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トランジションとは?変化との違いや3つのステージ、注意点を紹介
目次
トランジションとは、物事の変わり目を受け入れて新しい状況に適応するための内的な心理プロセスです。
「変化の時代」と称される現代。市場やテクノロジー、働き方など刻一刻と変化し続ける社会に対していかに適応および対処していくかが、すべての企業に問われています。
そこで本記事ではトランジションについて、基本情報、変化との違い、3つのステージと乗り越え方、注意点を紹介します。
なお本記事にて紹介する内容は、世界を代表するビジネス人材育成のプロであるCCL(Center for Creative Leadership)が、綿密なリサーチおよび支援実績を基に導き出したものですので、ぜひ参考にしてください。
トランジションとは
トランジションとは、物事の変わり目を受け入れて新しい状況に適応するための内的な心理プロセスです。
そもそもトランジション(transition)は、「移行・遷移・過渡期・変わり目」といった意味がありますが、ビジネスの現場においては上記のような意味で用いられます。
トランジションはリーダーに必須
トランジションはリーダーに必須です。市場やテクノロジー、働き方まで絶え間ない変化が当たり前となった昨今。リーダーは自らが変化に適応するだけでなく、部下も適応できるようにサポートしなければなりません。
配置転換、M&A、財務問題、リストラなど組織内の変化や変革に直面すれば、そのたびに自身と部下の適応を求められるのです。また、求められる成果に対するプレッシャーや、相反する要求を満たさなければならないプレッシャーなどが追い打ちをかけます。
さらに、経済、業界や市場の動向、グローバル化、政治的・社会的関心、急速な技術革新など様々な外部要因によって、リーダーシップはより複雑で困難なものとなります。
しかし、誰もが耳にしたことがあるように「変化は人生で唯一不変のものである」といわれています。そして、仕事・プライベートを問わず、レジリエンス(困難を乗り越えるしなやかさ)を発揮するためには、私たちは変化に正面から向き合い、その先にたどり着かなければならないのです。
優れたリーダーは、変化や転機のなかで成功を収めるには「単に変化に対応するだけでは不十分」であり目標は「何とかなる」ことではないと理解しているはずです。こうしたリーダーは、変化が起きていることを受け入れ、未知のものに対処するための戦略を磨き、新しい状況や課題に合わせて行動を変えていく「トランジション」を理解しています。
トランジッションと変化の違い
トランジションと変化の違いについて解説します。一言でいえば「変化はトランジションのきっかけ」です。変化によって、昔の方法から今の方法へトランジション(移行)する必要が生じるのです。
それぞれの定義を以下にまとめます。
- トランジション(移行)
新しい状況に適応するための内的な心理プロセスです。トランジションは、すぐに進むこともあれば、ゆっくりと進むこともあります。古いものから新しいものへと移行していくプロセスを指します。 - 変化
組織や個人に影響を与える個々の状況や出来事です。新しい上司の就任、在宅勤務への移行、方針の変更など、変化によって従来のやり方から新しいやり方にトランジション(移行)する必要性が産まれます。
トランジションの3ステージと乗り越え方
変化の管理(チェンジマネジメント)の第一人者であるウィリアム・ブリッジズ氏は、トランジションには、「終わり」「中立圏」「始まり」の3つの段階があると述べています。3つの段階は、順番に進んでいきます。
ステージ1:これまでの「終わり」を受け入れる
まずは潔く過去に終わりを告げる段階です。過去の終焉に敬意を表し、悲しみを伴ってもそれを受け入れましょう。
過去を完全に終わらせるために、以下の3点を試してみてください。
- 変化が起きたことを自分や他者に対して認めましょう。模範となって変化を導くためには、正直さと信頼性が必要です。
- すべての関連情報源から積極的に情報を得ましょう。自己判断だけではなく、変化の本質を知ることが重要です。
- 何が失われ、何が得られたのかを記録しましょう。今までと違うことが正しいとか間違っているということはなく、ただ今までとは違うだけなのです。
ステージ2:「中立圏」を過ごす
このステージは、転換期の中でも最も居心地が悪いかもしれません。明確な終わりがありながら、明確な始まりがないという混乱の時期です。
ただ、この時期は明確な結論が得られ、新たなスタートを切れる時期でもあります。中立圏を乗り越えるために、以下の4点を試してみてください。
- 不確実性は、「終わり」と新たな「始まり」の間の不可欠な段階であることを認識しましょう。すべてを知ることや、完璧であることを望んではいけません。
- 不確実性を乗り越えるために、短期的な目標を設定しましょう。新たなスタートに向けて前進する際には、その目標を達成するために必要な事を把握し、前進するための機会を見極めましょう。
- 終わりを振り返って、自分が何を持っていたかを確認しましょう。始まりに目を向け、それが生み出す可能性に期待しましょう。
- この過程で不安や混乱を感じた時には、自分の価値観が方向性を示してくれます。
ステージ3:新たな「始まり」を起こす
「中立圏」で明確になったことに基づき、変化した環境での仕事にチャレンジしましょう。この段階は、新たなスタートと考えてください。
以下の3点を試して、新しいスタートを踏み出しましょう。
- 新しい人との出会いに前向きかつ積極的になりましょう。慣れてきたら、関係者にも新たなスタートの場を与えましょう。
- 新しい問題に取り組むための戦略を立てましょう。新たな問題に直面したときは、変化の理由を再確認し、その理由を「新たに始める理由」として認識します。
- 自分の成功を示す方法を見つけましょう。小さな成功を認めていきましょう。
人はさまざまな方法で組織の変化を経験し、トランジションのプロセスも人それぞれです。リーダーは、自分自身を取り巻く不確かさや変化への抵抗感に対処しなければなりません。「終わり」「中立圏」そして新たな「始まり」を経験するプロセスが、自分の仕事や周囲の人々に影響を与えることを認識しましょう。
トランジションの注意点:構造だけでなく感情も注視する
トランジションの注意点についてです。
急激な変化と絶え間ないトランジションにより、組織内にはより大きな感情の流れが生まれています。
不確かな状況は、リーダーおよびリーダーの決定によって影響を受ける人々の、行動・感情面でのあらゆる反応を引き起こす可能性があります。絶え間なく続く組織の変化に直面すると、リーダーの立場にある人々は変化に疲れてしまうリスクがあるのです。
トランジションが複雑であったり激しくなったりするのは変化によるものです。つまり、変化が頻繁であったり、劇的であればあるほど、トランジションのプロセスも複雑になっていきます。その一方で、組織やリーダーは往々にして、変化における「人間的な要素」を見落としたり、見過ごしたりしがちです。
CCLから出版されている『Leading With Authenticity in the Times of Transition(転換期における真のリーダーとは)』で述べられるように、多くのリーダーは、ビジョンの策定、組織の再編成、リストラなど、変化をリードする際に起こる構造的な出来事を熟知しているものです。
確かに彼らは変化に伴って生じる問題に対処するために、報酬や評価、教育を受けていることもあり、これらに対しても一定の経験や知見を有しています。
ただし、それだけでは十分ではありません。体制や業務の変化によってストレスやプレッシャーが生じるため、組織内の人々に何が起こっているのかを注意して見守る必要があるのです。
調査によると、変革への取り組みの75%はうまくいっていないのが実情です。その理由は、変革を成功させるためには、リーダーは「変革をリードする構造的な要素」と「トランジションする際の人間的な感情の動き」の両方への対処を求められるためです。
どちらか一方のスキルが過剰に発揮されると、リーダーは信頼を損ない、組織文化が不安定になってしまいます。経営者や各リーダーは、「忠実かつ生産性が高い熱心な従業員」ではなく「不安や恐れ、疑念を抱く従業員」を抱えることになってしまうのです。さらに、従業員から十分な賛同を得られなければ、新しい目標に向けての進捗が遅れ、プロセスが弱体化してしまいます。
リーダーが変革を管理する上での人(感情)の要素を軽視すると、せっかくの優れた戦略や変革への取り組みの停滞や失敗を招きます。
CCLの調査によると、トランジション期を乗り越えるには「人々が嘆き、手放し、希望を築き、学ぶプロセスを導くことが必要」と指摘されています。リーダーにとっての大きな課題は、変化における長期的で人間的な要素(回復、再生、再コミットメント)を管理することです。これらは、成功するチェンジリーダーになるために欠かせません。
トランジションマネジメントを行えるリーダーを育成するには
トランジションマネジメントを行えるリーダーを育成するには、判断力や決断力、指導力はもちろんのこと、感情面など人間的要素をマネジメントできる能力まで伸ばす必要があります。
弊社「株式会社インヴィニオ」は人材育成のプロとして、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットします。事業の成果として表れるように、人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化させることを重視しています。
「単なるリーダー研修ではなく、業績アップなど明確な成果につなげたい」とお考えの方は、まずはこちらから気軽にお問い合わせください。