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経営幹部育成プログラムにおける効果的な“リーダーシップ開発”とは?

目次
高校や大学における学校教育においても、企業内での経営幹部育成においても、優秀な人材を確保して育成するだけのプログラムはもはや過去のものとなりました。いまでは、プログラムが終了した後でも地域コミュニティや企業活動の現場での活躍を通じてリーダーたちが成功することを指標とすることが当然になってきています。
新たに開発したハードスキルを組織に持ち帰るだけではなく、しっかりとした対人スキルを備えてこそ、他者に良い影響を与えてパフォーマンスを上げることができるということは経験則でも研究でも実証済みです。そのような経験・研究のベースがすでにあり、成人学習者向けのプログラムを設計する大学や専門学校の管理者は、技術的なスキル(ハードスキル)の向上と同時に、人間力(対人スキル)を育むリーダーシップ開発カリキュラムを組み合わせた総合的な教育を提供しようとしているのです。
しかし、教育機関の人的・財政的資源が限られているため、ソフトスキル・トレーニングを既存の大規模なプログラムに組み込むことが難しい場合も少なくありません。特に、学校や教育機関には、プログラム全体のマーケティング、地域社会での展開、既存顧客の維持、バーチャル配信に対する学生の期待に応えるための新しいテクノロジーの導入や統合など、多くの優先事項があるため、魅力的なリーダーシップ開発カリキュラムを独自に設計することは容易ではありません。
そこで、今回のコラムでは、高等教育におけるリーダーシップ開発の専門家より、数十年にわたる経験に基づき、リーダーシップ開発カリキュラムを幹部教育や継続的な教育プログラムにしっかりと組み込むための、4つのベストプラクティスに基づくガイドラインを共有したいと思います。
大学がリーダーシップの短期コース、リーダーシップ認定プログラム、ワークショップ、資格認定プログラムなどを検討している場合でも、これらのガイドラインを取り入れるだけで、リーダーシップ開発カリキュラムを組み込むことができ、プログラム(およびその卒業生)を将来の成功に向けてサポートすることができます。
効果的なリーダーシップ開発カリキュラムを導入するための4つポイント
1.研究に裏打ちされたリーダーレベルの教育を開発する
ほとんどの高等教育機関・企業では、特定のリーダーレベルのみを対象とした継続的な教育や幹部教育プログラムを提供しています。しかし、リーダーシップ開発プログラムのカリキュラムは、各リーダーレベルで直面する共通の課題や、異なるスキルを考慮していないことがあまりに多いのです。より効果的にするためには、一般社員からチームリーダー、事業部門のリーダー、組織全体のリーダーに至るまで、各リーダーレベルに合わせて、研究に裏付けられたツールやリソースを開発のカリキュラムにとり入れる必要があります。
例えば、初めてマネジャーになった人は、自分自身で仕事をこなすことから、他の人を通して仕事をこなすことへ移行する方法を学ばなければならないという点で、特異な課題に直面します。自分自身のパフォーマンスに焦点を当てるのではなく、チームがどのように協力し、献身的に取り組んでいるか、個人のモチベーションやニーズが仕事や組織とどのように結びついているかを考慮しなければならないのです。
新任マネージャーが身につけるべき能力は、経験豊富なエグゼクティブが必要とするシニアリーダーシップスキルとは異なるのです。
皆さんのプログラムの受講者のリーダーレベルのニーズに合わせたリーダーシップ開発カリキュラムを組むことで、より効果的で、魅力的で、インパクトのあるプログラムが提供できます。
2.リーダーシップ能力アセスメントを活用する
エグゼクティブ・プログラムや継続的な教育プログラムでは、リーダーシップ・スキルのギャップや改善の機会を特定するために、アセスメントを利用することができます。これらの能力は、個人、チーム、および/または組織のスキルを評価することができます。この定性的データは、プログラムの成功をベンチマークし、評価するために非常に重要です。
例えば、人工知能に特化した経営者教育プログラムを持つ大学では、成人学習者がすでにどのようなリーダーシップ能力を持っているのか、また、今後どのような能力開発を目指すべきかを判断するために、360度評価を利用することがあるでしょう。
もし、AIエンジニアの集団が、変化に俊敏かつ柔軟に対応する能力に大きく欠けていることが評価されれば、大学は、変化を通じて人々を導くスキルや学習の俊敏性を高めることを目的としたワークショップを取り入れることができます。
教育機関は、リーダーシップ開発カリキュラムを提供する機関と協力し、組織独自の状況、受講者層、提供するコースに合わせてカスタマイズした能力評価を作成し、成人学習者の強みと開発すべき分野を重要度順に理解できるようにしておくべきでしょう。
3.拡張性があり組み合わせ可能な、ダイナミックなリーダーシップ・ジャーニーを、バーチャルとリアルの両方で実現する
2020年の世界的なコロナの大流行を受け、組織があらゆるものをバーチャルに移行したことで、対面式のイベントや体験は必ずしも必要でないことに多くの人が気づきました。成人学習者や企業経営者は、資格を取得するために、特定の時間数分キャンパスに来る必要はないと認識するようになりました。
それに伴い、大学も、人材育成は一度きりの経験ではなく、旅のように長い過程で行うもの(ジャーニー)であると捉える方向にシフトしていったのです。
そして、効果的なリーダーシップ開発プログラムのカリキュラムを設計するため、成人学習者に実社会での経験と教室での経験という、複数のタイプの学習を組み合わせて提供するとなれば、このように長い過程で実施することが成功のためには非常に重要です。
他のクラスと同様、リーダーシップ育成カリキュラムは、コースリーディング、ウェビナー、ディスカッションスレッドに加え、ビデオ学習としてクラスでのライブディスカッション、小グループごとの活動、講師とのオフィスアワー(講師とオープンにディスカッションができる時間)など取り入れると、最も効果的であると言えます。
これらの体験は、参加者が「オフィスから出る」時間を減らすだけでなく、持続的なリーダーシップの育成を可能にする、より豊かで実りある教育に繋がります。
教育機関は、拡張性のあるオプションを活用することで、さまざまな顧客や学生層に学習機会を提供することができます。これは、ゼロから設計するために必要なリソースを削減し、複数のソリューションをバンドルとして、または「組み合わせる」ことで内容を多様化させることができます。例えば、業界最先端の研究に基づくプレゼンテーション、教室用ポスター、ファシリテーター用ディスカッションガイド、参加者用ワークブックなどの既成のワークショップキットを使うことができ、さらに、コミュニケーション、影響力、自己認識、変革を通じて人々を導くことなど、さまざまなトピックに関する短期コースや対象を絞ったリーダーシップワークショップを学習者に提供することができるのです。
4.強固な戦略的パートナーシップを構築する
雇用主は、現在の従業員や応募者のスキルや能力のギャップを認識したとき、そのギャップを埋めるためには近隣の大学などと提携してエグゼクティブ教育プログラムを開発する必要性を感じるものです。
同時に、専門学校や大学はターゲットとする市場を特定・精緻化し、共通する集団と強いつながりを持つ組織との関係を構築することができます。
例えば、アメリカ中西部の大学が酪農や製造業に特化した経営者教育プログラムを作ろうとした場合、まず地域の大きな酪農協会や製造業協会と戦略的パートナーシップを構築するといったことがこれに当てはまります。
この場合、各協会は、経営者教育プログラムのコースと修了証プログラムを、将来の主要な学生層や卒業生の雇用主である個人経営の酪農家や家族経営の製造業者や販売業者に提供することができます。一方、大学側は、資格取得プログラムの実施と卒業生との関係構築に専念することができます。この戦略的パートナーシップにより、両者は事業範囲を拡大し、ビジネスを加速させることができるようになります。
このように、大学は、近隣の雇用主やその他の組織と提携することで、成人の学習者の将来と地域社会の経済的健全性の両方に即効性のあるエグゼクティブ教育を設計することができるのです。
また、このような大学は、リーダーシップ開発カリキュラムを組み込んだ経営者教育プログラムを設計することで、イノベーションを推進し、組織の文化と戦略を形成するために必要な人間力を備えた専門家をより多く輩出しています。この強力な組み合わせにより、熱心な卒業生と深く豊かな人材供給源を築くことができるのです。
事前チェックリスト
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