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「自分ならできる」と信じるために何をやるのか

Facebook Japan 執行役員
パートナーシップ事業 日本代表
小川 竜平 様
小川 竜平さん 略歴
慶應大学法学部、ロンドンビジネススクールMBA卒。国内通信事業者、外資系コンサルティングファーム、外資系外食事業者での勤務を経て、2018年にFacebook Japanに入社後、執行役員としてパートナーシップ事業を担当
「Better late than never」
-小川さんは現在、Facebook Japanの執行役員として活躍されていらっしゃいますが、
まずこれまでのご経歴をお聞かせいただけますか。
僕は、新卒でNTTドコモに入社し9年間お世話になりました。その間の仕事は大きく支店、本社、ヨーロッパ拠点、の3つとなります。支店ではセールスエンジニアとして法人のお客様への営業をしておりました。4年目から本社のiモード(NTTドコモのモバイルインターネットサービス)を海外に展開するチームへ異動となり、商標登録や、広告・イベント・スポンサーシップを通じたグローバルブランディングに携わりました。その後、ヨーロッパのアムステルダムの子会社へと異動し、iモードをギリシャ、ブルガリア、ルーマニアのモバイル通信事業者に展開するという仕事をしておりました。ヨーロッパで4年間過ごしたのち、退職をして自費でMBAに行くことを決め、卒業した後、コンサルティングファームで企業買収・再生案件を多く手掛けました。そこから、日本マクドナルドでの企業再生・デジタルマーケティングを実践・経験し、現在に至ります。
-MBAは会社を辞めて行かれたんですね。
NTTドコモにもMBAの社費制度があり、幾度かチャレンジしたのですが選ばれませんでした。入社3年目くらいの頃から果敢に応募し、合計4回くらい受験し、4回とも落ちました(笑)。
腹落ちしないととことん質問攻めにしてしまったりと、俗にいう「うまくやる」ということが苦手なタイプだったので、余計なことを口走って上司からも煙たがられることも多々ありました。気づいたら、「あいつはできない奴」というようなレッテルまで貼られてしまったり・・・一時期、精神的にも追い詰められたりもましたね。評判が芳しくない人材に会社も投資するはずもなく、落ちるべくして落ちたというところでしょうか(笑)
そうこうしているうちに、ヨーロッパへ異動になり、環境が変わった中で一から出直しまして、少しずつですが「うまくやる」ことも身につき、自身の評判も徐々に良い方向に向かいつつありました。おそらく・・・(笑)。でも気づいたら、31歳になっていて社費制度の適齢期は過ぎていたんですよね。さらに結婚もしていて、子供も生まれるというタイミングでしたが、「Better late than never」という気持ちが勝り、腹を括って自費で受験することを決めました。
今思い返すと、あの頃は会社に依存してMBAに行くといった甘い考えをもっていて、真剣に準備にも取り掛からず、ただただ時間だけが過ぎていた気がします。覚悟を決め、やるべきことをしっかりと実行する、という当たり前なことの重要性を噛み締めた経験でした。
MBAはロンドンビジネススクールに行きました。余談ですが、ヨーロッパでの仕事はエキサイティングだったこともあり、あわよくば感を出して人事に連絡し、「合格したのですが、社費制度はないですよね?」と聞いてみたりしました。当然のことながら玉砕しましたが・・・。あっ、腹括ってないですかね(笑)。
MBAという肩書きが自らを追い込む
-なぜそんなにMBAに行こうと思ったのでしょうか?
「なぜMBA?」に対しては、体系的にビジネスを理解したいとか、グローバルな環境の中でリーダーシップをとるための術を身につけたいとか・・・それらしい回答はいくつかあります。でも、これらは、いざ覚悟を決めて受験準備にとりかかってから、もやもやした考えを整理する中でてきたもので、根源にあったのは「グローバルで活躍するにはMBAが必要に違いない」というような緩く浅い仮説だったんです。こんな突っ込みどころ満載な仮説なのですが、正しいと盲目的に信じていたのです。
後日談ですが、いざMBAに行くと、今度は自分の仮説が正しかったことを証明しないと格好悪いというプレッシャーがでてきて、グローバルな環境の中でリーダーシップをとることに貪欲に取り組むようになりました。もうこうなると、MBAそのものがグローバルで活躍するにあたって本当に必要なのか怪しくなってきますが・・・
ロンドンビジネススクールに入学して最初の半年ぐらいは本当に苦労しました。クラス委員やクラブのリーダー等、とにかくいろんなものに立候補したのですがことごとくダメでした(笑)。ただ、幸運なことにそんな僕に手を差し伸べてくれた人がいて、ある学校のイベントの裏方の仕事をする機会をもらいました。その仕事で大きな成果を出すことができ、その後「生徒会もやってみない?」と声をかけてもらい、立候補し、選挙で勝って・・・そこからは自然といろいろな場面で声がかかるようになり、あらゆる学校イベントの代表を務め、自分がリードをとることを徹底的にやり抜くことができました。その甲斐もあってか、Global MBA Student of the Yearというコンペティションの学校代表に選んでいただいたり、卒業式ではStudent Awardsという学校に貢献した人に贈られる賞をいただいたり、はたまたウェールズ公チャールズ(皇太子)の晩餐会にご招待いただいたりと、素晴らしい経験をすることができました。
MBAで学んだことそのもの重要なのですが、今のキャリアがあるのは、どちらかといえばMBAに行くことで自分を追い込んで、より一層努力したおかげなのではないかと思っています。大金を払って自分を追い込む、まさに「若い時の苦労は買ってでもせよ」が重要なんですよね。
-卒業後の最初のキャリアはコンサルティングファームを選ばれたんですね。
コンサルティングファーム一本で考えていました。NTTドコモにおいてハイテクを海外に展開していく仕事に携わる中で、プロダクト・サービスを世界に広げていくという仕事に情熱をもつようになりました。自分の大好きなプロダクト・サービスがあればその会社において海外事業を推進していくのがベストですが、当時はそのようなものにまだ出会えていなかったこともあり、様々な企業の海外展開を支援しているコンサルティングファームで働きたいと考え、ご縁がありローランドベルガーへ参画しました。
当時、ローランドベルガーは「知の体育会系」といわれていたファームで、とにかく考え抜くことに妥協をしないと耳にしていました。実際に入社したらその通りで(笑)。早朝から深夜まで、ノンストップで考え続け、文字通り馬車馬のように働きました。大晦日も元旦も出社してましたし、更にはブラジル・インド・ミャンマー・バングラデシュに立て続けに長期出張に行くということもありました。
実はここでまた、MBAの肩書がプレッシャーになるわけですよ。優秀な新卒コンサルタントから鬼のように詰められ、文字通りボコボコにされましたね。いや辛かった・・・。もうここまでくると、MBAって百害あって一利なしではないかと(笑)。ただ、先にお話ししたのと同様、MBAに行ったことが正しい判断だったと言いたいがために必死に挽回するんです。そしてそのうちに大きく成長できていました。
コンサルティングの仕事はエキサイティングですし、学びも多く、向き・不向きはさておき「このままずっとやり続けるのも楽しいかも」なんて思っていたのですが、3年目を迎えた頃、節目としてふと立ち止まり、「本当は何をやりたいんだっけ?」と考えてみたんです。その際、裏方ではなく、やはり自分の好きなプロダクト・サービスを自分が表に立って世の中に出していく仕事をしてみたい、ということに気づいてしまいまして・・・。そのタイミングで次のチャレンジをすることに決めました。
自分主語でやりたいことができているのか?
-日本マクドナルドには、業績がかなり低迷しているタイミングで入社されたんですよね。
そうですね、当時はかなり不調でした。でもむしろ不調な時のほうが自分の価値が見えやすいですし、そこに迷いはありませんでした。復活することに疑いはありませんでしたし。最初はコンサルティングファームからきたということもあり、再生戦略の策定に携わり、その後、戦略の実行を推進するためCEOオフィスへと異動しました。この時は戦略の実行を実際に担っていただく各部門・現場の方からの信用を得るのに心を砕きました。現場出身の方を大事にされる会社ということもあり、店舗経験のあり・なしが信頼関係を築くのに重要であるということは肌で感じており、何とかしないといけない、と。
当然ながら僕は現場経験がないのですが、今からでも遅くはないと思い、COOにお願いをして店舗勤務をする機会をいただきました。月に僅か数時間程度ですが1年くらいはやらせていただいたかと思います。店舗の皆様にはかなりご迷惑をおかけしたと思いますし、いろいろ叱られました。「それ違いますよ!!」って(笑)。ただ、このような経験を積むことで、多少ながら現場のことが理解できるようになり、実行不可能な無茶な施策をゴリ押しするようなことはなくなり、また各部門・現場の方の中にも「とりあえず話は聞いてやろう」、「ちょっとは協力してやるか」というような雰囲気も生まれてきたように思います。
会社の業績も徐々に回復し、少し落ち着いてきたところで、「今はやりたいことできているかな?」と、また立ち止まって考えてみる機会がありました。すると、まだまだ表に立って自分主語で仕事ができていないな、ということに気づいてしまいまして・・・。そのタイミングで、CMOにお願いし、CEOオフィスの仕事に加え、実行部隊の一つであるデジタルマーケティングとアライアンスマーケティングの仕事を兼任する機会をいただきました。
実行部隊をリードするというのはまた新しい経験でして、やっぱりそう簡単にはうまくいかないわけです。この時は「こんな数字、見たことがない」というくらいの大失敗をやらかし、悪い意味で社内の注目を集めたりもしまして(笑)。表に立つことの厳しさについても身をもって感じました。CMOには事あるごとにこの失敗についていじられていたこともあり、「いつかギャフンと言わせてやる」と心に決めてがんばっていましたね。あぁ、そういえば「がんばるのは当たり前です~」ともよく言われていた気が・・・。
尚、この時は3つの全く種類の異なる仕事を小人数で回さなければならない状況であったため、チームマネジメントをしつつも、自分自身で10くらいのプロジェクトを抱えるという、いわばプレーイングマネジャーという役割を初めて経験し、自身、もの凄くストレッチされました。管理職はチームマネジメントが主たる仕事というような大企業の考え方で育っていたので、新しい働き方に驚きもありました。忙しい日々でしたが、それでも表に立っていることの充実感があり、本当に楽しい毎日でした。
-日本マクドナルドのデジタルマーケティングも注目されているところだったと思うのですが、また新しいキャリアを選ぼうと思ったのは何がきっかけなんですか?
40歳になった時に節目としてふと立ち止まり、今一度、「何をやりたいんだっけ?」と考えてみたんです。ご縁あって日本マクドナルドで仕事をしておりましたが、デジタルマーケティングの仕事をする中で、新入社員の時に直感的に「好き」と感じたインターネットの仕事へのパッションが再燃してしまいまして・・・。丁度その時に、NTTドコモの時の同僚よりFacebook Japanで人を探しているという連絡があり、渡りに船ということで、じゃあチャレンジしてみようと思って現在に至っております。
「やればできるはず」自分を信じてやり抜くこと
-小川さんは、節目節目で自分のやりたかったことに立ち戻って考えることをされていますね。
若い人がキャリアを考える上で、参考になると思うのですが、キャリアについてどのように考えてこられたのでしょうか。
特に周期性はないのですが、意識的に振り返りをするようにしているような気がします。僕は、世の中にあふれている美しいキャリアストーリーは結構後付けだと思っているんです。キャリアは進化すると思っていて、例えば、英語を使う仕事をしていたら、世界を飛び回りたくなって、世界を飛び回るようになったら、今度はグローバル企業の経営者になりたい、そんな風に視野が広がる中でキャリアゴールって変わっていくんじゃないかと思っているんです。これを格好よく言うと「キャリアの進化」。でも世の中で言われているキャリア指導って、最初にゴールを決めなさい、ゴールに向かって君は何をやるかを考えなさい、っていう結論をまず決めてからそこに至るアプローチを考えるのが正しいとされていません? 短期的には確かに正しいアプローチだとは思うのですが、長期的にはこのアプローチは無理です。預言者じゃないので、そんな先の先まで読めません(笑)
キャリアを進化させるには、きっかけづくりが必要で、それには自分が成長して視野が広がる、人に影響を受けて視野が広がる、といった2つの方法があると考えています。例えば仕事を覚えたり勉強をしたりすると意欲が高まったり、飲みに行って友人や先輩の話を聞く中で触発されたり、とかありますよね。そのようなきっかけの中で生まれてくる、「~な仕事をしたい(WILL)」、「~な能力をつけないと、もっと稼がないと(SHOULD)」、「自分の能力を活かそう(CAN)」というような想いを整理する振り返りが大切だと思っているんです。人生のフェーズによりこれらWILL・SHOULD・CANの重みは異なるかとは思いますが、3つが思い通りにすべてはまる仕事が見つかれば最高ですよね。それが同じ会社でずっとできるのであれば素晴らしいです。
NTTドコモ、ローランドベルガー、日本マクドナルド、Facebook Japan・・・一貫性のないように見えるこのキャリアですが、私自身はこのような振り返りにより、徐々に進化しているのだと思っています。
-そのようなキャリアを進化させてお仕事をされてきて、おそらくその中で挫折とかもあったと思うんですけれども、それはどのように乗り越えていらしたんでしょうか?
挫折ですか? いっぱいありますよ。もう今日の話は、挫折の話の連続ですよね。どのように乗り越えたか・・・そうですね、一番重要なのは自信過剰になること。次に、挫折を乗り越えたストーリーを人に語って悦に入る自分を想像する事ですかね(笑)。2つ併せて妄想力とでも言いましょうか。
ありきたりですが、僕は「自分ならやればできるはず」と信じています。その一方で、「結果の出ない努力は努力と言わない」も頭の片隅に入れています。この2つは自分の中でつながっていて、そうすると逃げられないループになって、成果が出るまでやらざるを得なくなっちゃうんです。単なる考え方ではありますが、こういったちょっとした思い込み、または妄想が原動力になっていたりします。このような思い込み・妄想って、小さい成功体験の積み重ねで出来上がっていくんだと思うのです。どんな事でもいいので、勝てそうなものをまず探して、成功体験を作る。これをどんどん積み上げていくことで挫折を跳ね返すことのできるような強い心が備わってくるのではないかと思うんです。「これまでの成功を考えると、僕はできるに違いない」っていう妄想が(笑)。そういう心構えができたうえで次は、挫折を乗り越えたストーリーを人に語って悦に入るところを想像するわけです。いわばゴールを想像するんです。これは挫折をした人の特権です!!
もちろん時としてラッキーもあるとは思います。なので、運を呼び込むのと、後は妄想し続ける、その二つに尽きるのかなと思っています。
小さい成功体験を積み重ねて自分ができると信じてやりきる。
読者の方にもいろいろ参考になるお話かと思います。
ありがとうございました。