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変化と混乱の時代においてリーダーシップへの信頼が問われる理由

目次
COVID-19のパンデミックが発生し、組織が進むべき新たな道を模索する中で、変化のスピードは加速度的に高まっています。リーダーは、絶え間なく押し寄せる混乱に適応し、新しくかつ革新的な方法でチームをリードする準備をしなければなりません。
オフィスで対面で部下のマネジメントをする場合であれ、リモートによるチームマネジメントであれ、あるいは一般的になりつつあるハイブリッド型の職場環境であれ、リーダーにとり重要なことは、部下との信頼関係を築き、それを維持することです。リーダーシップの信頼性は、社員とその組織が絶え間ない変化の中で柔軟さを発揮し、その変化に適応し、前進していくために必要となる安定した土台となります。
信頼関係を築くための行動とは、まさに変化の中でマネジメントする行動なのです。信頼関係を築くことで、チームが不確実な状況に飛び込み、自信を持って未知のものを克服することに専念し、変化を学び、成長し、共に素晴らしい仕事をする機会として受け入れることができるようになります。
そもそも「リーダーシップへの信頼」とは何か
信頼とは、「疑いをもって信念を曲げることをしない」という意味です。職場において、社員たちが相手の意図や能力、組織の方向性や実行力を疑う、あるいは、最も重要なことですが、自分に課せられた要求についていけるかどうか自分自身の能力を疑うようでは、彼らは最高の成果を挙げることはできません。このことは、複雑な変化と不確実性を抱える今日の環境では特に顕著であり、社員たちはより少ない人数でより多くのことをこなすことを求められています。
リーダーシップへの信頼は双方向的であり、段階的に築かれるものです。相手の信頼を得るためには、リーダーもまた相手に対する信頼を示す必要があります。このような関係性は、長い時間をかけて構築され、チームや組織が速いペースで進む世界で行動を起こすために必要となる信頼関係を維持することができるのです。
われわれの研究を通じて、組織における信頼関係の構築が必要であることが浮き彫りになりました。信頼関係が強い環境では、社員は能力を発揮し、最高の仕事をすることができます。高い生産性を生むエネルギー、創造性、スピード、そしてより良い成果をもたらします。共通の目的に向かって一致団結し、リスクを恐れず、お互いをサポートし合い、率直で誠実なコミュニケーションをとることができます。
効果的にリーダーシップを発揮するには、個人、チーム、組織全体のいずれにおいても、信頼関係を築き、維持する方法を知る必要があります。
絶えず混乱が続く時代にリーダーシップへの信頼を構築する
変化の等式(change equation)の問題に対処し、リーダーシップへの信頼を最大化する
混乱期において効果的にリーダーシップを発揮するには、厳しい環境の中でリーダーシップへの信頼を創り上げる能力が必要です。組織では、2つの側面から変化が起こります。
- 構造的側面:外的現実およびその現実に対処するために必要な業務システムやプロセスの変化(例:世界的なパンデミックに対応するための組織の再構築)
- 人的側面:社員たちが新たな現実や業務プロセスに対して考え方、行動、文化を適応させる際に避けては通れない内面的および心理的変化
構造的側面の変化に対処するため、リーダーは、強みを活用し、組織全体のコミットメントを生み出す必要があります。そして、人的側面の変化に対処するため、リーダーは社員と感情を通わせ、彼らが変化のプロセスのどの段階にいるかを認識し、レジリエンス、好奇心、思いやりを持つことの模範を示さなければなりません。信頼関係は、非常に具体的な方向性に沿って、ときには逆説的に感じることもある、変化の等式におけるこの2つの側面のバランスを取ることで、構築されるものです。
リーダーシップとはEither/OrではなくYes, Andである – パラドックスのバランスを取り信頼関係を構築する
リーダーシップは、しばしば正解のない選択を迫られます。
例えば、組織変革の最中に、リーダーは行動を起こさなければならないという緊迫感を伝えるべきか、それとも社員が変革を理解し、適応していくのを忍耐強く見守るべきなのでしょうか。また、来たるべき課題に対して、楽観的な見方を示すべきか、それとも現実的な見方を示すべきでしょうか。
現実には、今日のリーダーには、どちらか一方だけを選択する余裕はありません。リーダーシップへの信頼を構築し、共に前進していくためには、両方選択する必要があります。これが、パラドックスまたは両極端(polarity)の難問と呼ばれるもので、双方の視点を明確に捉え、同時に、そのバランスを取りながら信頼を構築する能力が必要です。
リーダーは、変化の構造的側面と人的側面のどちらかに対処するという単純な方法をとる余裕はありません。そのかわり、「yes, and」アプローチに焦点を当てることによってのみ、変化における目標に向けて効率よく前進することができます。
われわれのプログラムで一緒に働くリーダーたちは、パンデミックの間、私生活でも仕事上でも、信じられないほどの数の混乱に直面しました。彼らは疲れきることもある中、このような混乱期にあっても、組織に変化をもたらし続ける必要があることを理解しているのです。
リーダーたちはチームを信頼し、迅速に行動することが必要であり、そのためには信頼関係が必要です。チームは信頼のスピードで動き、組織全体はチームのスピードで動くのです。
これこそ、「yes, and」型のリーダシップの一つです。
リーダーシップへの信頼を創り上げるために対処すべき6つのパラドックス
われわれの研究によると、変革期や移行期にリーダーが信頼を築き、維持するためには、6つの重要なパラドックスを把握する必要があることがわかりました。オンラインによるLeadership Development Program(LDP)®の参加者は、われわれのLeadership Paradox Wheelというツールを使って、これらのパラドックスを探究していきます。
この輪を使うことで、リーダーが直面する不安を認識し、常に両者を念頭に置きながら、特定の場面で一方のパラドックスを強調することで、より強い信頼関係を構築できるようになります。
例えば、構造的変化においては、物事を前進させる緊急性が必要ですが、社員が考え方を転換し、新しい条件やプロセスに適応するためには、現実的な忍耐力が必要です。
リーダーは、このパラドックスのどちらかの側面を無視する、あるいは誇張しすぎると、信頼を失います。リーダーは、変化をあまりにも性急に押し進めると、共感と忍耐に欠けていると見られる可能性があります。また、リーダーが過度に忍耐強く、切迫詰まった様子を見せないと、変化のプロセスが滞り、信頼が失われる可能性があります。
どちらかのバランスが崩れても、リーダーに対する信頼が失われます。社員は、リーダーを信頼することで、業務成績が上がり、リーダーに対する関心が生まれます。
リーダーシップへの信頼を創り上げる:協調的努力
当社が140以上のトップリーダーチームを対象に行った最近の調査では、チームメンバーは、定期的に情報を共有し、他者と相互に影響を与える関係を築いている場合、職場における心理的安全性がより高いことを報告しています。対人信頼感、情報共有、相互作用が、組織全体の心理的安全性を高め、チームのパフォーマンスとイノベーションを生む重要な原動力となります。
しかし、リーダーシップの文脈における「信頼」とは何を意味するのでしょうか。信頼は複雑な概念であり、人によってその意味するところはさまざまです。信頼について話し合い、共通の定義を確立することは、チームや組織全体の信頼関係を扱う上で重要なステップとなります。
信頼に影響を与える具体的な行動について、共通の理解を持ち、共通の言語で話し合うことで、チームのパフォーマンスについて、より生産的な対話ができるようになります。こうした対話は、リーダーと社員の間に、より強い絆を生み出すこともできます。
しかし、リーダーシップの信頼性は一度限りの役割ではありません。チームメンバー全員の継続的な取り組みが必要です。そして、誠実さを示し、行動を変え、境界を越えて違いに対処するという大変な仕事を引き受けることを率先して行うリーダーが必要です。
Dennis ReinaとMichelle Reinaの研究によると、信頼は人間にとって大切な欲求を表していることがわかりました。つまり、相手を信頼し、その信頼に応え、自分自身を信頼することを指します。信頼関係があれば、社員はチームの目的に向かって一致団結し、目標や目的を受け入れ、進んで協力し、最高の仕事をする力を得ることができます。
信頼関係がない、あるいは信頼関係が弱いものになると、業務遂行がより困難になり、多くの時間を要します。変化のスピードが速い今日の組織では、リーダーにはこれまで以上に信頼されることが必要です。
われわれのフラッグシップ・プログラムであるLeadership Development Program(LDP)®では、変化と絶え間ない混乱の中でリーダーシップの信頼性を構築することが重要な要素としています。この種のプログラムとしては世界で最も長い歴史を持つLDPは、中間管理職、つまり、コミットメントを構築し、立てた戦略を効果的な行動に移すためにリーダーシップの信頼性へ大きく依存する人々を対象としています。
LDPの参加者は、自らのリーダーシップのスタイルを検証することで、よりバランスが取れた手法を開発し、真の関係性を育み、組織のあらゆる階層で協力し合いながら、前例のない変化の中にあっても、成果を上げることができるようになります。