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思いやりのあるリーダーシップとは?ウェルビーイングと帰属意識を育む
目次
思いやりのあるリーダーシップとは、部下など周囲の状況や心理状態を正確に認識し、課題解決に向けた適切なサポートや後押しを行うことです。
昨今、多くの企業が課題に掲げている従業員の「ウェルビーイング」と「帰属意識」の実現にも非常に有効なリーダーシップといえます。
そこで本記事では「思いやりのあるリーダーシップ」について、定義や重要性、最重要ポイント、共感との違い、発揮する方法4ステップを紹介します。なお本記事の内容は、世界を代表するリーダー育成のプロであるCCL社(Center for Creative Leadership)が、綿密なリサーチおよび支援実績を基に導き出したものですので、ぜひ参考にしてください。
思いやりのあるリーダーシップとは
思いやりのあるリーダーシップとは、部下など周囲の状況や心理状態を正確に認識し、課題解決に向けた適切なサポートや後押しを行うことです。
そもそも「思いやり」とは、人の状態を認識し、その人を心から心配し、助けるために行動を起こそうとする気持ちのことです。それは、困難な時期や複雑な状況、持続的な問題を乗り越えるために、その人とともに歩む勇気を持つことでもあります。
「思いやりの心は、人間関係構築の中心にある」と語るのは、フラッグシッププログラムである「リーダーシップ開発プログラム(LDP)®」をはじめ、CCL社のコアなリーダーシッププログラムの3つを担当するカリッサ・マッケンナです。
他者を動かすための核心は、思いやりのあるリーダーシップにあるといえるでしょう。
また、思いやりのあるリーダーと聞くと親身になって話を聞いたり、誰にでも共感を示すだけでなく、直属の部下の問題を解決したり、苦痛を取り除くリーダーをイメージする方は多いのではないでしょうか。
しかし、それは真に思いやりのあるリーダーの姿ではありません。
真に思いやりのあるリーダーは、共感的な関心にとどまらず、生産的な行動を起こします。つまり、課題を克服するメンバーをサポートし、摩擦を減らすシステム的な方法を探し、チームや組織の生産性を高めるのです。
皆さんの職場で「思いやりのあるリーダーシップの実践」に取り組み始めるには、無料の会話ガイドをダウンロードし、チーム内で話し合いを行ってください。
思いやりのあるリーダーシップの重要性
思いやりのあるリーダーは、チームの信頼関係を強化して連携を高め、離職率を低下させることが、研究により明らかになっています。
今日の職場は、刻々と変化しています。チーム内、業界内、そして私生活に至るまで、内外の力が常に変化しているのです。そのため、自分自身とチームの両方に「思いやり」が欠かせません。リーダーが自分自身と他者に対して思いやりを持つことで、チーム全体が将来の課題に対処する能力を高めることができます。
思いやりは、リーダーシップの中で最も強力な行為の1つであり、それは些細な方法で現れます。「辛いこと、痛いこと、嬉しいこと、興奮すること、がっかりすることなど、一瞬一瞬を大切にすることです」とマッケンナは語ります。
思いやりのあるリーダーシップの最重要ポイント
最も重要なのは、「思いやりのあるリーダーは、部下や同僚がどんなトラウマを抱え、どんな困難に直面しているか以上に、その人の個性を認めている」という点です。
つまり、ある人が特定の苦難に直面していることはもちろん、その人には「独自の強みがあること」を認識するのです。思いやりのあるリーダーは、その人が抱える問題を解決するだけでなく、その人を成長させようとします。
これにより、当事者の隠れた才能を発見し、他の人のスキルや貢献を活用する新しい方法を見つけることができるのです。
最終的に、思いやりのあるリーダーシップは、組織全体の文化を変え、すべての人に大きな協力と優しさをもたらします。社員がリーダーを信頼すれば、リーダーは大胆で勇気ある行動を取りやすくなります。そして、社員が自分の意見や経験が大切にされていると感じれば、そうしたリーダーの行動を適切にサポートでき、企業全体に利益をもたらせるのです。
「共感」と「思いやり」の違い
「共感」は、相手が感じていることをそのまま感じとることです。対して「思いやり」は、相手がどう感じているかを正確に理解することです。
職場においても「共感」はあった方がよいでしょう。しかし、誰かが感じていることをそのまま感じることは時に苦痛を生むため、あまり生産的ではないでしょう。これは、他人の痛みや苦しみを目の当たりにすると、脳内のネットワークが活性化し、同様のネガティブな感情が誘発・増幅され、感情的な燃え尽き症候群になりやすいという研究結果によっても指摘されています。
例えば、救急外来の医師が、救急外来の患者さんに過剰な共感を覚えたとします。その医師は、いざというときに専門的な助けを提供する重要な役割を果たすことができず、個人的にも燃え尽き症候群になりやすくなるのです。
対して「思いやり」は、異なる神経ネットワークに関与し、ポジティブな感情、レジリエンス、困難な状況での苦痛を克服する能力を高めることが分かっているのです。つまり、思いやりは、他者を助けるために行動を起こす可能性を高める点が、共感とは大きく異なるのです。
「医師に必要なのは、共感ではなく、思いやりです。この場合、苦しみを認識し、文字通りその人をケアする能力です」とマッケンナは語ります。
さらに「もしあなたが他人の感情に寄り添い、何もせずにその苦しみから抜け出せないとしたら、あなたとあなたの直属の上司の両方にとって、燃え尽き症候群やより広範な組織の問題につながる可能性があります」とマッケンナは述べています。
だからこそ、変化と混沌に満ちた現代において「自分の感情を処理するのがやっとで、部下の感情まで処理するのは難しい」と感じているリーダーは、「思いやり」を重視すべきなのです。
思いやりのあるリーダーシップを発揮する方法4ステップ
思いやりのあるリーダーシップを発揮する方法を4ステップで紹介します。
リーダーは、日常生活の中で、思いやりのあるリーダーシップを発揮する機会を多く持っています。このような機会を認識し、チームや組織の文化に変化をもたらすために、どのように活用すればよいかを理解しておきましょう。
1.自身への思いやり(セルフ・コンパッション)から始める
自分への思いやりの力を見逃してはいけません。他人に思いやりを示す前に、自分自身にも同じように思いやりを示すようにしましょう。
ある研究によると、リーダーは自分への思いやりを示すことで、より良いパフォーマンスを発揮することが分かっており、自信よりも目標達成の予測に役立つとされています。
ここでは、具体的な方法を3つ紹介します。
「小さな真実」を「大きな嘘」より重視する
「私たちがリーダーシップ・プログラムで見てきたリーダーの少なくとも3分の1は、自分自身に対する思いやりをもっと必要としています」とマッケナは述べています。その上で「彼らは多くのことを経験し、自分の不手際について自分を責めているのです。しかし、不完全な部分は、気づき、大切にするものなのです」と続けます。
マッケナは、自分に言い聞かせていることの中にある「小さな真実」と 「大きな嘘」を区別する能力が重要であると指摘しています。
例:プレゼンテーションが計画通りにいかなかった場合
- 小さな真実:プレゼンテーションの説明順を間違えてしまった
- 大きな嘘:上級管理職からの信用を失ってしまった
小さな真実は、ほとんどの場合、対処し、そこから学び、成長することができるものです。しかし、大きな嘘は、麻痺させ、膨大なエネルギーを費やすことになります。
小さな真実ではなく、大きな嘘に焦点を当てるリーダーは、自分自身に厳しすぎます。自分の失敗を慈しまないことで、経験から学び、再挑戦するチャンスを逃してしまうのです。
自分自身へ語りかける
自分への語りかけは本当に重要です。声に出すにせよ、頭の中で考えるにせよ、日記に書き留めるにせよ、ポジティブなセルフトークの力を借りて、心の健康とリーダーシップの有効性を向上させましょう。
1つのコツは、自分に対して二人称で話すことです。「私」ではなく「あなた」を使いましょう。そうすることで、大切な友人と話すように、自動的に自分に話しかけることができるようになります。正直でありながら、より優しくなれるのです。
レジリエンスを高める
ワークライフバランスや、ストレス、不確実性、挫折に対処するためのレジリエンス(回復力)を高めましょう。
セルフケアや休息のための時間を取ることは、弱さではありません。なぜなら、不完全な自分に気づき、それをケアする機会を作ることで、周囲にも同様の機会を提供できるようになるからです。これにより、より高いレジリエンスをもつ思いやりのあるリーダーになることができるのです。
リーダーが自らの可能性を最大限に発揮するためには、ウェルネス(健康維持や病気予防)のための時間を作る必要があります。そして、リーダーが自分のために時間を使うことを周囲に示すことは、組織レベルで従業員のウェルビーイングの重要性を理解していることを明確にすることになります。
2.心理的安全性を優先する
思いやりのあるリーダーシップを発揮するためには、各々が自分らしさを存分に発揮できる風土づくりが大切です。「グループやチームで何かを成し遂げようとするとき、一人ひとりが人生の経験や視点、長所や短所を持ち寄り、それを活用することができる」とマッケンナは述べています。
職場に心理的安全性があれば、社員は安心して発言し、質問し、懸念を共有し、敬意をもって反対意見を述べることができます。
個人が報復を恐れずに失敗を共有し、互いの違いに押し潰されることなく活力を得ることができれば、多様な考えに対する開放性が高まり、リスクを取ってイノベーションとコラボレーションを促進できます。相乗効果で、チーム全体が利益を得ることができるのです。
また、自分の失敗から学んだら、その教訓をチームと自由に分かち合いましょう。これは、「失敗から学ぶことを大切にしていること」を示すとともに、「部下に失敗を成長の機会としてとらえるように促すこと」につながります。加えて、正直さや素直さが評価される環境を作ることができます。もちろん、「成功を認めて褒め称えること」も忘れないでください。
リーダーの態度や行動は、チームが心理的に安全だと感じられるか否かに大きな影響を与えます。礼儀正しさや優しさは、直接関係する人だけでなく、組織文化にも影響を与えます。
上司の不誠実な態度は、組織の2階層下の心理的安全性に悪影響を及ぼすという研究結果もあります。さらにCCL社の大規模調査では、初任リーダーの半数以上(52%)が「ミスやリスクを取るのは安全ではない」と回答しています。このことは、心理的安全性の欠如が、更に上の階層を担い、組織でより大きな貢献をすることを妨げていることを示唆しています。
3.他者への理解を深める
好奇心旺盛なマインドは、思いやりのあるリーダーシップの基本です。まず、リーダーは同僚や直属の部下が直面している課題に気づき、質問をすることでより深く学び、理解の幅を広げていくことが求められます。
リーダーはすべての答えを持っている必要はありませんが、アクティブリスニング(相手の感情を引き出して自力での問題解決を支援する傾聴)を実践することで、相手を深く理解できます。事実とその背後にある感情や価値観の両方を理解することが重要であり、相手が何を大切にしているのかを知れるでしょう。
心理的に安全な環境で好奇心をもって耳を傾けると、思いやりとつながりを伝えるオープンエンドな質問への扉が開かれます。これにより、リーダーが他者の視点を大切にしていることを示しつつ、チーム全員が一致団結できていない理由や、共通の方向へ進むことを妨げている要因について洞察を得ることができます。
また、相手の様子に気づき、それについて尋ね、その答えの中にある事実、感情、価値観に耳を傾けるという単純なことでも、強力なリーダーシップの実践になります。
例えば、「大変そうですね、何かできることはありませんか」と声をかけるだけでも、思いやりのあるリーダーシップを発揮することができます。同僚が心配事や苦難、挫折を打ち明けた際には、親切な対応を心がけることが大切です。ジレンマを別の角度から見ることができるような質問を投げかけ、得られた情報は次の行動に役立てましょう。
4.意味のある行動をとる
思いやりのあるリーダーシップとは、単に同情的な耳を傾けることではありません。むしろ、ただ共感するだけで何も行動を起こさないのは、個人や組織全体にとって有害とまでいえるでしょう。
リーダーが従業員の話をよく聞いていたとしても、実際に行動しなければ、従業員は本当に話を聞いてもらったと感じないことが、CCLの研究によって指摘されています。なぜなら、社員が悩みを打ち明ける際には、それが組織のポジティブな変化につながることを期待しているためです。期待が叶わなければ、社員は話を聞いてもらえないと感じ、以降は発言の可能性が低下します。
思いやりのあるリーダーは、受動的でなく、言い訳を受け付けません。リーダーが部下に権限を与える行為は、部下が約束を果たすと信頼していることを示します。また、「一人の社員が責任を果たさないことで、他の社員がすべての問題を抱え込むことも避けたいものです」とマッケンナは述べています。
リーダーは、部下の問題を解決するために自らが介入するのではなく、権限を提供することが可能です。その結果、権限を委譲された部下は、課題を解決するために必要なツールを手に入れ、より強力な問題解決者へと成長することができるのです。
相手から話を聞いた後、問題の解決にどのような支援ができるかを尋ねましょう。相手が何を必要としているのか、どのようにすればそのニーズに対処できるのか、役に立つ他のリソースはないのか等、相互理解を深めるように努めましょう。また、相手が問題を解決するために「無用な摩擦を取り除く必要はないか」についても確認してください。
従業員のウェルビーイングと帰属意識を高めるために
思いやりのあるリーダーは、共感的な関心を超えて、生産的な行動を起こします。そうでなければ、組織は決して強く、生産的になることはないでしょう。
今日の職場は、刻々と変化しています。チーム内、業界内、そして私生活に至るまで、内外の力が常に変化しているのです。そのため、自分自身とチームの両方に思いやりを持つ必要があります。思いやりのあるリーダーシップは、従業員のウェルビーイングと帰属意識を育み、仕事の満足度とパフォーマンスに影響を与える重要な要素です。
自分自身と他者に対して思いやりのあるリーダーであれば、個人として、チームとして、組織として、さらには社会へも影響を与えることができるでしょう。
弊社「株式会社インヴィニオ」では、20年以上積み重ねてきた確かな実績と、CCLを含む世界中のアライアンスパートナーから得た最先端のノウハウを用いて、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットしています。
リーダーの「育成」だけでなく事業上の成果として表れるように、個人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化できるのが強みです。
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