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ハイブリッドワーク、リモートワーク・カルチャーを構築し、維持する方法

目次
バーチャルでも企業文化を醸成するためのヒントとは
どの企業にも独自の文化があることは言うまでもありません。企業文化は、自らの強化に繋がる信念、慣習、行動様式を有し、組織のアイデンティティを形成するものです。
リーダーは、「うちの会社でのやり方」(the way we do things around here)を知り、その定義が必ずしもわかりやすいものではないにせよ、企業文化を理解することができます。そして、企業文化がそこ働く人々ののエンゲージメントに影響を与え、同時に、他の人と協力して仕事を進める手法に影響を与えることを理解しているのです。
しかし、日常的な社員の交流が一変させられたらどうでしょうか。コロナウイルスの世界的な大流行とその経済的余波の影響を受けて、世界中でかつてないほど多くの労働者が、自宅で仕事をするようになりました。会議室でのミーティングも、廊下でのカジュアルな情報交換も、井戸端会議も、すべてバーチャルになりました。労働者は新しいコミュニケーション方法とコラボレーション方法に適応することを余儀なくされました。そして、オフィスが再開され、しかし、一部の社員しか戻ってこない状況となり、ハイブリッド型の職場環境という新たな現実が始まったのです。
その結果、かつて人々が物理的な空間を共有することで日々強化されていた文化的規範が変化し始めたのです。
企業文化への影響
企業文化は常に進化します。コーチング・プラクティス担当のAndre Keilによると、それゆえ、企業が自らの企業文化を定義するのが難しくなりました。そして次のように言います。「企業文化には、目に見える部分と目に見えない部分とがあります。そして、本来採るべき手法と、実際に採られる手法があるのです」。
その過程で、見返りを得られる行動もあれば、罰せられる行動もあります。「仮にリーダーがルール違反をし、そのリーダーが罰せられることなく、その行動を続けるところを他の従業員たちが見れば、その行動が“当たり前のこと”として受け止められ、企業文化の一部となる可能性もあります」とKeilは言います。
どの環境でも、社員が許容される行動が何かを判断し、新たな企業文化の規範を確立するために自らの行動を適応させることで、企業文化は変化します。
コロナのパンデミックとその余波はその好例です。人々の働き方の変化を促進させ、新たなビジネスの進め方を確立せざるを得なかったからです。リーダーたちはこの機会を捉え、リモートワークという新しい企業文化の規範の確立に取り組まなければなりません。
「もし、リーダーが関心を持たなければ、社員たちは自らのやり方を確立してしまう。その意味では、リーダーは影響力それほど大きくないのです」とKeilは言います。
ハイブリッドワーク、リモートワーク・カルチャーの構築と維持
リーダーのための5つのヒント
1. 高度なコミュニケーションで信頼関係を育む
バーチャル環境での企業文化の構築は、信頼関係の構築から始まります。チームが互いに信頼しあうことで、より協力的になり、共通の目的に向かって協調することができます。信頼関係と率直な対話は、オープンで率直な対話に代表される組織文化の屋台骨になります。つまり、より高度なコミュニケーションが行われれば、より強固な組織文化が生まれます。
しかし、バーチャルで行われる会話では、重要な文脈やニュアンスが失われる可能性が多いです。その結果、人間関係が悪化し、(リモート)ワーク・カルチャーも悪化します。
在宅勤務の社員や他の場所で働く社員を統率する立場であるなら、自らのバーチャルコミュニケーション能力を改善することが重要です。1対1で会話する機会を設け、直属の部下がどのような状況に置かれているのか、何を感じているか、彼らにとって重要なものは何かを確認しましょう。
Keilは次のように言います。「リーダーは、問題を解決したり、課題に足を踏み入れたり、指導的になりたがる傾向があります。しかし、直属の部下とオーナーシップ(当事者意識)築くには、『この環境において、どうすれば一緒に働くのがベストなのか』『どのようなコミュニケーションの取り方が最適か』『どのような支援が必要か』といった質問を直属の部下に投げかける必要があります」。
部下と話をするときは、真実、気持ち、価値観に耳を傾けるようすべきだとKeilはアドバイスし、さらにこのように言います。「もし、仕事一筋のリーダーで、突然リモートワークの社員を統率することになった場合、コミュニケーションにおいて事実のみに焦点を当てようとする気持ちを抑えましょう。部下の気持ちや価値観を見落とす可能性があるからです。これらの要素は、部下のやる気を出させ、行動を促すものです」。チームメンバーにとって最も重要なことを知るために、バーチャル空間では特に傾聴力が威力を発揮します。
会議では、誤解を避け、不明な点を明らかにするために、部下たちに聞いた内容を要約させましょう。また、頻繁に質問を受け付け、積極的に発言させることで、心理的安全性を高め、部下が発言しやすい職場環境を作りましょう。
2. 適切なコミュニケーション・チャンネルを使う
Keilは、経営者たちをコーチングする中で、今や毎日がバーチャル・ミーティングに明け暮れてしまうリーダーたちから、多くの不満を耳にしています。
Keilは次のようにアドバイスします。「会議の予定を立てる前に、それが本当に最適なコミュニケーション手段なのかを考えてください。会議疲れ(meeting fatigue)が多発しています。これは、1日中ビデオ会議やウェブ会議に忙殺されることから生まれるものです。他の仕事をする時間が十分にとれず、過労や燃え尽き症候群に繋がります」。
この機会に、社員と話し合う機会を持ち、彼らが好むコミュニケーションの手段を把握し、全員が従うことが可能な基準を設定しましょう。メールが適切な場合、電話が良い場合、チャットが適切な場合など、基本的なルールを決めるのです。例えば、最新情報を共有するにはメールが適しており、問題解決にはZoomのようなインタラクティブなツールが適していると判断した組織もあります。どのようなバーチャル・コラボレーション・ツールやアプローチが最も効果的かをチームメンバーと検討し、話し合いましょう。
このようなガイドラインができれば、最新情報を共有するためにオンライン会議が必要だと即決することは少なくなることでしょう。メンバー同士が離れているチームをまとめる方法については、バーチャルチームとバーチャルミーティングをマネジメントするためのベストプラクティスを参照してください。
3. 積極的に対立を解決する
多くの変化が一度に起こり、コミュニケーションが希薄になると、部下たちは答えのない問題をどのように処理してよいのかわからなくなるケースが多くなります。
「オフィスで対面で働いているときは、このような状況は起こりにくいのです。廊下での会話が多くなり、そこで懸念点や疑問点が明らかになり、リーダーがそれを耳にし、対処できるようになるからです」とKeilは言います。しかし、自宅で仕事をしていると、従来の「井戸端会議」を通じた自然なやりとりが失われます。
Keilは次のように言います。「われわれの研究によると、リーダーたちはコミュニケーション不足になりがちであることが明らかになっています。バーチャルな環境では、感情を抑えきれず、ネガティブな発言が飛び交い、不安の解決が難しくなります。可能であれば、チーム全体に対立状況に対処しているのだというメッセージを出すことを避け、個人レベルの会話にとどめましょう」。
リーダーにとり、危機に直面したときはコミュニケーション能力を向上させるときでもあります。その意識があれば、部下たちもそれに追随するようになり、企業文化が強化され、安心してバーチャルなコミュニケーションができるようになります。
同僚と廊下でおしゃべりをすることはないでしょうから、最新の状況を確認するためだけに会話をする機会を設けるように努めましょう。そこでは会話の目的を明確にしましょう。そのようにすれば、直接顔を合わせることができないバーチャルな環境であっても、リーダーは気軽に会話をする意思があることを示すことができます。
4. 役割、責任、成果を明確にする
バーチャルな職場環境での課題のひとつは、実際に働いている姿を見ることができない中でも、全員が自分の力を発揮していると信頼できるかどうかです。
彼は、リーダーは自らの仕事と成果を出すことに集中し、社員が助けを必要とする場合は連絡を取るよう求めるべきだとアドバイスします。「リーダーは成果を挙げつつ、いつでも対応可能な状態でいること、そしてきちんと仕事をこなしていることを明示しなければなりません。内向的な性格で、すべてをうまく処理しているにもかかわらず、そのことを内に秘めていれば、部下たちの間で根も葉もない話が立ち上がり、リーダーが本当に頼れるのか疑い始めるでしょう」。
バーチャルな距離を埋めるためには、タイムリーに電話やメールを返すようにしましょう。適切な期限を設定し、それを守りましょう。また、タイムリーに返事ができない場合でも、できるだけすぐに別の機会を設けるようにしましょう。
リーダーとして、自分の役割が何か、そして部下たちに何を提供するつもりかについて明確にすることで、一貫性のある風土を構築することができます。自分たちの仕事について具体的に説明し、口頭で合意したことは文書でフォローアップしましょう。これは、リモートマネジメントで特に重要です。
5. 境界線を設定する
「『しっかりした垣根はよい隣人をつくる』(fences make good neighbors)という言葉があります。もし全員が自分の役割と責任を明確に理解していれば、それはチームにとって大きな助けとなり、より明確な会話につながるのです」とKeliは言います。
役割と責任を明確にすることに加えて、チームメンバー全員が自分の勤務時間を管理できるような境界線について議論しましょう。
Keliは次のように付け加えます。「多くの社員が自宅で仕事をする場合、あたかも休みなく仕事をしているかのような社員や、プライベートと仕事をどのように区別すればよいのか悩んでいる社員もいるのです」。
部下たちと、勤務時間やレスポンスタイムに関する希望について、そして、彼らがどのような『バランス』を大事にするのかを話し合いましょう。これらのことはパーソナル・レジリエンスに影響を与え、リモートワークの職場文化の感じ方と密接に関係します。これらの期待値が明確化され、尊重されれば、その期待値がバーチャルな企業文化や規範の一部となります。
以上のステップを踏むことで、職場で集まることがないリモートワークの職場環境であっても、組織における連携を強化し、社員同士の信頼関係を構築することができます。
この記事を書いた人:インヴィニオ編集部