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職場・ビジネスの連携強化に向けてリーダーが越えるべき5つの境界とは?
目次
職場やビジネスにおける連携不足を解消し、いかに強化していくかに課題を感じている方は多いのではないでしょうか。
組織を取り巻く環境がますます複雑化し、人や組織同士の干渉が強まるなか、企業の幹部は自分の縄張りを守るリーダーから、組織内外の壁や境界を越えて成果を出すことができるリーダーへと変わらなければなりません。立場や経歴、場所、経験の異なる多様な人たちと連携し、職場およびビジネスにおいて成果を上げることが求められるのです。
そこで本記事では、職場・ビジネスの連携強化に向けてリーダーが超えるべき境界について、境界を越えるメリットと必要性、具体的な5つの境界を紹介します。その上で、境界を越えるための重要ポイント3つと4ステップ、試すべき2つの手法について解説します。
なお本記事にて紹介する内容は、世界を代表するリーダー育成のプロ(専門機関)であるCCL(Center for Creative Leadership)が、綿密なリサーチおよび支援実績を基に導き出したものですので、ぜひ参考にしてください。
境界を越えて連携を強化するメリット
越境(バウンダリースパニング)を効果的に実践しているリーダーは、クリエイティブに問題を解決したり、革新的なソリューションを創造したりと複雑な現代社会で成果を求められるときに真価を発揮します。
具体的には以下のようなメリットをもたらします。
- 劇的かつ急速に変化する市場へのスピーディーな適応
- 組織横断的な先進性を有したイノベーションの創出
- 重要かつ最終的に求められる成果の達成
- あらゆるレベルの社員が活躍し、力を発揮できる職場の創造
- 問題解決や変化に対応するための柔軟かつ部門横断的な学習能力の構築
- パートナーシップを通じたリスクとリターンを適切に考慮したマネジメント
- バーチャルチーム、リモートチーム、ハイブリッドチームのパフォーマンス向上
- グローバルマインドと地域間連携の強化
境界を越えた連携強化の必要性
CCLは、経営者・リーダー向けプログラム「Leadership at the Peak(頂点のリーダーシップ」に参加した125人以上の幹部を対象に調査を行うなど、境界を越えるための幅広いリサーチを行っています。
その結果、トップリーダーの86%以上が、現在のリーダーとしての役割において、境界を越えて効果的にコラボレーションすることが「非常に重要」であると述べています。
しかし、境界を越えたコラボレーションを「実現できている」と回答した経営幹部はわずか7%であり、その差は79%にも及びます。
リーダーは、境界を越えるためのリーダーシップスキル、マインドセット、行動を身につけることで、このギャップを埋めることができるのです。
職場・ビジネスの連携強化に向けて越えるべき5つの境界
職場・ビジネスの連携強化に向けて越えるべき境界を、5つ紹介します。CCLは世界中のリーダーを対象とした調査結果から、下記5つの境界は文化、背景、時間を超えた普遍的なものであると明言しています。これらは過去にも現在にも存在し、明日も消えることはありません。
- ヨコ方向の境界:組織の部門間(専門性、部門、同僚)
- タテ方向の境界:組織の階層レベル間(階級、役職、年功、権威、権力)
- ステークホルダーによる境界:外部グループ(顧客、パートナー、有権者、バリューチェーン、コミュニティ)との関係
- 人口動態的な境界:多様なグループ(性別、世代、国籍、文化、性格、思想)間の境界
- 地理的な境界:地域、市場、距離における境界
以下では、それぞれについてより具体的に紹介します。
参考:boundaryspanningleadership.pdf (cclinnovation.org)
ヨコ方向の境界
ヨコ方向の境界とは、組織の部門間(専門性、部門、同僚)で生じる境界を指します。経験や専門知識の領域による組織グループの分離をもたらすものです。
この境界は、ある部門が他部門より優遇されている場合、あるユニットの仕事が他ユニットの存続を脅かす場合、部門や部署ごとの目的が異なるベクトルを持っている場合にマイナスの影響をもたらします。
CCLが行った調査では、対象者となったリーダーの71%が「ヨコ方向の境界で生じる課題」を懸念事項として挙げていました。部門を超えたコラボレーションを促進することは、今日のリーダーが最も直面しやすい課題であり、境界を越えるという課題に直結しているといえます。
現代における多くの組織は、マトリックス構造や地域構造で成り立つため、本来ならば協力すべきグループの間に壁が築かれてしまっていることがあります。
その結果、組織内の異なる部門やチーム間で情報やリソースが適切に共有されず、それぞれが孤立した状態にある「サイロつぶし」が発生しているのです。組織強化や人材育成の専門家であるCCLや弊社インヴィニオのもとには、どうすれば部門を超えた横の連携を促進できるのかといった相談がクライアントから多く寄せられています。
タテ方向の境界
タテ方向の境界とは、組織の階層レベル間(階級、役職、年功、権威、権力)で生じる境界を指します。
グループを上層、中層、下層に分け、それぞれに対応するレベルの権限を持たせることは、ほぼすべての組織で見られる特徴です。
CCLの調査においてタテ方向の境界は、ヨコ方向の境界とは対照的に最も言及率が低いものでした。
この数値は、過去においては高かったと推察できます。なぜなら組織のさまざまな問題の根本的な原因は、「ヒエラルキー(階級主義)」にあるといわれていたためです。
しかし、数十年にわたる組織のフラット化とコミュニケーション体制改善の結果、CCLの最新調査では、対象となったリーダーは他4つの境界よりもタテ方向の境界の方が、問題性は低いと感じているようです。
ステークホルダーによる境界
ステークホルダーによる境界とは、外部グループ(顧客、パートナー、有権者、バリューチェーン、コミュニティ)との間に生じる境界を指します。
CCLの調査では、ステークホルダーによる境界を課題として挙げているリーダーの割合は17%でした。
組織のステークホルダーとの境界を超えることは、複雑で変化に富んでいます。皆さんの組織には、クライアントや顧客、株主、取締役会、パートナー、提携先、サプライヤー、ベンダー、支援団体、政府機関、非政府機関、さらには地域、地方、国、グローバルコミュニティなど、多くのステークホルダーが存在するかもしれません。
人口動態的な境界
人口動態的な境界とは、多様なグループ(性別、世代、国籍、文化、性格、思想)の間に生じる境界を指します。人間の多様性と社会的アイデンティティの全ての領域が含まれます。
CCLの調査では、人口動態的な境界を課題として挙げているリーダーの割合は17%でした。
効果的なリーダーシップを発揮するためには、リーダーはさまざまな層の境界を越えて敬意を示し、自身の社会的アイデンティティがどのようにリーダーに影響を与えるかを理解している必要があります。
地理的な境界
地理的な境界とは、地域、市場、距離などで生じる境界を指します。
地理的な境界は、異なる場所にまたがってコラボレーションを行う場合に制約を生みます。
今日のように世界が縮小していく中で、リーダーはグローバルリーダーシップの意味を常に念頭に置いておかなければなりません。
CCLの調査では、地理的な境界を課題として挙げているリーダーの割合は26%でした。
企業がグローバルに事業を展開し、多様な人材を採用し、複雑な組織間提携やジョイントベンチャー、パートナーシップを通じて新たな競争優位性を追求するなかで、地理的な境界をはじめ、先に紹介した人口動態的な境界、ステークホルダー間の境界などでリーダーシップを実践する機会がますます増えていくでしょう。
職場・ビジネスの連携強化に向けて境界を越えるための重要ポイント3つ
組織図の枠を超え、ステークホルダーの利害や人口動態上の違い、自分が代表する部門などの枠を越えて、リーダーシップを発揮するのは決して容易ではありません。
とはいえ、職場・ビジネスの連携強化に向けて境界を越えることは可能です。
CCLは、より相互依存的なリーダーシップを育成するための研究と経験を通じて、「効果的に境界を越えるリーダー・グループ・組織」は、下記3つのポイントを実践していることを発見しました。
- 境界を管理しましょう。境界を越えるためには、心理的な安全性と敬意を築くために、役割、目的、専門分野などを区別して明確にし、あえて「境界を作るもしくは強化すること」が必要です。
- 共通の基盤を作り、より大きな目的を達成するためにグループをまとめ、境界を越えて信頼、関与、共有のオーナーシップを構築しましょう。
- 画期的なイノベーションやトランスフォーメーションを支援するために、異なる「専門知識・経験・リソース」を持つグループが交差・リンクする新たな領域を設けてください。
職場・ビジネスの連携強化に向けて境界を越えるための4ステップ
職場・ビジネスの連携強化に向けて境界を越えるための4ステップを紹介します。
1.終わりを意識して始める
課題の性質と、先に紹介した5つの境界(ヨコ方向、タテ方向、ステークホルダー、人口統計的、地理的)のうち、「優先して越えるべき境界」を明確にしましょう。
2.戦略を明確にする
皆さんの目的は、安全性を確保し、相互の敬意を育むことでしょうか。それなら、緩衝させることと映し出すことによって境界線を管理する方法をとりましょう。
それとも、信頼を築き、オーナーシップを育むことが目標でしょうか。それなら、共通の土台を築くために、人をつなぎ、人を動かす方法が必要です。連携の基礎が固まったら、より大きな連携、つまり新しい領域を開拓できる可能性が高まります。その場合は紡ぐことと変革することを試してみましょう。
3.シンプルに始める
導入しやすく、実行しやすいと感じられる1つか2つの方法から始めましょう。「施策を大々的に開始」するのではありません。できるところから始め、仲間を見つけ、ネットワークの力を活用し、成功を着実に積み重ねていきましょう。
4.実践と修正を行う
個々で紹介した方法が、どのような状況でも常にうまくいくとは限らないことを忘れないでください。そのため、まずは恐れずに実践することが大切です。その上で方法を調整・修正しながら、自社に最適な方法を考え出してください。
境界を越えるために試すべき2つの手法
CCLはクライアントのニーズに応じてさまざまな手法を提案しています。CCLが特に推奨する手法を2つ紹介します。
ウォーク&トーク
「ウォーク&トーク」は、連携を強化したい相手と対面形式で行う手法です。例えば、異なるグループの人々がペアを組み、15〜20分の短い散歩を共にしながら、お互いに4つの質問をします。
- 皆さんがこの職業(または仕事・会社)に就いたきっかけは何ですか?
- 仕事で一番楽しいことは何ですか?
- もっとこうすればいいのに、と思うことはなんですか?
- 仕事以外の時間はどのように過ごしたいですか?
最初の質問で、その人が仕事に対して持っている情熱やこだわりが引き出されることがよくあります。それは、その人のストーリーの一部です。またこの質問は、両者の興味を引くものであるため、他の質問をしやすい雰囲気を作れます。
この手法は、チームミーティング、グループ内研修、新規プロジェクトのキックオフミーティングなど連携を強化したい人同士が集まる際に、簡単に組み込むことができます。
課題のマッピング
この「マッピング」を行うことで、各メンバーが抱える課題について「重なり合う部分、つながり、懸念点」が明らかになります。そこから共通の解決策を見出すきっかけを得られるのです。
この方法を試すには、大きなグループを小グループに分け、それぞれにプロジェクトや課題に関連する問題や要因のリストをブレインストーミングしてもらいます。その際、「私たちの成功の妨げになるものは何ですか?」という質問を投げかけてもらいます。
そして、各グループが話し合った内容を掲示し、各自が取り組むべき課題の「上位3つ」を色分けして表示します。このように、各メンバーの投票を色で表現することで、参加者は、それぞれのアイデアがどのように重なり、集まり、混ざり合っているのかを、視覚的に確認できるようになります。
そして、より重要なテーマについてディスカッションを行い、洞察をもとに、取り組みの優先順位付け、問題解決、計画立案を始めることができます。ボードや壁、フリップチャートなどに課題を掲示したり、投票したりすることができるため、部屋に集まったグループが境界を越えて活動するには最適な方法です。なおこの手法は、Web会議システムを用いたバーチャルな環境でも同じように実施できます。
職場・ビジネスにおいて境界を越えた連携を実現するために
本記事では、職場・ビジネスの連携強化に向けてリーダーが超えるべき境界について解説しました。境界を越えるための行動、スキル、マインドセット、実践は、日常の業務や活動の中で学び、適用するのがベストです。
有能なリーダーは日々、境界を越えて変化を生み出し、革新的な解決策を共同で創造し、組織やコミュニティに貢献する方法を見出しています。
各種会議またはWebミーティング、会議、戦略立案セッションなどにおいて、「境界」が発生したら、本記事の内容を参考にしてください。
また弊社「株式会社インヴィニオ」は、組織能力開発・人財開発の専門企業として20年以上にわたり支援実績を積み重ねてきました。CCLをはじめ世界中のアライアンスパートナーから最先端のノウハウを得ており、知識習得や能力アップのレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットしています。
職場・ビジネスにおいてより効果的な連携を実現したいとお考えの場合は、ぜひこちらから気軽にお問い合わせください。