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成果をあげるチームを創り上げるためのポイントとは?
新入社員を4月に迎え、早いところでは既に配属がされてOJTを開始されている企業様もあるのではないでしょうか?このコラムをお読み頂いている方の中にも、4月に自分のチームや部署に新卒が入ってきた、つい最近、中途入社の方が入ってこられたという方もいらっしゃるかもしれません。
前回までのコラムでは2回に分けて、シミュレーションによるリーダーシップ開発についてみてきましたが、ご紹介したシミュレーション「エベレスト」の監修者であるエイミー・エドモンソン教授の研究テーマといえば、リーダーシップもそうですが、「Teaming(チーミング)」です。
もともとエドモンソン教授はER(緊急医療チーム)の研究に長く従事していて、患者の命を救うというミッション達成のために、どうすれば効果的なチームが形成できるのか?を研究していました。ERチームというのは常に同じチームで働いているわけではなく、病院ごとのシフトによって、「その場で即座に集まった人がチームとなって治療にあたる」というタスクを実行するのです。これまでにまったく同じシフト、タスクになったことがないので、互いに知らない者同士というケースもあります。そのような状況でチームを形成し、成果をあげるには?というポイントがエドモンソン教授の関心事で、その後、医療現場に限らず企業(Google等)に調査を展開し、見出したのが心理的安全性という大きな基礎部分でした。
では、ERやGoogleといったかなり特殊な組織ではなく、ごく普通のビジネス現場で効果的なチームを創り上げるポイントはあるのでしょうか?
この点について、筆者が受講しているオックスフォード大学・Said Business SchoolのELP(Executive Leadership Program)で紹介された「効果的なチームの8つのポイント」というものを見ていきたいと思います。
効果的なチームの8つのポイントとは?
講義の中で紹介されているのは以下の8つのポイントになります。
- チーム及び部署・会社の優先順位と連動する明確なゴール設定:Have clear goals tied closely to team and organizational priorities
- 自分たちの活動が会社のミッションとどう関係するのかについての理解:Understand how their work fits into the organizational mission
- 明確な役割と責任:Have defined roles and responsibilities
- 明確かつ敬意をもったコミュニケーション:Communicate clearly and respectfully
- 優先順位に従った業務と期限の管理Manage work and deadlines based on priorities
- 相互の信頼と尊重関係:Trust and respect each other
- 共に成功を祝うことと、貢献へのレコグニションCelebrate success together and recognize contributions
- 「継続学習」の実践:Practice continuous learning
言われてみれば当たり前のポイントが並んでいるようにも見えますが、実は「わかっちゃいるけどできていない」ということも多いのではないでしょうか?
例えば2番目のポイントである「自分たちの活動が会社のミッションとどう関係するのかについての理解」という点については、放置されている状態の会社も多く、
「そもそもこの仕事って意味があるんだっけ?」
「あれ、なんでこの仕事やってるんだっけ?」
という声がゼロである組織の方が珍しいかもしれません。
日本企業に限らず欧米企業でも「なんだかよくわからないけど、以前からやっているからやっている仕事」というのはBullshit Jobと呼ばれ、昨年あたりにちょっとしたバズワードとなりました。
また3番目の明確な役割と責任というのはいかがでしょうか?
先日開催された日本の人事部主催のHRカンファレンス2023春で弊社の土井が「パフォーマンスに繋がる良いエンゲージメントとは?」をテーマに講演をさせて頂きました。その講演では、エンゲージメントにはパフォーマンスにつながる良いエンゲージメントと組織をぬるま湯に陥れる悪いエンゲージメントがあり、さらに、良いエンゲージメントを作るための3要素は、貢献実感×成長実感×明確な役割と成果責任である、というお話をさせていただいたところ、ご参加いただいた方々から強く共感する、というお声を非常に多く頂戴しました。エンゲージメントをあげていくことはリーダーや人事部の大きなミッションですが、これまでのように単に対話をすれば良いわけではなく、実績に基づくアプローチを提案したことが印象的だったようです。
なお、HRカンファレンスの土井の講演を見逃した!という方は、弊社主催のオンラインセミナーで同様の内容をさらに深掘りした拡大版を開催しますので、ぜひご参加いただければと思います:詳細はこちら
最後にもう一つ、印象的なポイントであると筆者が感じたのは8つ目の継続学習の実践です。
人的資本経営の導入を受けて、「リスキリング」が一大ブームとなり、「弊社でも社員が自由に学べるオンラインコースを導入しました!」という事例が増えてきました。ここで導入されているのはいわゆるMOOCs(ムークス:Massive Open Online Course)です。MOOCsが意味がないとは言いませんが、現状を見てみるとコース完了率は3-5%程度とかなり低空飛行を続けていると言わざるを得ません。考えてみれば当たり前で、人材版伊藤レポートにもあるように、リスキリングの中身は経営戦略・方針との連動が重要なのですが、残念ながらそれがない企業がまだまだ結構あるのです。自社の方向性、戦略からして求められるスキルを明確にしない限り、どんなリスキリング施策もその効果を十分に発揮することはないでしょう。
また、人的資本経営といった大きなテーマを持ち出さなくても、今の目の前の仕事を題材にした「継続学習」は十分に可能です。
例えばAARという言葉をご存知でしょうか?AARとはアメリカの海兵隊が実践していることで有名になった言葉でAfter Action Reviewを指します。
何かの業務遂行が終わった後で成功・失敗に関わらず
- うまくいったことは何か?
- 再度取り組むとしたらどのような点を改善するか?
- 他のメンバーに共有できるポイントは何か?
- 周囲からどのような支援が必要であったか?
等を振り返ることで、更なる成長につなげていくというやり方です。
(さらにAARの中で実践できる効果的なフィードバックであるSBIについては前回のコラムをご覧ください)
新たなメンバーがチームに加わり、成果をあげていこうとされている今、当たり前に見える8つのポイントをあらためて見直してみてはいかがでしょうか?