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「聞く力」が組織を変える|リーダーに求められるアクティブリスニングとは ~信頼と対話の文化を築くために

目次
「よいリーダーは、よいリスナーでもある」とよく言われます。人の話にしっかり耳を傾けることができれば、あらゆる会話を成長のチャンスに変えることができます。ここでは、リーダーに求められる6つのアクティブリスニングのスキルとテクニックをご紹介します。
アクティブリスニングを使って相手を導く方法
アクティブリスニングとは、相手の話を注意深く聞き、その内容を理解し、適切に反応し、自分の中に留めておくことを指します。日本語で言うと、「積極的傾聴」などといわれることもあります。アクティブリスニングの本質は、単に「聞く」だけでなく、相手に寄り添い、意図や感情を積極的に理解しようとする姿勢にあります。この姿勢によって、話し手と聞き手の両方が会話に積極的に関わることができます。
とはいえ、「聞く」「反応する」「フィードバックする」ことは、時に難しいものです。そこで、特にマネージャーやリーダーに役立つアクティブリスニングのポイントをまとめました。
- 相手の言葉だけでなく、態度や表情にも注意を払う。
言葉の裏にある本音や感情に気づく手助けになります。 - うなずきやアイコンタクトなど、聞いているサインを見せる。
さらに、内容を確かめるための質問を挟むと、理解が深まります。 - 会話中の邪魔を減らす。
スマホの通知や周囲の人からの声かけなど、気が散るものはできるだけ排除しましょう。 - 評価やアドバイスを急がず、まずは相手の話を受け止める。
相手に「聞いてもらえた」と感じてもらうことが大切です。 - 自分の理解が正しいかを確認する。
要点を繰り返したり、「こういうことですか?」と尋ねてみましょう。 - 日頃から、アクティブリスニングの技術を磨いておく。
いつでも自然に活用できるよう、準備しておきましょう。
CCLでは、こうした基本スキルを超えて、相手の言葉の背後にある「事実」「感情」「価値観」まで聴き取れるリーダーの育成を目指しています。組織全体で「本音を聞き、理解する力」を育むことは、次世代のリーダーにとって良きお手本となり、信頼と勇気にあふれた職場文化づくりにもつながります。
6つのアクティブリスニングのテクニック〜アクティブリスニングに必要なスキルセット〜
アクティブリスニングは、ただ「耳で聞く」だけではありません。相手の話を真剣に受け止め、効果的なコミュニケーションを実現するためには、次の6つのテクニックが欠かせません。
1. 注意を払う
アクティブリスニングの第一歩は、相手が安心して話せる雰囲気をつくることです。すぐに反応せず、相手の言葉を最後まで待ちましょう。話を遮ったり、自分の考えを先回りして準備するのは避けてください。また、自分の姿勢や目線、心のあり方にも意識を向け、今この瞬間に集中することが大切です。
2. 判断を保留する
良い聞き手は、相手の話を評価したり批判したりせずに、まず受け止めます。たとえ自分の意見があっても、すぐに口を挟んだり、反論したりしないこと。心を開き、新しい考え方や視点を受け入れる姿勢を持ちましょう。身体の姿勢も重要で、腕を組むより、開いた姿勢の方が相手に安心感を与えます。
3. 気持ちを映し出し、共感を示す
相手の話を「理解したつもり」にならないことが大切です。話の要点を繰り返したり、感情を言葉にしてあげたりすることで、「ちゃんと聞いてくれている」と相手に伝わります。
たとえば、相手が「エマはチーム思いで、皆が彼女についていく。でも締め切りは守れない」と話したら、「つまり、エマさんの対人スキルは素晴らしいけれど、責任感に課題があるんですね」と返します。
また、「どうしていいか分からない」「もう限界だ」といった発言があれば、「かなり行き詰まりを感じて、疲れていらっしゃるようですね」と感情に寄り添いましょう。
4. 確認・整理する
わからない点があれば、そのままにせず確認しましょう。「つまり〜ということですか?」や「少し話が見えなくなりました。もう一度教えてください」と問いかけることで、相手も考えを整理できます。
特に、オープンクエスチョン(自由に答えられる質問)を活用すると、相手が自ら内省し、問題解決につながります。
たとえば:
「具体的にどんなことを試しましたか?」
「チームにどんな悩みがあるか、尋ねてみましたか?」
「エマさん自身は、課題があることに気づいていますか?」 など、相手の考えを引き出す質問を心がけましょう。
5. 要点をまとめる
会話の途中で、話のポイントをまとめることはとても効果的です。お互いの認識をそろえ、次に何をすべきかが明確になります。
たとえば: 「整理すると、エマさんはマネージャーに昇進し、チームから信頼されている。でも、責任を持たせる部分で課題があり、その結果ミスが繰り返されている。これまで色々試してみたが、効果が出ていない。――ということでよろしいですか?」
要点を再確認することで、誤解を防ぎ、行動に結びつけることができます。
6. 自分の考えも共有する
アクティブリスニングは、まず「相手を理解すること」ですが、最後には「自分の考え」も伝えていくことが大切です。相手の立場や気持ちを理解したうえで、自分の意見や提案を伝えると、相手も受け入れやすくなります。
会話の終盤では、問題解決に向けて「どんな仮定をしている?」「他に試せる方法は?」「まだ知らない情報は?」など、共に考えるスタンスを持ちましょう。
アドバイスを押し付けるのではなく、相手が自分で答えを見つけられるように導くことがポイントです。
これら6つのテクニックを意識することで、どんな会話も「成長につながるコーチングの場」に変えることができます。
「聞くだけ」では足りない――行動が重要|リーダーの「聞く力」と「行動」、そして従業員の声のつながり
リーダーとして覚えておくべき大切なことがあります。それは、アクティブリスニング(積極的傾聴)がどれほど重要であっても、「聞くだけ」では相手に「聞いてもらえた」とは感じてもらえない、ということです。
従業員が意見や提案を伝えるのは、自分たちの職場をより良くしたいという思いからです。しかし、その声を受け取ったリーダーが「どう行動するか」こそが、真の信頼につながります。
私たちの調査では、「話を聞いたあと、実際に行動を起こしたリーダー」のもとで働く従業員は、「話を聞いてもらえた」と感じる割合が、行動を起こさなかったリーダーのもとで働く場合の 2倍 にもなる ことがわかっています。
つまり、たとえリスニングスキルが完璧でなくても、相手の声を受け止めて何かしらのアクションを起こした方が、「ちゃんと聞いてくれた」と思ってもらえる のです。逆に、どれだけ熱心に耳を傾けても、その後の行動が伴わなければ、「結局何も変わらなかった」と思われてしまう可能性が高いのです。
アクティブリスニングに「行動」を組み合わせることで、従業員の声を引き出す文化 が育まれます。これは、組織にとって非常に重要です。なぜなら、従業員が安心して声を上げられる環境は、より良い意思決定 や イノベーションの促進 につながるからです。一方で、「意見を言えば評価が下がるのではないか」「関係性が悪くなるのではないか」と不安を感じる職場では、従業員は沈黙を選びがちです。その結果、組織は貴重な情報や新しいアイデア、改善のヒントを失ってしまいます。
だからこそ、部下や同僚が意見や懸念を伝えてくれたとき、しっかり聞くだけでなく、その声を行動につなげることが必要です。私たちが「アクティブリスニング+行動」を思いやりあるリーダーシップの必須条件としているのは、こうした理由からです。
リーダーとして一番大切なのは、「聞いたあと、どう動くか」。それこそが、周囲に「この人は本当に聞いてくれている」と思ってもらえる、何よりの証なのです。
アクティブリスニングがもたらす5つのメリット
ここで一度立ち止まり、なぜアクティブリスニングが重要なのか を整理しておきましょう。
- 相手へのリスペクトが伝わる
相手の話をしっかり聞くことで、「あなたの意見は大切です」というメッセージが伝わります。
これは、職場での安心感や一体感 を育み、「この職場では自分の存在が尊重されている」と感じさせる効果があります。 - 理解が深まり、問題解決につながる
丁寧に耳を傾けることで、相手やチームの状況を正確に把握 できます。
その結果、適切な判断や行動ができるようになり、職場の課題解決に直結します。 - 心理的安全性が高まる
思いやりを持って話を聞き、質問をし、相手の視点に興味を持つことで、「ここなら本音を話せる」 という信頼関係が生まれます。これは職場だけでなく、家庭・友人関係・あらゆる対人関係 においても効果的です。 - 建設的なフィードバック・コーチングができる
アクティブリスニングは、部下やチームメンバーを成長させるための第一歩 です。
相手の話を十分に理解したうえで、的確なフィードバックやサポートができるようになります。 - 組織全体の「聞く文化」をつくる
日常的にアクティブリスニングを実践することで、「お互いの意見を尊重し合う文化」が根づきます。
これは、信頼と尊重があふれる職場環境 づくりにつながります。
アクティブリスニングのスキルを実践し始めると、それがさまざまな分野でポジティブな影響をもたらすことに気づくでしょう。たとえば、リーダーとしての効果的な働きかけ、人間関係や仕事上の関係、そしてさまざまな社会的な場面で、その効果が表れてきます。
自分の「聞く力」、本当に足りている?
私たちは、自分のリスニングスキルを過大評価しがち です。「ちゃんと聞いているつもり」でも、実際は相手にそう伝わっていないことがよくあります。
特にリーダーは、情報過多・多忙・ストレス によって、意識せずに「聞けていない」状態に陥ることが少なくありません。その結果、誤解・心理的な壁・孤立感 を生んでしまうリスクがあります。
あなたも当てはまるかも?チェックポイント|次の項目のうち、心当たりがあるものはありませんか?
- 相手が愚痴・雑談・批判的 な内容を話しているとき、つい聞き流してしまう
- 相手の話の途中で自分の返答を考え始めてしまう
- 反論や指摘をされるとイライラしてしまう
- 相手の話がネガティブな内容 だと、つい聞き流してしまう
- 相手の話が終わらないうちに、すぐにアドバイスや解決策 を提示してしまう
- 相手が感じていることに対して、「そんな風に思う必要ないよ」と気持ちを否定 してしまう
- 自分ばかり話して、相手の話す時間がほとんどない
もし1つでも「当てはまるかも…」と思った方、大丈夫です。 多くの人が無意識にやってしまいがちなこと です。 大切なのは、気づいたその瞬間から、意識して改善しようとすることです。
アクティブリスニングを上達させるための具体的な方法
アクティブリスニングは「意識して」取り組むことで、確実に上達します。以下のポイントを日々意識して実践してみましょう。
アクティブリスニングを高める10の実践法
- 自分の心と身体を整える
人の話をしっかり聞くためには、自分自身が心身ともに整っていることが大切です。
十分な睡眠、食事、そして目の前の相手に集中できる心の余裕を持ちましょう。 - 気が散るものを取り除く
スマホをサイレントにする、通知を切る、人の出入りがない静かな場所で話すなど、集中できる環境を整えましょう。 - 「聞く姿勢」を意識する
身体の姿勢は、相手に「聞いている」「受け入れている」というサインになります。
相手の方を向き、リラックスし、適度に前のめり で、目線を合わせましょう(文化によっては目線の合わせ方に配慮を)。 - 相手が「何を求めているか」に気づく
会話の目的は様々です。アドバイスが欲しいのか、ただ聞いてほしいのか、問題解決の協力を求めているのか…。
例えばこう尋ねてみましょう。
「今日は、意見が欲しいのか、ただ聞いてほしいのか、どうしましょう?」
「まだわからない場合は、とりあえずお話を聞いて、一緒に考えましょう」 と添えるのも効果的です。 - 「自分が何を言いたいか」ではなく「相手が何を言っているか」に集中する
相手の発言にすぐ反応しようとせず、相手の最後の一文を繰り返せるくらい 聞くことに集中しましょう。 - 言葉以外のサインにも注意を払う
相手の表情・声のトーン・姿勢 など、非言語的な情報からも、伝えたい感情を読み取りましょう。 - 沈黙を恐れない
会話の途中であえて沈黙を受け入れる ことで、相手も自分の考えを整理しやすくなります。
8割は聞く、2割は話す くらいの意識で臨みましょう。 - 「好奇心」を持つ
相手の話に興味を持ち、「この人はどんな考えを持っているのだろう?」 という気持ちで耳を傾けると、自然と評価や判断を手放せます。 - 相手に先にアイデアや解決策を考えてもらう
アドバイスや意見をすぐに伝えるのではなく、「あなたはどう考えますか?」 と問いかけ、相手自身が答えを見つける手助け をしましょう。 - 要点を繰り返し、理解を確認する
「私の理解が合っているか教えてくださいね」と前置きし、相手の話の要点をまとめて返す ことで、誤解を防ぎます。また、必要であれば時間をおいて再度話すのも効果的です。たとえば、「よかったら、今の話を整理してメモにしてみませんか?次回、一緒に考えましょう」と提案してみましょう。
アクティブリスニングを磨けば、人間関係が変わる
リーダーのアクティブリスニング(積極的傾聴)スキルを磨き、組織全体での対話を強化するための新たなスキルを身につけることは、非常に重要です。仕事でも家庭でも、アクティブリスニングのスキルを実践することで、より良いリスナーであり、より効果的なコミュニケーターになることができます。
弊社「株式会社インヴィニオ」は組織能力開発・人財開発の専門企業として、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットしています。事業上の成果として表れるように、リーダーのアクティブリスニングのスキルを引き上げ、引き出し、顕在化させることを重視しています。
リーダーのアクティブリスニングのスキルを高めて、より良い組織としての成果をさらに高めたいとお考えの場合は、ぜひこちらから気軽にお問い合わせください。