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組織の壁を越えたコラボレーションが必要なわけ

目次
「越境できるリーダー」がますます必要に
世界がより複雑になり、相互の結びつきが強くなるにつれ、企業の幹部は自分の縄張りを守るマネジャーから、組織の壁と境界を越えて成果を出すことができるリーダーへと変わらなければなりません。優れたリーダーとは、立場や経歴、場所、経験の異なるさまざまな人たちと一緒に仕事ができる人です。
『越境』(バウンダリースパニング)のメリット
越境(バウンダリースパニング)を効果的に実践しているリーダーは、クリエイティブに問題を解決したり、革新的なソリューションを創造したり、複雑な現代社会で成功を遂げることが求められるときに真価を発揮します。越境という行動は以下の利点をもたらします。
- 激しく、かつ、急速に変化する市場へのスピーディーな適応
- 組織横断的な先進性のあるイノベーションの創出
- 重要かつ最終的な成果を達成すること
- あらゆるレベルの社員が活躍し、力を発揮できる職場の創造
- 問題解決や変化に対応するための柔軟で部門横断的な学習能力の構築
- 部門を超えた永続的なパートナーシップを通じたリスクとリターンをより良いマネジメント
- バーチャルチーム、リモートチーム、ハイブリッドチームのパフォーマンスを向上させること
- グローバルマインドと地域間連携の向上
私たちは、C-Suiteリーダー向けプログラム「Leadership at the Peak(頂点のリーダーシップ」に参加した125人以上の上級幹部を対象に調査を行うなど、境界を越えるための幅広いリサーチを行っています。
これらのトップリーダーの86%以上が、現在のリーダーとしての役割において、境界を越えて効果的にコラボレーションすることが「非常に重要」であると述べています。しかし、境界を越えたコラボレーションが「非常に効果的(に実現できている)」と回答した経営幹部はわずか7%であり、その差は79%にも及びます。
リーダーは、越境(バウンダリースパンニング)リーダーシップのスキル、マインドセット、行動を身につけることで、このギャップを埋めることができるのです。
あらゆる境界を越えたコラボレーションにはリーダーシップが必要
5つの普遍的な境界のタイプ
私たちは世界中のリーダーとの調査を実施し、その結果から、これら5つの境界は文化、背景、時間を超えた普遍的なものであると確信しています。これらは過去にも現在にも存在し、明日も消えることはありません。私たちの調査でまとめられている通り、リーダーが超えるべき5つの境界は以下の通りです。
- ヨコ方向の境界:組織の部門間(専門性、部門、同僚)
- タテ方向の境界:組織の階層レベル間(階級、役職、年功、権威、権力)
- ステークホルダーによる境界:外部グループ(顧客、パートナー、有権者、バリューチェーン、コミュニティ)との関係
- 人口動態的な境界:多様なグループ(性別、世代、国籍、文化、性格、思想)間の境界
- 地理的な境界:地域(地域、市場、距離)の境界
5種類の境界から生じる課題
ヨコ方向の境界
組織横断的な境界とは、経験や専門知識の領域による組織グループの分離をもたらすものです。この横方向の境界は、ある部門が他の部門より優遇されている場合、あるユニットや製品ラインの仕事が他のユニットの存続を脅かす場合、あるいは部門や部署ごとの目的が異なるベクトルを持っている場合、マイナスの影響をもたらすものです。
- どの程度、発生するのか?:驚くことではありませんが、私たちが上級幹部を対象に行った調査では、組織横断的な境界から生じる課題が、他の4つの次元の課題よりもほぼ3対1(71%)で懸念事項として挙げられていることがわかりました。部門を超えたコラボレーションを促進することは、今日のリーダーが直面する最も一般的な課題の1つであり、境界を越えるという課題に直結しているのです。
現代の多くの組織では、マトリックス構造や地域構造が構築されているため、その意図しない結果として、協力すべきグループの間に壁が築かれてしまっていることがあります。その結果、管理職や経営者による「サイロつぶし」が発生しているのです。組織におけるリーダーシップの専門家である私たちのもとには、どうすれば部門を超えた横の連携を促進できるのかといった相談がクライアントから多く寄せられています。
タテ方向の境界
組織におけるタテ方向の境界は、役職、階級、年功、権威、および権力の違いから生じるものです。グループを上層、中層、下層に分け、それぞれに対応するレベルの権限を持たせることは、ほぼすべての組織で見られる特徴です。
- どの程度、発生するのか?:タテ方向の境界は、横の境界とは対照的に、私たちの調査において挙げられた境界の課題の中では、最も言及率が低いものでした。
この数値は、過去にははるかに高いものであったと考えられます。というのも、組織のさまざまな問題の根本的な原因は、しばしば「ヒエラルキー(階級主義)」にあると言われるからです。しかし、数十年にわたる組織のフラット化とコミュニケーション体制の改善の結果、今回の調査では、上級幹部は、他の4種類の境界よりも縦の境界の方が、関連性や問題性が低いと感じているようです。
ステークホルダーによる境界
組織のステークホルダーとの境界を超えることは、複雑で変化に富んでいます。皆さんの組織には、クライアントや顧客、株主、取締役会、パートナー、提携先、サプライヤー、ベンダー、支援団体、政府機関、非政府機関、さらには地域、地方、国、グローバルコミュニティなど、多くのステークホルダーが存在するかもしれません。
人口動態的な境界
人口動態的な境界は、様々な集団ごとに存在します。性別、人種、教育、イデオロギーなど、人間の多様性と社会的アイデンティティの全ての領域が含まれます。効果的なリーダーシップを発揮するためには、リーダーは、さまざまな層の境界を越えて敬意を示し、自身の社会的アイデンティティがどのようにリーダーに影響を与えるかを理解している必要があります。
地理的な境界
地理的な境界は、距離、場所、文化、地域、市場ごとに存在します。地理的な境界は、異なる場所にまたがってコラボレーションを行う場合には制約を生むものです。今日のように世界が縮小していく中で、マネージャーはグローバルリーダーシップの意味を常に念頭に置いておかなければなりません。
- どの程度、発生するのか?:今回の調査では、地理的境界、人口統学的境界、ステークホルダーの境界が比較的同程度(それぞれ26%、17%、17%)で課題として認識されており、この割合は今後増加すると思われます。
企業がグローバルに事業を展開し、多様な人材を採用し、複雑な組織間提携やジョイントベンチャー、パートナーシップを通じて新たな競争優位性を追求する中で、地理的、人口統計学的、ステークホルダー間の境界が重なる場所でリーダーシップを実践することがますます増えていくでしょう。
越境リーダーシップをどう実践するか:リーダーのためのガイド
境界を越えてコラボレーションし、チームを導くことは容易ではありませんが、今日の最も差し迫ったビジネス課題の解決策は、多くの場合、複数の境界が交差するところにあります。だからこそ、真に効果的なリーダーシップとは、重要な境界を越えて、方向性、整合性、コミットメントを生み出すことなのです。
私たちの多くは、組織図の枠を超え、ステークホルダーの利害や人口動態上の違いを超え、自分が代表する部門やグループの枠を超え、リーダーシップを発揮するということが困難であることは認識しています。
とはいえ、境界を超えて協力することは可能です。
別のホワイトペーパーで紹介したように、私たちは、より相互依存的なリーダーシップを育成するための研究と経験を通じて、効果的に境界を越えるリーダー、グループ、組織は、3つの方法でこれを実現していることを発見しました。
- 境界を管理しましょう。境界をまたぐための最初のステップは、皮肉にも、心理的な安全性と敬意を築くために、役割、目的、専門分野などを区別して明確にし、境界を作るか、または強化することです。
- 共通の基盤を作り、より大きな目的を達成するためにグループをまとめ、境界を越えて信頼、関与、共有のオーナーシップを構築しましょう。
- 画期的なイノベーション、トランスフォーメーション、再発明を支援するために、異なる専門知識、経験、リソース、統合されたビジョンと戦略を持つグループが交差し、リンクする新しいフロンティアを発見してください。
境界を越えるための6つのプラクティス(緩衝させる、映し出す、つながる、動かす、紡ぐ、変革する)を用いることで、リーダーは問題を解決し、革新的な解決策を生み出し、組織を変革することができるのです。(この6つのプラクティスについては、上記のホワイトペーパーで詳しく説明しています。さらに詳細については、私たちの著書:問題を解決し、イノベーションを推進し、組織を変革するための6つのプラクティスをご覧ください。
境界越えを実践するための4つのステップ
境界を越えたコラボレーションをより意識的に行うために、以下のステップに従って、境界を越えるための最適な方法を見極めましょう。
1.終わりを意識して始める
課題の性質と、どの境界(組織横断/縦断的、ステークホルダー、人口統計的、地理的)が最も多く存在し、どの境界を越えるのが難しいかを検討しましょう。
2.戦略を明確にする
皆さんの目標は、安全性を確保し、敬意を育むことですか?それなら、緩衝させることと映し出すことによって境界線を管理する方法をとりましょう。あるいは、信頼を築き、オーナーシップを育むことが目標でしょうか?それなら、共通の土台を築くために、人をつなぎ、人を動かす方法が必要です。基礎が固まったなら、より大きな相互依存と再発見、つまり新しいフロンティアの発見が可能になるのです。その場合は紡ぐことと変革することを試してみましょう。
3.シンプルに始める
導入しやすく、実行しやすいと感じられる1つか2つの方法から始めましょう。キャンペーンを「開始」するのではありません。できるところから始め、仲間を見つけ、ネットワークの力を活用し、成功を積み重ねていきましょう。
4.実践と修正を行う
特定の境界を越える方法が、皆さんのグループや状況で常にうまくいくとは限らないことを忘れないでください。そのため皆さんは恐れずに実践してみましょう。その上で私たちの提案を訂正し、独自の方法を考え出してください。
境界を越えたコラボレーションをより意識的に行うために、以下のステップに従って、境界を越えるための最適な方法を見極めましょう。
境界を越えるために試すべき2つのプラクティス
私たちは、クライアントとの仕事の中で、バウンダリースパニングのプロセスを一気に開始したり、特定の課題に取り組むためにバウンダリースパニングを効果的に行ったりして、さまざまなニーズに応じた進め方を推奨しています。ここでは、私たちのお気に入りの戦略を2つご紹介します。
ウォーク&トーク
「ウォーク&トーク」は、対面式で他者とつながるための意外と簡単な方法です。例えば、異なるグループの人々がペアを組み、15〜20分の短い散歩を共にし、そこでお互いに4つの質問をします。
- 皆さんがこの職業(あるいはこの仕事、この会社)に就いたきっかけは何ですか?
- 仕事で一番楽しいことは何ですか?
- もっとこうすればいいのに、と思うことはなんですか?
- 仕事以外の時間はどのように過ごしたいですか?
最初の質問で、その人が仕事に対して持っている情熱やこだわりが引き出されることがよくあります。それは、その人個人のストーリーの一部です。また、この質問は、両者の興味を引くものなので、他の質問をしやすい雰囲気が作れます。この境界を越えるためのアクティビティは、対面式のチームミーティング、ワークショップ、トレーニングセッション、あるいは共通の課題を解決したり新しいものを創造したりするために新しい人々が集まるときに、簡単に組み込むことができます。
課題のマッピング
この「シェアード・アフィニティ(共通点の)マッピング」という、紡ぐためのアクティビティを行うことで、グループのメンバーは、課題や状況の側面を明確に把握し、重なり合う部分、つながり、懸念する部分を明らかにすることができ、そこから共通の解決策を見出すきっかけを作ることができます。この方法を試すには、大きなグループを小さなグループに分け、それぞれにプロジェクトや課題に関連する問題や要因のリストをブレインストーミングしてもらいます。その際、「私たちの成功の妨げになるものは何ですか?」という質問を投げかけてもらいます。
そして、各グループが話し合った内容を掲示し、各自が取り組むべき課題の上位3つを色分けして表示します。このように、各メンバーの投票を色で表現することで、参加者は、それぞれのアイデアがどのように重なり、集まり、混ざり合っているのか、差別化(色)、統合、重なり(パターン)を含めて視覚的に確認できるようになります。
そして、重要なテーマについてディスカッションを行い、洞察をもとに、優先順位付け、問題解決、計画立案を始めることができます。ボードや壁、フリップチャートなどに課題を掲示したり、投票したりすることができるため、部屋に集まったグループが境界を越えて活動するには最適な方法です。ですが、このプロセスは、リアルタイムであってもそうでなくても、またバーチャルな環境でも同じように機能します。
境界を越えたコラボレーションを実現するために
この記事では、バウンダリースパニングを実践するためのアイデアをいくつか紹介しました。バウンダリースパニングのための行動、スキル、マインドセット、実践は、日常の業務や活動の中で学び、適用するのがベストです。対面またはバーチャルミーティング、オフサイト、電話会議、戦略立案セッションなどにおいて、境界が発生したら、いつでもこれらの方法を活用してください。
有能なリーダーは、日々、境界を越えて変化を生み出し、革新的な解決策を共同で創造し、組織やコミュニティに貢献する方法を見出しています。