第三回:戦略人事はウチにはまだ早い、は本当か? HRBPが持つべき4つの視点
LEADERSHIP INSIGHT | 2020/07/24
HRBPとして持つべき視点:Zone-2
前回のブログでは、下記の図の中の左下、つまり過去から現在という時間軸の中で、業績(パフォーマンス)が目標に到達していない状態の中でHRBPがどのように動けば良いのかを決めていくためのフレームワークを見てきました。
過去から現在までの出来事なので、事実が全て確定しており、なおかつ問題が顕在化しているので、比較的取組みやすいケースかと思います。今回は過去から現在までという時間軸は一緒ですが、異なる点は「業績は目標に到達している」ことになります。
「目標達成しているなら、もうそれでいいじゃん」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そのマインドセットでは戦略人事からは程遠いですし、また事業部トップからすると、ある目標が達成された場合、さらに高い目標が下りてくることが大半ですので、過去から現在までで目標が達成されたからと言って手綱を緩めるわけにはいきません。このような事業部トップからすると、ある時点での目標達成に満足している従業員とHRBPは「言われたことしかできない、伸びしろの無いヤツ」くらいにしか思われませんので十分に気を付けましょう。(外資系では特に)
では改めて今回のケース=過去から現在まで、業績は目標を達成しているケース、でHRBPとしてどのように考え、動くべきかを見ていきます。今回のケースでは業績は合格点なので、「問題」はありません。問題が無いからといってHRBPは何もしなくてOKということではなく、ここでもう一つの価値を見出していくことになります。それは「機会」の創出です。問題はないのですが、さらに改善すべき点、将来の布石となるような機会を提案していくということになります。
これはタレントマネジメントに通じるケースが多いので、タレントマネジメントの文脈で見ていきましょう。皆さんはある営業部のHRBPであるとします。この営業部ではサクセッションマネジメントの会議が年に一度あり、そこで喧々諤々の議論が展開され、HRBPの皆さんにも意見が求められているとしましょう。話を単純化するためにサクセッサー候補としてAさんとBさんがいるとします。どちらも乗りに乗っている営業スタッフで、前期も目標を達成しました。皆さんは同じく業績目標を達成しているAさんとBさん、どちらを営業部長にサクセッサーとして推薦すればよいでしょうか?
業績という軸ではどちらも達成していますので、差をつけようがありません。ですので、HRBP=人と組織の専門家として異なる軸を持ち出す必要があります。いろいろな軸が考えられると思いますが、今回は「学習志向性」という軸を使いましょう。
変化の時代での重要な能力:学習志向性
ビジネスパーソンが立てる目標は業績目標はもちろんですが、学習目標があります。
業績目標:自身の能力を証明し、他者から高い評価を得ることを重視する目標
学習目標:他者からの評価とは関係なく、 自身の能力を高めようとする目標
学習目標は非明示的な場合もありますし、目標設定の中のキャリア開発プランに入っている場合もあります。このあたりはHRBPとして、学習目標がどのように設定されているのかを把握しておきたいところです。
図で示している通り、学習目標とは自身の能力を高めようとする目標で、現在から未来永劫続くであろう「変化の時代」においては学び続ける目標を持っているかどうかは極めて重要です。もちろんビジネスパーソンとしての基本は業績を達成する事なので、決して業績目標を軽視するわけではありませんが、業績目標だけを重視するとどうなるか見てみましょう。