leadership-insight
リーダーシップインサイト

- ホーム
- リーダーシップインサイト
- リーダーであれば誰しもが直面する世界共通の6つの課題とは
リーダーであれば誰しもが直面する世界共通の6つの課題とは

今日、組織を率いる上で最も困難なことは何でしょうか?また、リーダー達が直面する課題は世界各地で異なるのでしょうか?
CCLの研究者達は、この問題を解明するため、リーダーシップにおける重大な課題は何かを、中国/香港、エジプト、インド、シンガポール、イギリス、スペイン、アメリカの組織に所属する763人のミドルレベルおよびエグゼクティブレベルのリーダーに対して直接尋ねることにしました。
その結果、それぞれが抱える課題や具体的な状況の表現には違いがあるものの、世界中のリーダーたちは共通して、同じ6項目の課題に直面していると回答しました。
世界中のさまざまな業種、組織、職場環境のリーダーたちが抱える課題が、これほどまでに共通していることは、意外なことかもしれません。しかしながら概して言えば、これら6項目の課題は、どのような状況にあっても、ミドル・マネージャーやシニア・マネージャーの役割を担うリーダーに当てはまると考えられます。
したがって、これらの重大な課題は、世界中どこでも、すべての組織において、経営者育成の根幹をなす重点分野となるべきといえます。
では、世界で最も共通したリーダーシップの課題とは何でしょうか。
リーダーたちが共通して直面する課題6項目
世界は異なっているのではなく、むしろ似通っている
地域、業界、組織文化に関わらず、どのリーダーも社内外の課題に直面しています。これらの課題は、リーダーの日常業務だけでなく、彼らのキャリアに影響を与える可能性があります。
当社のホワイトペーパーでも指摘しているように、地域に関係なく、リーダーたちが共通して直面する6項目の課題は次のとおりです:
1.効率性を高める
時間管理、優先順位付け、戦略的思考、意思決定、仕事のスピードアップなど、より効率的に働くための関連スキルをいかにして伸ばすかという課題です。
2.周囲を鼓舞する
チームメンバーが自らの仕事に満足し、より活発に働くことがでるよう、リーダーはどのように鼓舞し動機付けを行うべきかという課題です。
3.社員を育成する
コーチングやメンタリングなど、効果的に社員を育成するにはどう行うべきかという課題です。
4.チームを統率する
チームビルディング、チーム開発、チームマネジメントに関する課題も重要です。どのように自尊心を持たせるか、どのようにサポートを提供すべきか、どのように効果的なコラボレーションを行うか、どのように大きなチームを統率するか、どのようにしてチームの規範を設定するか、そして新しくチームを引き受けるときに何をすべきか、等が挙げられます。
5.変化の中でメンバーを導く
変化に対応し、変化に向けて意識を高め、変化を理解し、変化の中で導くという課題は、成功するチェンジリーダーになることが容易でないことを意味します。そのためには、変化による影響を和らげる方法、変化への抵抗を克服する方法、変化に対するチームメンバーの反応に対処する方法を知る必要があります。
6.ステークホルダーを管理する
リーダーシップに関する最後の課題は、職場における人間関係、社内政治、イメージの管理です。これには、経営陣の支持を得ること、上司との良い関係を構築すること、周囲に影響を与えること、他の部署やグループ、個人から賛同を得ることなどが含まれます。
リーダーシップにおける重大な課題が顕在化するのはどのような場合か?
世界中のリーダーが影響を受けるリーダーシップ上の課題を特定する際、「いつ」という要因も重要な材料となります。しかし、これは何を意味するのでしょうか。チーム、組織、そしてリーダーは、次のような時期に課題を多く抱える場合があります。
- 何か新しいことが始まろうとするとき:新しいプロジェクト、新人社員の入社、新しいクライアントの獲得、新事業の開始、ハイブリッドワークへの移行、など
- 何かが一段落し、終了が近いとき:プロジェクト、役割、契約、業務、など
- 何かが劇的に変化するとき:チームメンバーの突然の退職、財務上の問題による影響、COVID-19の世界的流行や東欧での紛争など、組織が危機を乗り切るにあたり経営上の優先順位の変化、など
このようなハードルは、どのリーダーにとっても大きな課題となり得ます。そのため、どのようなときにあなたやあなたの組織が困難な状況に直面するのかを見分け、社内外における具体的な課題を特定し、その課題に取り組むための戦略的計画を立てることが重要です。
リーダーシップにおける重大な課題への対処方法
リーダーたちに向けての5つのヒント
ここでは、世界のリーダーたちが共通して抱える課題に対処するためにできる5つの項目を紹介します。
1.自らとチームの目標を設定する
積極的に目標を設定し、リーダー自身とチームメンバーが順調に業務を進めるために必要なタイムラインと期限を設定しましょう。雑音を生む要因に直面すると、長期的な目標だけでなく短期的な目標さえも見失いがちです。予期せぬ事態が発生すると、その対応に追われ、組織にとり最も重要な成果を生み出すことに集中できなくなります。
そのような事態を完璧に回避できるリーダーなどいませんが、目標を設定することにより、何度でも目標に立ち返り、他のリーダーシップの課題に取り組みながら、最優先事項に集中することができます。
昔からある手法のひとつに、SMARTメソッドがあります。これは、目標を設定するに以下の要素を念頭に入れるものです。
- Specific (具体的であること):目標達成のために何が必要かを詳しく書き出す
- Measurable(測定可能であること):進捗状況を評価するため、数値化できる目標を設定する
- Attainable(達成可能であること):少し高めの目標を設定する場合であっても、達成可能な目標を設定する
- Realistic(現実的であること):時間、資金、人材など目標達成に必要な要素を把握する
- Timed(期限を設けること):目標達成の時期だけでなく、目標達成までのマイルストーンを設定する
ただし、自分の価値観に沿った形で目標を設定することが大切です。
2.より多くの仕事を社員に任せる
社員に仕事を任せることで、リーダーは自らの課題に取り組む際の生産性が高まり、メンバーはより主体的に行動するようになります。効果的に仕事を割り振るには、単に自らのデスクから業務を取り除くだけでは不十分で、4つの重要なステップを繰り返す必要があります。
- 自分で行いたい仕事は何かを理解する:効果的に仕事を割り振ることができるリーダーは、自らの作業量に優先順位をつけ、どの仕事を自分が担当し、どれを他の社員に任せるかを決めます。また、仕事を任せられた社員が業務に取り組む間、どの程度のフィードバックが必要かも理解しています。
- 自らの部下を知る:仕事を割り振る場合、必要な知識とスキルを持つ社員に仕事を割り振らなければ効果がありません。それには部下を理解することが必要です。仕事を任せることで、直属の部下の成長が促され、彼らが新しい仕事を通じて学習できるようになります。
- 仕事の目的を明確にする:業務の目的にはそれなりの意味があります。この目的をチームや個人の信念や目標と一致させることで、割り振られた仕事を通じて個人が成長の機会を得られることになります。
- 評価と報酬を与える:直属の部下と連携し、部下とリーダーの双方が、仕事が正確に履行されたかどうかを判断できるようにし、報酬が適切に支払われる方法を考案する必要があります。
また、仕事をより多く割り振ることで、チーム内での信頼関係も深まることでしょう。
3.自分だけが持つ価値を最大化する
この世には、自分が時間やエネルギーを注ぎたいと考えるものよりも、自分の注意を奪おうとするものの方が常に多く存在します。自分にしかできない重要な仕事を優先し、それ以外をチームメンバーに任せましょう。
リーダーたちは、自分だけが貢献し得る事柄に集中することで、リーダーシップの課題を克服し、組織に対して価値を創造できます。自分だけが持つ価値とは何かを理解し、それ以外の価値もしくはそれに近い価値に関するものを他のメンバーに任せることで、自らが組織に与える価値を最大化することができます。
自らの特性、振る舞い、習慣を認識することは、自らのキャリアにおいて問題を引き起こしうるものが何かを知るために重要です。そうすれば、特定のスキルを強化し、リーダー個人として成長するために邁進できます。多くのリーダーが直面する内在的課題には、自信のなさ、失敗への恐れ、セルフプロモーションでの自分らしさの維持、焦り、新しいアイデアへの抵抗、インポスター症候群(自分の力を信じられない状態)の克服などがあります。これらはすべて、成功するリーダーとなる場合の妨げとなる可能性があります。
自分の長所と短所を理解し、自分だけの価値を最大化することは、自己認識を高め、パーソナルリーダーシップブランドを理解することの一部です。
4.役割を明確にする
自分の役割において核となる責任は何か、副次的な責任は何か、あるいは何が他の社員の仕事であることを理解しましょう。
それでも、追加で業務やプロジェクトを引き受けてほしいと依頼されることがあります。また、通常とは異なる状況で追加の仕事を引き受けなければならない場合、または追加の仕事が自分の専門性を高めるために重要となる場合もあります。しかし、最も有能なマネージャーは、自らが核となる責任に対してどれだけ効果的な役割を果たせるか、そしてリーダーシップの課題をどのように克服できるかで判断されることが多いことを理解しています。
このことは、ノーと言うべき時があることも意味しています。それにより職場で不快に感じられる可能性もあります。断ることを実践しつつ、気配りとプロ意識を持って断る方法を見つけることが重要です。自分の役割ではない仕事を断ることで、集中力を維持できるようになります。そして、効果的なコミュニケーション能力はリーダーが持つべき重要スキルです。
実際、世界中で、重大なリーダーシップの課題に対応するためのこれらの提案の多くは、キャリアのどの段階においても、どの役割においても必要なコアリーダーシップスキルを身につけるための一部なのです。
5.チームワークと協調性を強化する
チームが同じ認識を持ち、効果的に協力し合うことを妨げる要因は何でしょうか。お互いが率直かつ正直になれないのかもしれませんし、ささやかな成功を称える時間が十分確保されていないのかもしれません。いずれにせよ、チームの連携を強化することは、組織の成功に不可欠です。それにより、リーダーとチーム全体が自信を持って難しい決断を下し、危機に際しても冷静で前向きでいることができます。
困難な時期には、信頼を築くことが重要です。このことは、チームをよりしっかりまとめ上げ、コラボレーションをするための3つの鍵のうちの1つです。信頼関係がなければ、人々は恐怖心から行動するため、成功の妨げになります。さらに、合意された原則に基づいて業務を遂行することは、チームの連携に役立ちます。例えば、説明責任、相互尊重、誠実さなどの価値観に焦点を当てることが挙げられます。
効果的かつ体系的に協調するには、以下の3つの部分からなるフレームワークに従う必要があります。
- 構造レベル:チームメンバーの構成、役割、および責任を理解する
- システムレベル:現在導入されているシステム、プロセス、およびポリシーを評価する
- 相互関係レベル:チームメンバー間のコミュニケーションを評価する。
このフレームワークに従うことで、あらゆる組織のリーダーは役割をより明確にでき、チームの連携を強化することができます。これらはいずれも、重大なリーダーシップの課題への対処に必要となるものです。
また、自らの仕事に追われていると感じることがあるリーダーは、自分はひとりではないと考えることで安心できます。この5つの行動指針を念頭に置くことで、負の感情を打ち消し、より大きな価値を組織に提供しながら、最も差し迫ったリーダーシップの課題に取り組むことができるのです。
人事リーダーに対する提言
リーダーシップの課題に最も一般的な6項目に対処するためのリーダー育成に力を入れる
リーダー育成の取組が効果を発揮するには、その取組が参加者の直面する現実の課題に沿ったものである必要があります。世界中のリーダーが直面する6項目の共通課題を研修や能力開発の担当者が理解することは、リーダーの現実的なニーズに真に応える能力開発の施策を生み出すきっかけになります。
当社の開発プログラムのコンテンツの大半は、場所を問わず、誰が受けても均質的であるというのも上記の理由ゆえです。しかし同時に、ある文化圏で受け入れられていることが、別の文化圏では受け入れられない、あるいはタブーとされる、またある国の常識が別の国で非常識となることも認識しています。そのため、文化的なニュアンスの違いを意識し、必要に応じて調整することも重要です。
しかし、世界中のリーダーが同じような基本的課題に直面していることを考えると、社員研修の企画担当者は、世界中にいる社員に対して、以下の6項目の共通課題に対処することを目指して、リーダー育成の手法を調整するとよいでしょう。その共通課題とは、いかにして経営面の効率性を高めるのか、いかにして周囲を鼓舞するのか、いかにして社員を育成するのか、いかにしてチームを統率するのか、いかにして変化の中でメンバーを率いるのか、そして、いかにしてステークホルダーや社内政治を管理するのか、です。