Leadership Insight

“しなやかな”リーダーとは?:変化への対応力の中身

LEADERSHIP INSIGHT / CCL | 2022/02/07

より“しなやかな”リーダーになるために

今、世界中のリーダーたちが、かつてないほどの変化や複雑な状況に直面しています。新型コロナウイルスの大流行は、職場における新たな課題、新たな状況、新たな不確実性をもたらしました。仕事は変化とともに拡大・縮小、あるいは消滅し、同僚やチームメイト、テクノロジーのあり方も急速に変化しています。

また、ワクチンをめぐる問題については解決の兆しが見え始め、組織は徐々に現場での仕事に戻ってきていますが、そこには新たな規範づくりや、課題への対応などが待っています。

このような状況で必要とされるのは適応力です。変化は常に避けられないものなので、リーダーが成功するためには変化に適応すること、適応するための“しなやかさ”を持つことが不可欠です。

私たちの研究では、この適応力の必要性が裏付けられています。適応力とは、物事の変化に合わせて方向転換したり試行錯誤したりなど、さまざまな行動をすぐに取れる能力のことです。

北米とヨーロッパの成功しているエグゼクティブに「変化への適応」とは何か尋ねると、以下の答えが返ってきました。

  • 組織が直面する外部からの圧力の変化に適応する。
  • 状況の変化に応じて、自分のマネジメントスタイルを調整する。
  • 変化をポジティブに受け止める。
  • 必要に応じて計画を修正する。
  • 変化の際には、他の人の困りごとを気にかける。

逆に、北米の管理職がキャリアを脱線する理由として最も多く挙げたのは、「成長できない」「適応できない」でした。

その理由は、しなやかさに欠けるリーダーが、自分自身が適応することをやめてしまうだけではなく、他の人が変化に対応することを制限してしまうことがあるからです。そのせいで新しい取り組みが中断したり、頓挫したりすることがあります。変化に抵抗することで、重要なプロジェクトやシステム全体の実行に影響が出て、進行が遅れるだけでなく、他のチームメンバーの不安やネガティブな感情を招く恐れがあります。そして、従業員の熱意、協力、モラル、創造性が損なわれ、事業や組織の運営がますます困難になってしまうのです。(柔軟性のあるリーダーがキャリアを軌道に乗せ、脱線を防ぐ方法については、こちらをご覧ください。)

柔軟なリーダーとは?変化への適応力を診断してみよう

変化に対する皆さんのアプローチを考えてみましょう。変化に対応するとき、どのように対応しますか?

  • 変化をポジティブに受け止められますか?
  • 変化をチャンスと捉えられますか?
  • 必要に応じて計画を変更することはできますか?
  • 新しい技術、語彙、作業ルールを素早く習得することができますか?
  • 模範となって変化を導くことができますか?
  • 他の人の懸念を考慮することができますか?
  • 自分の長所と短所を正確に把握していますか?
  • ミスを認め、そこから学び、前に進むことができますか?
  • 楽観的な見方をしていますか?

もし、これらにほとんど当てはまらないとしたら、それは皆さんだけに限ったことではありません。行き詰まったり、変化に不安を感じたり、なかなか前に進めなかったり、未知の領域でどう進めていいかわからなくなったりするのは、私たちの多くが経験することです。

私たちのガイドブックである 適応力:変化に効果的に対応するにあるように、組織、業界、職業における変化を乗り切るためには、まず自分自身が変革のプロセスをリードしなければなりません。その方法とは、潜在的なネガティブな感情の中で、自分の気持ちを落ち着かせる方法を見つけること、変化が自分に与える影響を理解すること、自分の行動が他の人に与える影響を理解することなどです。

変革をリードする際には、すべての従業員が答えを求めている4つの基本的な質問を念頭に置いておきましょう。

  1. 何が起こっているのでしょうか?
  2. なぜそうなったのでしょうか?
  3. これが自分の仕事にどのような影響を与えるのでしょうか?
  4. 目標に向けた計画はどのようなものでしょうか?

このような質問をされる前に、先に答えを考えておくと効果的です。さらに詳しい内容については、変化に対応するための方法をご参照ください。

変化を受け入れ、自分の視点を評価してみましょう

変化に対する自分の対応を評価した後は、自分の考え方が、組織の他の人が変化を受け入れる際の模範になるかどうかを考えることが重要です。従業員は、どう対応すべきか迷った時、リーダーからヒントを得ます。だからこそ、変化をどのように受け入れ、組織に取り込み、リードするかについて、皆さん独自の視点が必要なのです。リーダーには次のような心構えが必須です。

  • ビジョンを持つ:未来を想像しながら今日の結果を重視する。現状に立ち向かい、計算されたリスクを取り、予測できないことを予測する。
  • インスピレーションを与える:ビジョンとそのメリットを伝える。情熱を持って、意図した変化のモデルとなり、変化する未来に従業員を先導する。
  • 熱意を持つ:ポジティブでブレない態度を取り、周りの人に障壁を乗り越えるための活力を与える。粘り強く、周りの人を巻き込んで協力する。
  • 賢明である:ビジネス感覚に優れ、組織、人材、プロセスに関する知識が豊富であること。問題解決者として問題を予測し、対処する。

変化に対応するためのリーダーとしての「3つのしなやかさ」

ここまで変化に対する適応力を見てきました。適応力は言い換えれば“しなやかさ”ですが、この“しなやかさ”をもう少し詳細に定義すると、「認知的柔軟性」「感情的柔軟性」「気性的柔軟性」に分類できます。

1.認知的柔軟性(Cognitive Flexibility):さまざまな思考戦略やメンタルフレームワークを使いこなす能力を高める

認知的柔軟性を持つリーダーは、計画、意思決定、日々の仕事の管理に、さまざまな思考戦略やメンタルフレームワークを取り入れることができます。また、複数のシナリオを同時に思い浮かべることができ、方向転換して変化を起こすタイミングを見極めることができます。

認知的柔軟性とは、軽快で多様な思考、新しいアプローチを開発することへの興味、新しいつながりを見つけて活用する能力、そして組織を超えてうまくやっていくことのできる性質を指します。このような柔軟性を持つリーダーは、経験から学び、古いアプローチがうまくいかない場合はすぐにそれを認識できる能力を持っています。

2.感情的柔軟性(Emotional Flexibility):自分や他人の感情に対するアプローチを変えることができる能力を高める

感情的柔軟性を持つリーダーは、自分や他人の感情に対処するためにさまざまなアプローチをとることができます。ですが、実はこれは多くのリーダーが考慮していない領域です。感情的に柔軟なリーダーは、悲しんだり、不平を言ったり、不安になったり、抵抗したりするなど、移行時に起こりうる感情の変化に対応できるものです。

変化に適応するためには、リーダーと変化を経験する人との間でギブアンドテイクが必要です。感情の柔軟性がないリーダーは、他者の懸念や感情を無視し、議論を封じてしまいがちです。一方で、感情的適応力のあるリーダーは、変化ややるべきことを前進させることができます。

3.気性的柔軟性(Dispositional Flexibility):楽観的であると同時に、現実的になる能力を高める

気性的柔軟性(または人格的な柔軟性)のあるリーダーは、現実的かつ開放的な考え方を持ち、それに基づく楽観的立場をとって行動するものです。このようなリーダーは、悪い状況を認めると同時に、より良い未来をイメージすることができます。盲目的にポジティブになったり、悲観的に敗北感を感じたりはしないものです。曖昧さについても許容することができます。

気性的柔軟性のあるリーダーは、変化を脅威や危険としてではなく、チャンスとして捉えます。

認知的、感情的、気性的な柔軟性を高める行動を学び、実践することで、より適応力が高まり、ひいては他者の適応力を高められるようになるのです。

変化に適応する方法:柔軟なリーダーになるための5つのアドバイス

適応力のあるリーダーシップに関する調査研究で述べたように、適応力のあるリーダーは、柔軟性を兼ね備えています。問題を解決するための新しい革新的な方法を模索し、新しいスキルを身につけ、混乱を脅威ではなく挑戦とみなします。これらは全て不確実な時代で勝ち抜くために必要なことです。

リーダーとしては、職場の変化に対応するだけでなく、変化の舵取りもしなければなりません。変化に効果的に対応し、チームを前進させるために、以下の5つのヒントを参考にしてください。

  • 好奇心旺盛であること。たくさんの質問をしましょう。判断や決定をする前に、不思議に思い、探求し、考えるようにしましょう。
  • 1つの計画や戦略に固執しすぎないこと。プランB(とC)を用意しておきましょう。
  • サポート体制を作る。一人で頑張らないでください。メンター、友人、コーチ、信頼できる仲間、仕事の同僚、家族など、変化の時にあなたのサポーターとなってくれる人を探しましょう。従業員にも同じことを勧めましょう。
  • 変化に対する自分の反応を理解しておく。変化に対する自分の感情や考えを明確にしておくことで、他の人に率直な意見を言えるようになります。
  • 新しい環境や状況に身を置く。変化に直面したときはもちろんですが、定期的にアクティビティに参加したり、新しい人に会ったり、新しいことに挑戦したりしましょう。