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共感力を高める3つの方法|注意点を理解してインクルーシブな組織へ
目次
共感力を高める方法を知りたい方は多いのではないでしょうか。個人に限らず、自らのチームや組織の共感力を底上げしたいと考えるケースも少なくありません。
ただ一方で「共感力」の重要性はよく指摘されるものの、具体的な高め方や共感力に潜むリスクや注意点について述べられることは稀です。
そこで今回は共感力について、高める方法と注意点をそれぞれ具体的に紹介します。なお本記事にて紹介する内容は、世界を代表するビジネス人材育成のプロであるCCL(Center for Creative Leadership)が、綿密なリサーチおよび支援実績を基に導き出したものですので、ぜひ参考にしてください。
共感力を高める3つの方法
共感力を職場で高めるための方法を3つ紹介します。
共感的傾聴を心がける
共感的傾聴とは、相手の話をただ聞くのではなく、話し言葉のニュアンスや感情、動作などにまで注意を払い、共感を示しながら本音を理解する姿勢です。「行間を読む」と表現されるように、言葉には表れていない内容を読み取る姿勢ともいえるでしょう。
自らの洞察と感受性を用いて、相手の思考、感情、経験まで読み取る努力をすることで、年齢、性別、人種の壁を越えたコミュニケーションが可能となります。
共感的傾聴のポイントを以下にまとめます。
- 正確に理解するために「なぜ」に注目する
- 忍耐強く耳を傾け、相手を急かせない
- 好奇心を抱き、一般的な考え、主張、哲学に疑問を抱く
- 心を開き、真実に耳を傾ける
- 意見が違っていても耳を傾ける
- 相手の立場に立って耳を傾ける
- 関心があることを示し、わからないことがあれば質問をする
リーダーが積極的な傾聴スキルを身につければ、社員がより安心して厄介な問題に対処できる環境が生まれます。さらに、尊敬と包容力に満ちた職場環境を築くことができるのです。
共感的傾聴によって得られる効果
共感的傾聴によって、どのような効果を得られるかの一例を挙げます。
あるチームメンバーが、現在の役割や責任を降りたいと言い出しました。共感力のあるマネージャーは、そのメンバー独自の視点や経験の裏にある意味や感情に耳を傾けることに集中します。これにより、率直な対話ができる環境が整います。
このような対話をした社員は、リーダーからの助言に対して、次のように感じることでしょう。
「私の上司は素晴らしい。本音で語り合うことができました」
「上司と面談するのは緊張したけど、思いやりをもって話を聞いてくれたことに驚きました」
「私のことを理解してくれている。こんなに素晴らしい上司は初めてです」
相手に焦点を当て、相手を気遣う対話をすることで、相手が置かれた状況が仕事やプライベートにどのような影響を及ぼすかを感じ取ることができるのです。共感的傾聴により、リーダーはチームメンバー個人とチーム全体をサポートできる選択肢を複数見出すことができるようになります。
自分らしさを発揮する
「自分らしさを発揮する」とは、自分が誰で、何を考え、どのような信念を持っているのかについて、真摯かつ率直であることを指します。自分らしさの発揮は、互いの個性や違いを尊重しあえるインクルーシブな組織文化の基礎となる信頼関係を築き上げます。
自分らしさを発揮したリーダーシップを目の当たりにした社員は、自らも発揮して働こうというモチベーションが生まれます。協力関係、信頼関係、効果的なコミュニケーションを通じて、チームが自分らしさを持って行動するようになります。
このシナリオの背景にあるのは共感力です。プールのように、共感力は真の関係性を維持する水です。自分らしさを高めると、共感プールが拡大します。
以下でリーダーが自分らしさを活性化する方法を紹介します。
- 職場でも家庭でも、自分らしさを表現する
- 直属の部下に、彼らの個性と才能を心から評価していることを伝える
- 社員が審判や返報されることを恐れず、自分のニーズを正確に伝えられる開かれた空間を作る
- 新しいアイデアを歓迎し、誠意に満ちた生産的な対話を奨励する
- 自分の失敗を認め、弱さを示すことで、失敗も学習の一部であることを示す
- 自分の好き嫌い、趣味、関心事を率直かつ適切に共有する
- 自分の言葉、信念、考えを一致させる
リーダーが自分らしく行動することで、社員が安心して厄介な問題に取り組める環境が生まれます。その結果、社員が共感に根ざした職場環境が築かれやすくなるのです。
社会的感受性を鍛える
社会的感受性とは、相手の本音や心理状態を、しぐさや話の文脈から感じ取る能力です。これには、異なる経験(例:性別、階級、宗教など)による視点や社会規範を尊重することも含まれます。
以下のようにして共感力と社会的感受性を高めることができます。
- 様々な人々と一緒に時間を過ごし、彼らのライフスタイル、信念、世界観を知る
- 人々がどのように会話しているのか、どのようにチームが協力し合うかに関心を持つ
- ボディランゲージや声のトーンなど、相手が自分に反応する際に示す非言語的合図に注意を払う
- 社会的アイデンティティや社会規範を尊重する方法についての講習を受ける
- 特定の問題について、自分が同意できない人から意見を求めることを学ぶ
- 新しい人を会議に招くなど、インクルージョンに焦点を当てた行動をとる
- 新たな言語を学ぶ
リーダーが社会的感受性と共感力を持って行動すれば、社員が安心して様々な問題に対処できる環境が整います。その結果、共感に根ざした職場環境が築かれやすくなります。
共感力とインクルージョンの関係性
共感とインクルージョンの関係性は深いです。
そもそもインクルージョンとは、「包括・包含」を意味する言葉です。 ビジネスにおいては、組織内のメンバーそれぞれの個性や違いが尊重され、個々が能力を発揮できている状態を指します。また、インクルージョンが行きわたっている組織を「インクルーシブな組織」と称します。
「共感」は組織内のメンバーを人間的なレベルで結びつけることで、職場のインクルージョンを促進します。まるで水のように、共感がプールに溜まることで、心理的安全性と帰属意識に満ちた職場となるのです。
反対に共感のプールが干上がってしまえば、従業員エンゲージメントや顧客満足などに害を及ぼし、組織のあらゆる指標を悪化させてしまいます。
共感力から生まれるインクルージョン、そのどちらの要素も組織にとっては重視すべきものといえるのです。
共感力の注意点
共感力の注意点について解説します。ここまで、主に共感および共感力の重要性や有効性についてを紹介してきましたが、注意点もいくつかあります。共感がもたらすリスクも理解して、安定性と生産性の高い組織を実現させましょう。
行き過ぎた共感による偏見
人は自らと同じような人物には共感しやすく、自らと異なる人物には偏見を持つという研究結果があります。
その結果、リーダーは公平性をもって指揮をとらず、自分と類似点の多い直属の部下に対しては無意識に共感し、「より良い任務を任せる・昇進させやすくする・より高額なボーナスを与えてしまう」といったことが生じてしまいます。
行き過ぎた共感による偏見を避けるためには、以下を考慮してください。
- 自分とは違う人の視点に立つ
- 特別扱いに対して責任を負うような組織的な仕組みを導入する
- しっかりした意思決定をするための情報を求める
共感疲れ
他人の苦しみや悩みに共感することで、疲弊やトラウマにつながることがあります。
例えば、ERの医師や看護師は、交通事故などの恐ろしい事故の被害者を毎日治療しています。最近の研究によると、過剰な共感、あるいは見当違いの共感は、最終的に疲労や無気力につながり、必要な人を助けることができなくなるといわれています。
共感疲れに対処するには、次のことを考慮してください。
- 「疲れ」を認識する
- 睡眠、レクリエーション、家族や友人と過ごすなど自分のケアを行う
- 他者から共感を得る
一過性の共感
共感を通じて共感対象に夢中になることがありますが、対象への関心が維持されないケースも起こりがちです。思いやりを生む強力なエネルギーが、意義ある行動が取られる前に消え去ることがあるのです。
こうした現象は、ソーシャルメディアでもよくみられます。ヨーロッパの海岸に打ち上げられた難民の子供の写真が最初に登場したとき、何百万人ものFacebookユーザーが刺激され、1日で何百万ドルもの寄付が集まりました。しかし、その後の数日間で、人々の関心は別のものに奪われ、難民危機への関心は忘れ去られました。
一過性の共感を防ぐために、以下のことを心がけましょう。
- 一度に複数の対象に共感の焦点を当てない
- なぜその共感対象が重要なのかをよく考える
- 自らの共感がインクルーシブな職場環境の構築にどれだけ貢献しているかを考える
共感力の習得には時間・労力・ノウハウを要する
共感力を含め、新しいスキルを身につけるには、時間と労力を要します。リーダーや社員が共感力を学び、高めるための機会を用意する必要があります。
ただし、信頼のおけるノウハウに基づいた内容でないと「共感力が過度に活用される」「効果的に活用されない」といったリスクがあります。
共感力を高めてインクルーシブな組織を実現するには
共感力を高めてインクルーシブな組織を実現するには、リーダーをはじめ各社員への教育が不可欠です。ただ一方で先述の通り、共感力の習得には時間・労力・ノウハウが必要なため、自社のみでの実現は難易度が高いといえるでしょう。
弊社「株式会社インヴィニオ」は人材育成のプロとして、学びを知識や能力のレベルに留まらせるのではなく「実力」へと昇華させることにコミットします。事業の成果として表れるように、人や組織が保有する「成果を生み出す能力」を引き上げ、引き出し、顕在化させることを重視しています。
「共感力の注意点およびリスクを回避しつつ正しく習得させて、成果や実績にまでつなげたい」とお考えの方は、まずはこちらから気軽にお問い合わせください。