たします。組織の目標と従業員の目標が食い違う場合、人事担当者は積極的に心を開いた対話をすべきです。その結果、その従業員が他の組織の目標の方が自分に合うと感じ、転職する可能性もあります。一方、従業員の意見を聞くことで、組織の今ある目標設定に影響を与える可能性もあります。

例えば、自動車会社のベテラン従業員が、所属企業とは異なる価値観や目標を持っていれば、その会社の環境面、社会面、ガバナンス面の理念を変えるきっかけとなる可能性があります。組織は、そのような意見提供を重視し、評価しなければなりません。

3.     目標にまつわるストーリーを示し、目標にリアリティを持たせる

目標を中心に据えたナラティブ(物語)は、従業員が自分の貢献や個人の価値観を組織全体の目標と結びつけるのに役立ちます。自らがそのストーリーの中で役割を担うことを実感することで、帰属意識と一体感が育まれます。それは、各従業員がより大局的な環境の中で役割を担っているという感覚です。

組織的なストーリーテリングを実践している例として、インドのコングロマリット、マヒンドラ・グループがあります。同グループは、「RISE」というグループの哲学にまつわる中核的な目標を設定し、目標に関連した全てのイニシアティブの活動の中心に据えています。RISE哲学では、企業は「コミュニティ」を、個人、仲間、社会グループ、地球など、すべてのステークホルダーを含む最も広い意味で解釈しています。RISEは、コングロマリット内の各事業グループが、それぞれの目標達成に向けてどのように「活動すべき」なのかを定義する指針となります。

組織における目標を組織のストーリーの「主人公」として掲げることで、従業員たちは、所属部門の垣根を超え、目標達成のための仕事を重要視し、決められた目標を達成するという団結の下、部門を越えて協力し合えるようになります。組織の目標に基づく原則に導かれ、それに沿って行動することで、さまざまなレベルの従業員が、すべてのステークホルダーに利益をもたらす意思決定を行うことができるようになります。

個人の貢献を、より大きな目標とつなげる

個人のコミットメントを真に引き出すには、目標が目に見える形で戦略的優先事項に組み込まれていなければなりません。つまり、目標が従業員と従業員個人の願望や課題と感情的に関連付けられている必要があります。従業員の目標と組織の目標が合致することで、リーダーは、各従業員が自身の貢献がより大きな目標達成に繋がることを感じるようになり、その結果、グループとしての帰属意識と意欲が育まれます。